フライヤーズの物議を醸すドラフトの決断に、ファンは眉をひそめる?

NHLチーム紹介

はじめに 

 推しチームの一つ、フィラデルフィア・フライヤーズのドラフトについて、あまりにも不可解すぎて、夜も眠れないくらいです(笑)。ドラフト会場で急転直下の指名権トレードで、12位より上を狙うんなら、「おっ、やるじゃん」と思うのですが、まさか下げるなんて…。 

 それで指名した選手が、チームの弱点を補う即戦力クラスならまだしも、「うーん、まあまあかな」タイプ。それなりにはやるけど、あくまでもそこまでのレベルの選手、と言えばいいでしょうか。ドラフトから数日経過しても、全く話題になってきません。 

 今回は、地元フィラデルフィアから発信されているフライヤーズ情報サイトで、このドラフトをどう見ているか、をお届けします。フライヤーズ寄りの記事をアップしている同サイトでも、かなり辛口の評価のようです…。 

讃岐猫
讃岐猫

引用元:Phillyhockeynow.com「Grading Flyers’ Complete 2024 Draft Class; One Pleasant Surprise

奇妙なドラフト戦略

 (ドラフト2日目の6月29日、)2024年のNHLドラフトで2巡目指名2人を含む合計7人のドラフト指名を行った後、フィラデルフィア・フライヤーズは2024年のドラフト・クラスを正式に決定しました。

 フライヤーズはミネソタワイルドと1巡目指名権をトレードし、指名順位を1つ下げるのですが(12→13位)、それは会場全体に衝撃を与え、全体13位でグエルフ(OHL、グエルフ・ストーム)のセンター、ジェット・ルチャンコを獲得するなど1、奇妙なスタートとなりました。

 しかし、ルチャンコと他のフライヤーズのドラフト指名選手に共通していることは、ホッケーIQはともかく、トップクラスの力を備えており、フィラデルフィアはそのすべてを欲しています。

 ルチャンコはすでに、このクラスで最も速く賢い選手の一人とされ、競争力もあって、身体が頑強なフォワードとみなされています。フライヤーズは、この新しいドラフト指名選手のどこかに、ラインナップのトップに入る可能性があると考えているようです。

ルチャンコの名前を読み上げたのは、フィラデルフィア出身の伝説のリングアナ、マイケル・バッファー。

2巡目以降に指名された選手達

 元デビルズのフォワード、クリスチャン・バーグランド2の息子であるジャック・バーグランドは、フライヤーズの2人目のドラフト指名であり、2人目のセンターとして追加されましたが、全体51位で指名できたことは、かなり重大なことであると一般には考えられています。

 バーグランド(父と同じ、スウェーデンのリーグ、SHLのフェルイェスタッド所属)は6フィート3インチでヘビーなプレーをし、昨シーズン(23-24)の活躍は全体的に印象に残らなかったものの、この18歳の選手はスウェーデンU18代表で堅実なパフォーマンスを見せました。

 わずか数チームの指名後、フライヤーズは第2巡目指名に戻り、QMJHLのリムースキー(・オセアニック)から6フィート4インチのディフェンスマンである、スペンサー・ギルを獲得しました。

 彼は背が高く、フィジカルと機動力があり、攻撃に関与することをいとわないし、NHLレベルで役立つツールをたくさん持っています。ギルは、少なくとも今のところ、週末のフライヤーズのドラフト指名中、個人的に一番お気に入りのドラフト指名選手です。

ギルが指名された瞬間。初日同様、結構たくさんの人が会場に詰めかけています。

 ギルに続き、フォワードのヘイッキ・ルオホネン(フィンランドのキッコ・エスポー所属)、ノア・パウエル、イリヤ・パウトフが4巡目、5巡目、6巡目で指名され、ディフェンスマンのオースティン・モリーンが7巡目でチームに加わり、ドラフト指名を終了しました。

 ルオホネンは、オハイオ州立大に入る遅咲きのパウエル(19歳)と同様、ちょっとした「事業(育成)計画」が必要です。少し年上の選手であるモリーン(18歳)は、ギルに似たいくつかの特徴を持っており、シーズン終了後にノーザン・ミシガン大学に進学予定です。

 パウトフについてほとんど何も知りませんが、イワン・デミドフが他の誰よりも頭一つ抜けていたロシアのMHL(下部組織チームのリーグ。クラスナヤ・アーミヤ所属)において、彼はまともな選手の部類に入っていました(46試合出場、15ゴール、30アシスト)。

ドラフトの評価は「あまりよくない」

 (フライヤーズのドラフト指名について)現段階の評価:C

 他のチームとは全く異なっていて、このドラフトクラスは本当に堅実なプレイヤーのグループです。問題は、ここにダイナミズムがほとんどなく、そしてフライヤーズはサイズや特徴を優先するあまり、多くの才能ある未指名選手を残してしまいました。

 フライヤーズは、ゼーブ・ブイウム(後述)、コンスタ・ヘレニウス(後述)、テディ・スティガ(プレデターズ、全体55位)、レオ・サーリン・ワレニウス(シャークス、全体53位)、ケビン・ヘー(ジェッツ、全体109位)、

ジェイヴォン・ムーア(セネタース、全体112位)、アロン・キヴィハルジュ(ワイルド、全体122位)、ルーク・ミサ(フレームス、全体150位)をパスしてしまったのです。

 これらの選手の中には、知る人ぞ知る逸材として大きな話題を呼んだ人もいれば、すでに年間を通じてドラフト上位指名選手と見なされていた人もいます。

 2025年のNHLドラフトの1巡目で3人を指名できるフライヤーズは、来年の今頃、本気で戦う必要があります。

讃岐猫
讃岐猫

引用元:Phillyhockeynow.com「Why Did the Flyers Pass on Zeev Buium in the 2024 NHL Draft?

なぜ、ブイウムをパスしたのか?

 当初、フィラデルフィア・フライヤーズは、2024年のNHLドラフトの1巡目で、ミネソタ・ワイルドから2025年の3巡目指名権を獲得し、12位から13位に1つ順位を下げただけで、抜け目のない仕事をしているように見えました。

 ワイルドとフライヤーズが選手を選んだ後、その認識はかなり急速に変化しました。

 デンバー大学のディフェンスマン、ゼーブ・ブイウムはミネソタに獲得され、フライヤーズは高い評価を得ていたコンスタ・ヘレニウス(バッファロー・セイバーズ、全体14位指名)をパスし、

グエルフ(OHL、グエルフ・ストーム)のスピードスター、ジェット・ルチャンコを獲得しました。

 そして、ヘレニウスは頭脳的で経験豊富なセンターとして、フライヤーズにとって最も理にかなった選手なのですが、(それ以上に)ブイウムは、すべてのNHLチームがもっと必要とする、見逃せないハイエンドのディフェンスの有望選手と見なされていました。

 ただし、フライヤーズ以外のチームでは…の話ですが。(GMの)ダニー・ブリーレとその関係者達は、どうやらこの決定を(ドラフト会場で)下す前に、この指名で行くと(ずっと前から)決めていたようです。

 「まあ、私たちのディフェンスを見ると、それ(ブイウム指名)は正しい。ゼーブ・ブイウムは素晴らしい選手になると思うし、彼は強く意識していた選手だ」と、金曜日の夜、1巡目指名終了後、ブリーレは語りました。

 「しかし、カム・ヨーク(6フィート1インチ=約185センチ)、ジェイミー・ドライスデール(5フィート11インチ=約180センチ)、エミール・アンドレ(5フィート9インチ=約175センチ)…

ある時点で、(ディフェンスとして)身長の小さい選手を選ぶのが難しくなったんだ。でも、彼は素晴らしい選手だ」。

 ブイウムは必ずしも小柄ではなく、6フィート(約183センチ)、185ポンド(約84キロ)の身長ですが、6フィート4インチ(約193センチ)のディフェンスマンであるスペンサー・ギルやオースティン・モリーンのように、

フライヤーズがドラフトした他の選手よりも明らかに小さいです。

讃岐猫
讃岐猫

フライヤーズの突然の方針転換が原因か?

 フライヤーズはまたトラビス・サンハイムと長期契約を結んでおり、アダム・ギニング(現在、AHLのリーハイバレー・ファントムズ)とエゴール・ザムラ(23-24シーズンからトップ定着)がもたらしてくれるものを、フライヤーズは本当に気に入っています。

 さらに、フライヤーズがアントン・シラエフ(ニュージャージー・デビルズ、全体10位指名)やサム・ディキンソン(サンノゼ・シャークス、全体11位指名)のようなより大きなディフェンスマンのために、ブイウムを見送ったわけではありません。

 フライヤーズは単に利用可能な最高の選手を完全に回避し、その代わりに、ルチャンコという最も評価の高いセンターに軸足を移したのです。

 さらに、アンドレはまだNHLで出場しておらず、そしてドライズデールは、このシーズン終盤にも手術を受けるなど、短いNHL生活で長い怪我(肩の関節を2度痛めている)を負っています。

 総合的な才能は体格以上にNHLでの成功に貢献しているようですが、フライヤーズは今、別の計画を立てています(フォワード強化に方針転換?)。やがて、この賭けが報われるかどうかがわかります。

まとめ

 全然、ディフェンスマンの駒も揃っていないんですけど…。で、百歩譲って、攻撃面に軸足を移したとしても、模擬ドラフトの時点で、ルチャンコより評価の高かったコンスタ・ヘレニウスを十分指名できたわけだから、指名戦略で下手を打ったと言わざるを得ません。

 そもそも意図的に指名順を下げるって、もう少し下位指名でやるなら分かりますが(フライヤーズのような再建中チームがやるべきではない)、1巡目、しかもチーム一発目の指名でやることとは思えません。しかも、1巡目ラスト・32位の指名権まで手放すなんて。

 よっぽどルチャンコに惚れ込んでいるのか、それとも「また、大学生選手に逃げられるかも…」という不安がよぎったか。ゴディエ・ショックの影響は大きい。そうなると、今回の指名選手中、2人は大学進学予定ですから、彼らの心変わりにも注意していないと…。

讃岐猫
讃岐猫

【註釈】

  1. ドラフト指名候補として、早くから名前は出ていたが、2巡目での指名ではないかと言われていた。しかし、6月を過ぎたあたりから、ぐんぐんと評価を上げ、1巡目の下半分、16〜32位で指名されると予想されていた。

     指名を予定していたチームとしては、コロラド・アバランチ、ロスアンゼルス・キングスのようなプレーオフ常連の名前が挙がっており、それは「成績上位チームのトップラインに近い位置にいるが、セカンドかサードラインの可能性が高い」という評価になる。
    ↩︎
  2. スウェーデン、オレブロ出身。44歳。現役時のポジションは左ウィング。NHLは3シーズンのみだったが(01-04)、母国スウェーデンやスイスのリーグで活躍。98年のドラフトでの指名順は37位で、息子よりランキングは上。 ↩︎
タイトルとURLをコピーしました