はじめに
スタンレーカップ決勝まで勝ち残った2チーム以外は、今シーズンを総括し、10月開幕の来シーズンに向けて、戦力の見直しに総力を結集しています。そして、番記者達はスタッフや選手達に移籍や契約の話を振り、一瞬の表情の変化も見逃さず、記事にしようと躍起です。
30チーム全てがそのような状況下にある中、今回はダラス・スターズを取り上げましょう。カンファレンス決勝まで勝ち残りましたが、充実期真っ只中のマクディビッド-ダライザイトルコンビの前に、ややガス欠気味の失速で敗れ去ってしまいました。
その原因の一端について、マスコミは、イマイチ振るわなかったベテラン勢を挙げています。日本のプロ・スポーツもシーズンオフになると、一斉にその手の噂が飛び交いますが、NHLもほとんど変わらない、むしろより彼らに辛辣であることが分かる記事になっています。
スターズは安定して強いチームだから、
負けると、よけい目立っちゃうんだにゃ。
ドラフト巧者だし、トレードも無理のない範囲で行うチームなんで、
手堅く戦力補強すると思うんだけど、
今シーズン末はいつもと勝手が違うようで…。
引用元:Yardbarker.com「The window is likely closed for these Stars veterans to win the Stanley Cup」
最後のチャンスだったかも…
6月2日・日曜日の夜、ウェスタン・カンファレンス決勝第6戦で、エドモントン・オイラーズがダラス・スターズに2-1で勝利しましたが、試合時間終了により、4人のベテラン・スターにとって、スタンレー・カップ獲得の最後のチャンスも潰えたかもしれません。
この勝利により、オイラーズはスタンレーカップ決勝に進出しましたが、ダラスは2年連続でウェスタン・カンファレンス決勝で敗退となったのです。
ジョー・パベルスキー、ライアン・スーター、ジェイミー・ベン、マット・デュシェーンは、いずれも少なくとも15シーズンにわたりNHLで活躍した選手であり、それぞれがリーグで1,000試合以上プレーしています。
しかし、彼らのうち誰もホッケー界最高の賞を頭上に掲げたことはなく、残念ながら今後も掲げることはなさそうです。
39歳の大ベテラン達に道はないのか…
これは、ともに39歳のパベルスキーとスーターの場合に、特に当てはまります。
パベルスキーは、スターズとサンノゼ・シャークスで18シーズンのキャリアを積み、1,332試合で476ゴール、1,068ポイントを記録し、NHLで最も活躍したセンターの一人です。2016年にシャークスで、2020年にスターズで、2度スタンレーカップ決勝に進出しました1。
パベルスキーは、レギュラー・シーズンで27ゴール、40アシストといつも通りの活躍を見せましたが、プレーオフでは19試合でわずか1ゴール、5ポイントにとどまり、年齢を感じさせています。
彼は1年契約でプレーしていましたが、7月1日、無制限フリー・エージェントとなる予定2です。
スーターは、ナッシュビル・プレデターズ、ミネソタ・ワイルド、ダラスで1,444試合に出場した19シーズンのほとんどで、リーグで最も安定した信頼できる二刀流ディフェンスの1人でした。しかし、カップ決勝に進出したことは一度もありません。
彼はかつてのような攻撃面での脅威とはなっていません。スーターは2023-24レギュラー・シーズンでわずか17ポイント、その前のシーズンは25ポイントしか獲得できませんでした。4年契約は残り1年となっています。
パベルスキーは引退を決断したみたいだにゃ。
もう1シーズン、チームの精神的支柱として在籍し、
出場のためのローテーションを組んでもらえば、
十分やれると思うのだが…。
チームにデボア監督の戦術を浸透させたのも彼だと言われている。
このままフェイドアウトするのは寂しい。
33、34歳の選手ですら危うい立場に…
スターズのキャプテンであるベンはまだ34歳で、15シーズンのキャリア全て(1,112試合)をダラスでプレーしてきました。
天性のセンターとも言うべき選手であるベンは、2014-15シーズン、87ポイントでNHLポイント王を獲得し、2020年、スターズでスタンレーカップ決勝に進出しました。
彼は常に頑丈でフィジカルの強い選手であり、レギュラー・シーズン中、21ゴールと60ポイントを記録しています。しかし、ベンのフィジカルを主体とするプレー・スタイルは、30代後半までプレーする可能性を考えると、良い兆候ではありません。
彼はプレーオフ19試合で4ゴール、15ポイントを記録し、8年契約はあと1シーズン残っています。
デュシェーンも天性のセンターの資質を持った選手であり、この4人の中で、おそらくカップを獲得する可能性が最も高い選手でしょう。
彼はまだ33歳で、15シーズンにわたって5チームで1,056試合に出場しており、スキル重視の選手であり、必要のないときには、フィジカルを前面に出すようなプレーを避ける方法を知っています。
彼はカップ戦の決勝には一度も出場していません。
デュシェーンはレギュラー・シーズンで25ゴール、65ポイントを記録しました。しかし、プレーオフでは2ゴール、6ポイントしか獲得できなかったのです。デュシェーンは1年契約を結んでおり、7月1日にUFA(無制限フリーエージェント)となります。
情報通の投資家(NHLでスポーツ・ベッティングをしている人達)の見方によれば、4人全員がカップを手にすることなくキャリアを終えるだろうと言っています。
引用元:Yardbarker.com「Dallas Stars have big questions to answer this summer」
選手層は厚いはずだが…
ダラス・スターズの2023-24シーズンは、6月2日・日曜日の夜、エドモントン・オイラーズに2-1で敗れた第6戦で幕を閉じました。
スターズは、年間を通じて、スタンレーカップ優勝候補のトップ・チームの一つでしたが、2シーズン連続でウェスタン・カンファレンス決勝の第6戦で敗退したことになります。
しかし、(今シーズンのプレーオフで)ベガス・ゴールデンナイツとコロラド・アバランチという過去2回のスタンレー・カップ優勝チームを破った後、ダラスはオイラーズ戦で力尽きました。
将来を見据えると、スターズは長期にわたって非常に優れたチームであり続けるでしょう。
彼らは全盛期にある優秀なコアとなるべき若手選手と、それ以外の数人の若手選手、そしてベテラン選手を擁して選手層に厚みを持たせており、何年にもわたって戦えるようにしています。
しかし、今のところ、ゼネラルマネージャーのジム・ニルと彼のスタッフには、答えるべきいくつかの質問があります。
契約すべきか否か、ギリギリの選手が多過ぎる
ダラスには、マット・デュシェーン、ジョー・パベルスキー、クレイグ・スミス、クリス・タネフ、ヤニ・ハカンパー、デリック・プリオ、スコット・ウェッジウッドの7人が無制限フリーエージェント(FA)となっています。
それにタイ・デランドレア、サム・スティール、トーマス・ハーレー、ニルス・ルンドクヴィストの4人の制限付きフリーエージェントが加わり、この夏、ビッグD(テキサス州ダラスまたはミシガン州デトロイトの愛称)でやるべきことの多さは容易に理解できます。
キャプテンのジェイミー・ベンやジェイク・エッティンガーなど、契約があと1年しか残っていない有名選手たちや、ライアン・スーターやラデク・ファクサの買収やトレードの可能性について言うまでもありません。
名前の挙がっている選手は全員主力ラス、一気に抜けられると、
チームはガタガタになってしまうにゃ。
しばらくプレーオフ進出を諦めて、一気に若手に切り替える方向に、
GMが勇気を持って舵を切れるかどうか。
実際は2〜3人のベテラン斬りに収まりそうだが…。
記者達はこう見ている
タイラー・ヤレムチャック:ダラスの今後の展開を考えると、ベテラン選手の何人かについて非常に大きな疑問が湧いてきます。ジョー・パベルスキーはもう1年ダラスに戻ってきて、プレーするのでしょうか。
マット・デュシェーンはナッシュビルから買い取られ、1年契約で大成功を収めましたが、来シーズンもダラスへ戻ってくるのでしょうか。
トーマス・ハーレーを中心に若い選手もいますが、今すぐ彼らに大金を支払って契約を結ぶのか、それともブリッジ契約にするのか、決断しなければなりません。
ジム・ニルにとって難しい決断が多く、キャップスペースは1,590万ドル(約24億8千万円)とそれほどたくさん残っているわけではありません。
積極的にベテランを獲るチームなんて…
フランク・セラヴァリ:まあ、(無理な契約交渉を)やろうとすれば、(チームに)ダメージを与えるには十分です。今年のトレード締め切りまでに、ダラス・スターズがドラフト1巡目指名権を放棄せずにクリス・タネフを獲得し、強化できたのは素晴らしいことです。
ダラスのようにドラフトで優秀な成績を収めたチームにとって、これは大きなことです。ほら、選手たちの年齢を考えみてください、彼らはどこにも行きはしません…このチームの中核はどこにも行きません。
しかし、おっしゃる通り、このチームには答えるべき質問がいくつかあります。
まとめ
パベルスキーが発言を撤回せず、そのまま引退となった場合、他のベテラン選手への影響も懸念されます。つまり、チームの中心がいなくなってしまうことで、「自分も、このチームに見切りをつけよう」と交渉の席にも着かず、他チームへドンドン移籍してしまうかもしれません。
あるいは「パベルスキーに代わって、俺がチームをまとめていく!」と意気に感じるタイプが出てくるかもしれません。いずれにせよ、GMがチーム状況だけでなく、選手達のメンタル面をどれだけ把握できるかによって、スターズの陣容は変わってきそうです。
またプレーオフの最後に近い頃まで勝ち残っていたこともあり、ドラフト一巡目指名権でメチャクチャ有望選手を指名できる可能性はかなり低いです。現有戦力の底上げが急務なスターズ、ベテランの指導力は必要だと思うのですが、どう割り切っていくのか。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】