はじめに
先日、世界中のスポーツの試合結果速報が即座に分かるサイト、Flashscoreさんから相互リンクのご依頼がありました。普段からNHLだけでなく、KHLの結果等でお世話になっていることもあり、勿論快諾し、当ブログのリンク第1号様として掲載させていただきました。
ブログ記事中ではございますが、改めて感謝申し上げる次第です。今後も、当ブログは「日本におけるNHL普及活動」に務めていくつもりです。
さて、今回は意外と多い「NHLの兄弟プレーヤー」についてです。記事にもありますように、現在20組(残念ながら全部把握していない!)がプレーしていて、各所属チームの主力になっているパターンが多数。
別々のチーム所属となると、NHL名物(?)乱闘の時にどうなるんだろ?という疑問が湧いてきます。実際、このブログでも取り上げた「ある兄弟の乱闘」は、身内すらも呆れてしまうようなものでしたが…。他の兄弟はどうなんでしょう。
記事や註釈にもあるけど、兄弟だけじゃなく、親子でプレーしたパターンもあるんだにゃ。
身内だからこそ、やっぱり一瞬のひらめきで、
誰も考えつかないような連携プレーが生まれるのかな。
引用元:tsn.ca「NHL reaches new golden age of brotherly love with 20 sets of siblings playing」。
「兄弟共にNHLでプレー」は意外に多い
今シーズンの試合で対戦する前に、ウィリアムとアレクサンダーのナイランダー兄弟はセンターアイスでポーズをとりました。
スナップショットに家族の素敵な瞬間が捉えられていましたが、ウィリアム(右ウィング、27歳。トロント・メープルリーフス所属)がアレクサンダー(右ウィング、25歳。現在、AHLのウィルクス・バール/スクラントン・ペンギンズでプレー中、所属はピッツバーグ・ペンギンズ)を「兄らしく」突き飛ばしたとき1、ビデオはまだ回転していたのです。
昨年春にフロリダがスタンレー・カップ・ファイナルに進出した際、ブレイディ・トカチュク(左ウィング、24歳)は、兄マシュー(左/右ウィング、25歳)のプレーオフの試合をスタンドで観戦するためスタンドに座っていました。
しかし、今シーズン、ブレイディのいるオタワ・セネターズが、マシューのいるパンサーズと対戦したとき、兄弟愛はすべて失われてしまった2のです。
過去にも「兄弟揃って名選手」が多い
ホッケーの歴史を見ると、大舞台で兄弟が活躍する姿にあふれています。
これには、モントリオール王朝のモーリス3とアンリ・リシャール4、ハートフォードで父ゴーディ5とプレーしたマーク6とマーティ・ハウ7、さらに最近ではバンクーバーでヘンリック8とダニエル・セディン9が含まれています。
今シーズンだけでも20組の兄弟がNHLでプレーしており、氷上における血統の黄金時代を迎えています。
ハウ親子、セディン兄弟の記録は、見れば見るほど、その凄さが分かるのだにゃ。
セディン兄弟による、「兄弟で記録の1、2フィニッシュ」なんて奇跡としか言えない。
兄弟でプレーすることの利点
「アイス・ホッケーは間違いなく家族ぐるみのスポーツであり、多くのサポートが必要なものだね」、現在ボストンに所属する兄ジェームズ(左ウィング、34歳)より2歳年下のワシントンのディフェンスマン、トレバー・ファン・リムスダイクは語りました。
「ホッケーは明らかにスキルなどに大きく左右されるゲームだ。しかし、もし君が賢いプレイヤーで、どのようにプレーするか、(試合中に)どんな出来事が予想されるかを教えてくれる兄がいるなら、それは大きなアドバンテージになると思うよ」。
世界のトップリーグに進出した兄弟の多くは、幼少期にリンクで過ごした朝のことを思い出します。
「僕らはただふざけているだけだったけど、お互いのレベルを上げていることに気づかずに、競い合っていたんだ」と、ジョーダン(センター、35歳。カロライナ・ハリケーンズ所属)とエリック(39歳。現在、フロリダ・パンサーズから無制限FA)の兄弟、
そして短期間ではあるが、ジャレッド(33歳。AHLのシャーロット・チェッカーズのアシスタント・コーチ兼選手)と共にNHLでプレーした10フィラデルフィアのディフェンダー、マーク・スタール(36歳。フロリダ・パンサーズから新加入)は語りました。
「兄が成功したのを見てきたから、あるいは兄がもっと成功するように背中を押してくれたから、成功を望むようになったんだ」。
マークとエリック・スタールは、チームメイトとしてパンサーズのカップファイナル進出を共に分かち合っています。(お互いの)子供たちをリンクに連れて行ったり、学校に行かせたりすることで、普通の家族の平日のように思えた、とマークは言いました。
最近、兄弟で睨み合った例もあった…
それとは正反対の場合もあって、例えば、11月下旬のオタワ対フロリダの試合では、両チーム合わせて167分のペナルティが課せられています。
マシューとブレイディは先週それを経験しており、彼らは母親と決して喧嘩をしないと約束しているにもかかわらず、まるで恨みを晴らすべき相手のように、お互いを睨み合いました。
「そのルールは破られないよ」とブレイディは語っています。
(NHLのリンクに、兄弟で立つことは)今後の感謝祭の集まりに最適でしょう。また、引退がそう遠くない今、スタール夫妻はこの経験を共有できることに感謝しています。NHLで18シーズンプレーした彼らの父キース11(・トカチャク)は、そのことを指摘しました。
マシューは、ドラフトでブレイディが指名されたことと、5年前に彼が言った言葉を思い出しています。
「『今年、対戦できるんだ。とても素晴らしいことだよ』って」マシューは回想しました。「あれは5年前の話だね。あまりの時の流れの速さを思うと、クレイジーな気分になるよ」。
「あくまでもリンク上ではライバル同士。兄弟の感情は無し」というのが、
マシューとブレイディ兄弟のルールかもしれないにゃ。
兄弟でリンクに立てる喜びは、実際に立った者のみの特権だ。
シーズン各賞を総なめにしそうな兄弟
MVPのハート・トロフィー、トップ・ディフェンスマンのノリス、新人王のカルダーを兄弟3人で総なめにする可能性もなくはないのです。
バンクーバーのクイン・ヒューズ(ディフェンス、24歳)は、シーズン4分の1を終えてノリスの最有力候補のように見えますが、一方、ニュージャージーのジャック(センター、22歳)にはハート獲得の話題が出たり、ルーク(ディフェンス、20歳。ジャックのチームメイト)のカルダー獲得の話題に登場する可能性があります。
カナックスとデビルズは12月5日(火曜日)の夜12、バンクーバーで対戦します。
「3人で試合をするのはとても楽しいだろう」と、11月30日(木曜日)、ルークの延長戦でのゴールをお膳立てしたジャックは語りました(vs.フィラデルフィア・フライヤーズ戦、スコアは4-3)。
「これって両親の功績じゃないかな。両親が僕らをどれだけうまく育て、どのように教えてくれたかってことさ。彼らにとっては、お祝いしてもいいくらいなんだよ」。
やっぱり仲良いのが一番!
ホッケーは、おそらく他のスポーツ以上に、兄弟間の競争の原因となりやすく、選手は家族の誰かが同じ浮き沈みを経験するのを見ることで、(良きにつけ悪しきにつけ)その恩恵を受けるのです。
トレバー・ファン・リームズディクは、ジェームズがその道を切り開いてくれなかったら、自分がディビジョンIのホッケーから13NHLに進むことはできなかったと理解しています。
キャピタルズのチームメイト、ディラン・ストロム(センター、26歳)も同様の境遇を経験し、同じくドラフト上位で指名されたものの、NHLでブレイクする前にマイナーに14行ってしまった兄ライアン(センター、30歳。現在、アナハイム・ダックス所属)から学びました。
ブレイディがマシューとパンサーズを応援したのと同じように、2年前、ライアンとニューヨーク・レンジャーズがプレーオフに進出していたとき、ディランはマディソン・スクエア・ガーデンでラリータオル15を振っていたのです。
12月1日(金曜日)、アナハイムでワシントン戦が開催された時(5-4でワシントンの勝利)のように、彼らは対戦しない限り、「一夜おきに、お互いに応援し合っているんだ」とディランは言いました。
リーグにいることは共通の絆ですが、カルガリーのクリス(ディフェンス、33歳)とシアトルのブランドン・タネフ(右ウィング、31歳)は、シーズン中から夏にかけて多くの時間を割いて話をしています。
しかし、セス(ディフェンス、29歳)とケイレブ・ジョーンズ(ディフェンス、26歳。現在、コロラド・アバランチ所属)がブラックホークスで2年間プレーしたように、同じチームでプレーすることはめったにありません。彼らは氷上でペアを組むこともありました。
「NHLで一緒にプレーするなんて考えたこともなかった」とセスは語っています。「数年前の夏、僕らは2週間違いでシカゴにトレードされたけど、あれは正気の沙汰じゃなかったな。あんなふうにうまくいったのなんて、クレイジーそのものだよ」。
エリックとマーク・スタールが一緒にスタンレー・カップを掲げるべく決勝へ進み、最終的にラスベガスに敗れてしまうという、絵に描いたような結末になりかけたのです。悲痛な敗北ではあったものの、それをきっかけに、彼らは一緒に乗り越えられたことに感謝するようになりました。
「僕らにとって、感謝の念は常に持ち続けるものであり、決して忘れることはないよ」とマークは言っています。「僕らは皆、この状況がいつ終わるかなんて考えずに、ただひたすらその思いに浸っていたいんだ」。
まとめ
この記事に出てきた兄弟だけ見ても、同一チームでプレーするパターンはあまり多くありません。それに、アイス・ホッケーのルール上、4つのラインのローテや、頻繁に行われる選手交代もあって、兄弟が敵同士で同じリンクに立つのも多くないかもしれません。
でも、あの火が出るような緊張感を伴ったリンクで肉親が共にプレーをし、現役中に喜怒哀楽を分かち合い、引退後も思い出話ができる様子を想像すると、何とも羨ましい限りです。
マーク・スタールの「ただひたすらその思いに浸っていたいんだ」の言葉が、その様子の心地よさを物語っています。それがまた一つの文化になって、次世代に継承されていくのでしょうね。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 試合前のウォーミング・アップ中に、兄弟でふざけてやった行為のこと。NHL.com「Nylander brothers get playful before matchup against each other」で記事にもなっている(記事中に映像あり)。
↩︎ - 詳細は、こちらの記事を参照のこと→☆。
↩︎ - カナダ、ケベック州モントリオール出身。2000年5月死去、享年78歳。現役時のポジションは右ウィング。愛称はロケット・リシャール。
彼の付けていた背番号9はモントリオールの永久欠番だけでなく、9番を付けることはアイス・ホッケーの選手として重要な意味を持つ、と定義づけされるほど、モーリスの存在感は圧倒的だったのである。
↩︎ - 兄モーリスより15歳下。2020年3月死去、享年84歳。現役時のポジションはセンター。兄より小柄だったため、愛称は「ポケット・ロケット」。背番号16は永久欠番、キャリア中にスタンレーカップ獲得11回はNHL史上最多。
↩︎ - カナダ、サスカチュワン州フローラル出身。2016年6月死去、享年88歳。現役時のポジションは右ウィング。左右両方からシュートを打てることもあり、20年間連続でゴール数上位5位以内を維持。デトロイト・レッドウィングスに4回カップをもたらした。
↩︎ - 米国、ミシガン州デトロイト出身。68歳。現役時のポジションはディフェンス/左ウィング。現デトロイトのスカウティング・ディレクター。
1980年代最高の二刀流ディフェンスマンとされているが故に、1985-86シーズン、プラス/マイナス評価+85とショートハンドゴール7は抜群の数字なのである。
↩︎ - 出身とポジションは弟と同じ、69歳。1973年、父ゴーディと兄マークとともに、WHAのヒューストン・エロスでプレーしている。1974年、カナディアンズにドラフト指名されたが、5年間、WHAでプレーしていたため、NHLでの実績の少なさが残念である。
↩︎ - スウェーデン、オルンシェルツヴィク出身。43歳。現役時のポジションはセンター。一卵性双生児の兄ダニエルとキャリアを通じて一緒にプレーし、このペアによるタンデム・プレーは有名。
NHL1,330試合で1,070ポイントは、カナックスの歴代最多である。
↩︎ - 現役時のポジションは左ウィング。ダニエルはゴールスコアラー、ヘンリクはプレーメーカーとして知られていた。セディンはNHL1,306試合出場、1,041ポイントを挙げ、弟のヘンリックに次いでカナックス史上2番目に高いポイントとなっている。
↩︎ - 同一チームでプレーしたのは、エリックとジョーダンであり、よって、四兄弟のうち、カロライナに所属していないのはマークだけである。
また、ジャレッドのNHLデビュー日となる2013年4月25日、マークの所属していたニューヨーク・レンジャーズが対戦相手だった。
↩︎ - 米国、マサチューセッツ州メルローズ出身。51歳。現役時のポジションは左ウィング。1000ポイントを達成した6人目のアメリカ人選手であるが、500ゴール達成にもかかわらず、殿堂入りしていない4人のうちの1人でもある。
↩︎ - 試合は終了しており、6ー5でニュージャージーの勝利。ジャックとルークは、それぞれ1ゴールを記録している。
↩︎ - ファン・リームズディクは、NCAA男子ディビジョンI・ホッケー東カンファレンスに属するニューハンプシャー大学でプレー。
2年生の時のプレーが評価され、2012-13シーズンのオール・ホッケー・イースト・ファーストチームに選出されている。ちなみに、彼はドラフト指名されていない。
↩︎ - 2011年のNHLドラフトで、ライアンは全体5位指名されたが、すぐにエントリー契約をされず、2013年の12月まで、OHLやAHLでプレーしていた。
ちなみに、2011年のKHLドラフトでも、ライアンはアムール・ハバロフスクに指名されている。
↩︎ - スポーツ用品であり、アメリカのスポーツイベントで、ファンのシンボルとしてよく使われるタオルの一種。 ↩︎