はじめに
プレシーズン・マッチが開幕する9月23日(土)まで1週間を切り、新シーズンに向けての調整のギアを、各チームがワンランク・アップさせている時期だと思います。NHLトップ・チームの選手達は当然のこと、若手もトップへとピックアップしてもらうべく奮闘中。
しかし、この男は無人の野を駆けているのかもしれません。コナー・ベダード、2023年ドラフト全体1位の彼は、5ヶ月ぶりに試合に出ても、全く力が錆びついているどころか、ますますキレ味鋭いプレーヤーになっているようです。新人戦とはいえ、格の違いを見せつけました。
今回は、そんなベダードの近況報告です。飄々としながらも、大胆なプレーを見せつける彼に大物を感じます。
若手中心の試合じゃ、あまりにも能力の突出しているベダードにとって、
物足りなさ過ぎるんじゃないかにゃ。
プレシーズン・マッチに早々とデビューするかも。
引用元:NHL.com「Bedard scores hat trick in Blackhawks debut at Tom Kurvers Prospect Showcase」。
5ヶ月ぶりに試合に出てもハットトリック!
コナー・ベダードは、5ヶ月以上ぶりにゲームをプレイするのが待ちきれませんでした。
それは、2023年のNHLドラフトでシカゴ・ブラックホークスに全体1位指名されたセンターが、9月16日(土曜日)、TRIAリンクで開催されたトム・カーヴァーズ・プロスペクトショーケースでセントルイス・ブルースと対戦し、氷上に立った途端に明らかになったのです。
※TRIAリンク=ミネソタ州セントポールにあるアイスホッケーアリーナと練習施設。ダウンタウンにあるトレジャーアイランドセンターの5階。
アリーナは、建物を再開発しているセントポール港湾局による再開発努力の一環として建設されたもの(元はメイシーズ・デパート)であり、ミネソタ・ワイルドの練習施設となっている。
※トム・カーヴァーズ・プロスペクトショーケース=2021年6月、58歳で亡くなったミネソタ・ワイルドのアシスタントGMのトム・カーヴァーズの遺志を継ぎ、若手育成のための数チームによる新人対抗戦。今シーズンはシカゴ、ミネソタ、セントルイスの3チームが参加。
試合終了までに3ゴール・1アシストを記録し、5-0で勝利しました。
※試合の映像はこちら↓。
しかし、18歳の彼は、パフォーマンス後も、いつものようにのんびりしていたようです。
「ええ、(3ゴール・1アシストに)あまり意味はないです。試合に出られるだけでいい」とベダードは述べました。「みんなと一緒にいるのが楽しくて、ここに来て、音楽が流れてると、幸運がやってくる気になるんだ。
それはもう本当に最高なんだ、復帰したばかりということもあるし、ああ、本当に楽しかった」。
ベダードにとって、過去3シーズン所属したレジーナが、ウェスタン・ホッケーリーグのプレーオフ1回戦・第7戦で、サスカトゥーンに敗れた4月10日以来の試合でした。
おそるべき18歳は、周囲の騒ぎもどこ吹く風って感じだにゃ。
こういう人っているよね。なんか周囲と違う時間を生きているような人。
下部リーグの監督もビックリ!
この試合は、ベダードにとって大した意味はないかもしれませんが、2015年のNHLドラフトで、エドモントン・オイラーズに全体1位指名されたセンターのコナー・マクデイビッド以来、彼がNHLで最も期待されている選手である理由を思い起こさせたのは間違いありません。
彼のリリースとリストショットには、目を見張るものがあります。
体格はそれほど大きくないにもかかわらず(5フィート10インチ=約178センチ、185ポンド=84キロ)、ネットを揺らす能力と意欲、どこからでもシュートを打つ能力、それはすべてブラックホークスのユニフォームを着た彼の最初の試合で発揮されました。
ブラックホークス傘下のアメリカン・ホッケー・リーグ所属チームであるロックフォードと、今週末における新人戦チームを率いるロックフォードのアンダース・ソレンセン監督は「そうだね、氷の上にいるたびに、彼の存在は危険なものに見えたよ」と語っています。
※アンダース・ソレンセン=スウェーデン出身の48歳、AHLのロックフォード・アイスホッグス監督。NHLでのプレー経験はなし。暫定監督となった2021-22シーズン、ロックフォードにチーム史上7回目、2018年以来のカルダーカップ・プレーオフの出場権獲得へと導いている。
「彼は11発のシュートを打ったんだろう?これはかなり印象的なことさ」。
「つまり、(リリース時の)角度を変えること、パスのキャッチの仕方、相手選手の惑わせ方、パックの出し入れの仕方など、たくさんの方法論を持っているんだ。見ていて感動するし、楽しかったよ」。
おどけたポーズも出て、余裕しゃくしゃく
ベダードは、昨季レギュラーシーズン57試合で、ゴール(71)、ポイント(143)、シュート・オン・ゴール(360)、1試合あたりのポイント(2.51)、1試合あたりのゴール(1.24)でWHLをリードする得点感覚を見せました。
彼には終始素晴らしい得点チャンスがありましたが、前半、ブルーズのゴールキーパー、コルテン・エリス(22歳。新シーズンはスプリングフィールド・サンダーバーズ〈AHL〉でプレー予定)に阻まれ、第2ピリオド・10分31秒、ウィル・クランリー(21歳。新シーズンはエリスと同チームでプレー予定)と交代するまでゴールを許しませんでした。
ブラックホークスの2度目のパワープレーで、ベダードは(相手GKに)負けませんでした。右のフェイスオフ・サークルに滑り込み、第2ピリオド・14分23秒、2-0とリードを広げるリストショットをクランリーに決めたのです。
得点後、ベダードはスティックをくるくると回し、遊び心満点で”ホルスター(拳銃を収めるケース)”に戻しました。
「もちろん、よかったです」とベダードはそのゴールについて語っています。「本当にいいスクリーン・プレー(GKの目の前に立ち、飛んでくるパックを隠して幻惑する)だったね、相手の逆を突いた形になった。
もちろん、1点取れたのはいい気分だし、ここでの新人戦だからね。あまり意味はないけど、得点を決めるのはいつもいい気分さ」。
1人目のゴールキーパーから得点できなかったのは、気になる点かにゃ。
これを監督やスタッフがどう判断するか。
たまたまだったのか、クセを見抜かれていたのか。
しっかり先輩のゴールもアシスト
第3ピリオド・4分54秒、ベダードは再び得点しており、左サークルまで滑った後に一時停止し、鋭い角度から右上隅にシュートを放ち、ブラックホークスが4-0とリードしました。
そのゴールで何を見たのかと聞かれたベダードは、「どこに行くのか見てたんだ」と言って笑っていました。
「いや、ちょっと遠いサイドだったし、よくわからなかったんだけど、パワープレイの後だったから、ちょっと狙ってみようと思ってやったら、運よく入ったね」。
ベダードの3点目は、高い位置まで滑り込み、残り7分強でクロスバーに当たったシュートが入ったものです。ファンは氷の上に帽子を投げようとしましたが、リンク周辺の安全ネットのためにできなかったようです。
このパフォーマンスは、ベダードのチームメイトにとって驚きではありませんでした。
シャットアウトを達成したゴールキーパーのドリュー・コメッソ(21歳。新シーズンはロックフォード・アイスホッグス〈AHL〉でプレー予定)は、「ああ、(彼がやったことを)見ていたよ。ショックはないさ、だって何度も実際に練習で見ているからね」。
ブラックホークスは、ベダードのアシストにより、ルイス・クレヴィエ(ディフェンス、22歳。新シーズンはロックフォードでプレー予定)とコルトン・ダッハ(センター/左ウィング、21歳。新シーズンはロックフォードでプレー予定)も得点し、日曜日の午後4時(東部標準時)、トーナメントの締めくくりでミネソタ・ワイルドと対戦します。
大切に育てていく方針か
ベダードは日曜日にプレーするのでしょうか。彼は、プレーするのはいつも好きだが、コーチがどう言うかを聞いてみると言いました。ソレンセンは、「彼と少し話してみて、今ここで、どんな状態にあるのか見ていきたい」と言っています。
※ベダードは日曜日にプレーするのでしょうか=17日の試合に、ベダードは出場せず。試合の方は点の取り合いとなり、7-4で、ミネソタがシカゴに勝利している。
たとえプレーしなくても、ショーケースの間、ベダードはかなりのショーを見せてくれました。
「うん、やっとゲームできて楽しかったよ」とベダードは述べています。「フィジカル面は素晴らしいペースで仕上がっている。みんな楽しめたし、最初の1本を決めて、そこからさらに前進できたのはよかったと思う」。
まとめ
17日の試合にベダードが出場しなかったということは、彼の状態が悪いと考えるより、チームがもうワンランク上の段階でプレーさせる腹づもりなのかもしれません。つまり、プレシーズン・マッチに帯同させる可能性が出てきた、ということです。
そこで、今回のようなプレーを見せつけるとなれば、10月開幕の新シーズン開幕日、ベダードが氷の上に立っているのは確実でしょう。シカゴ・ファンはそれを心待ちにしていると思いますし、NHL全体で見ても、新たなスター誕生は喜ばしいことです。
気掛かりなのはスタミナ面。今回の不出場がそれを考慮したものとなると、話は変わってきます。元々そこが弱点と言われていた選手ですから、1~2年は体づくりに充てられる可能性もまだ残っています。プレシーズン・マッチで、ベダードの勇姿を見られるのでしょうか。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!