はじめに
間もなくNHLオールスターのファン投票も締め切られますが、その開催地はフロリダ・パンサーズの本拠地= FLA LIVEアリーナとなっています。オールスターの冠スポンサーがHondaであるビッグ・イベント、日本で全く注目されていないのが、何とも歯がゆいです。
そのフロリダ・パンサーズ、昨シーズンの勝利数では32チーム中No.1だったのですが、プレーオフで勝ちあがれず、スタンレー・カップを手にすることはできませんでした。今シーズン、絶対的優勝候補とは言わないまでも、前評判はそれなりに良かったはずです。ところが、フタを開けてみると…。
攻撃力は昨シーズンとそれほど変わらないんだけど、
守備がにゃあ…。
引用元:NHL.com「Panthers desperate for 2nd-half turnaround after rocky start」。
どうした、パンサーズ!
フロリダ・パンサーズは2021-22年にNHLのレギュラー・シーズンのトップ・チームとしてプレジデンツ・トロフィーを受賞しました。これまでのチーム最多(2015-2016)より11勝多い58勝、19ポイント多い122ポイントを獲得しました。
イースタン・カンファレンス・ファーストラウンドで、ワシントン・キャピタルズを4勝2敗で破り、1996年以来となるスタンレーカップ・プレイオフでのシリーズに勝利を収めました。
※プレジデンツ・トロフィー=NHLのレギュラーシーズンにおいて、最も多くの勝ち点を獲得したチームに贈呈される賞。
※セカンド・ラウンド、タンパベイ・ライトニングに0勝4敗で終戦。
しかし、今シーズンの半ばに来てどうでしょう?
日曜日のダラス・スターズ戦に5-1で敗れた後、18勝19敗4分けで、アトランティック・ディビジョンでは5位、東地区からプレーオフに入る2枚目のワイルドカードをかけた争いにおいては、ニューヨーク・アイランダーズと6ポイント差を付けられています。
つまり、カップ戦出場に向けて次のステップに進もうとしていたチャンスなのに、プレーオフ進出を逃す危険性があるのです。
また、2月4日にFLA LIVEアリーナ(パンサーズ本拠地)で2023 Honda NHLオールスターゲームを開催し(東部標準時午後3時;ABC、ESPN+、CBC、SN、TVAS。日本時間では2月5日・午前5時)、南フロリダではホッケーを祝福している最中です。
所属選手はどう考えているのか
チーム状況はよくないです。
しかし、絶望的ではありません。
パンサーズのフォワード、サム・ベネット(センター、26歳)は「全ての試合が我々にとって絶対に勝たなければならないものです」と語っています。「ここで調子を上げて自信をつける必要があるだろうし、良い調子になれば、間違いなくプレーオフ進出のチャンスだ」。
「私たちは、本当に一度に1つのゲームについてのみ精神を集中させています。そして、その試合で相手に圧倒されるかもしれないので、私たちはシーズンの全体像を本当に見ることができないのです」。
選手がちょっと弱気になってるにゃ…。
オフ・シーズンの変化
パンサーズはオフ・シーズンに大きな変化を遂げました。その中でも、二つが突出しています。
2021年10月29日、ジョエル・クエンネビル監督の後任として就任したアンドリュー・ブルネット監督は、51勝18敗6分の成績を残しました。
※ジョエル・クエンネビル=64歳。2010年代、シカゴ・ブラックホークスで3度スタンレー・カップをかかげた名将。NHLでの通算勝利数969は、史上第2位。
※アンドリュー・ブルネット=49歳。現役時代のポジションは左ウィング。新規参入チームと縁があり、ナッシュビル・プレデターズ(98-99)、アトランタ・スラッシャーズ(99-00、現在のウィニペグ・ジェッツ)と2シーズン連続で移籍している。
年間最優秀監督としてジャック・アダムス賞の次点になったのにもかかわらず、6月22日、ブルネット監督の後任として、ポール・モーリスを採用したのです。
※ポール・モーリス=55歳。2010年11月28日、43歳の時、NHL史上最年少で1,000試合の監督歴に到達。
2022年7月22日、フォワードのマシュー・カチャック(カルガリー・フレイムスから。左ウィング、25歳)をトレードで獲得し、フォワードのジョナサン・ヒューベルドー(センター、29歳)とディフェンスのマッケンジー・ウィーガー(29歳)をカルガリー・フレームスに放出しました。
昨シーズン、ヒューベルドーは115ポイント(30ゴール、85アシスト)でチームをリードし、ウィーガーは平均アイスタイム(23分22秒)でチーム2位を記録しました。
変化を求めた理由
パンサーズを次のレベルに引き上げるには、モーリスがより良い選択であると考えられていました。当時、NHL史上、コーチを務めた試合数では4位(1,684)、勝利数では7位(775勝)でした。
ブルネットは、NHLでシーズンを通してヘッドコーチを務めたことがなかったのです。
29歳のヒューベルドーは、今シーズン終了後、無制限フリーエージェントになる可能性がありました。当時24歳、現在25歳のカチャックは制限付きフリーエージェントでした。
それぞれが新チームと8年契約を結び、カチャックはトレードの日にそれに同意し、8月5日、ヒューベルドーは署名したのです。
高値で売れる時に売りたかった訳だにゃ。
1試合あたりの得点はNHL1位の4.11得点からリーグ15位の3.22得点、1試合平均2.95得点のNHL12位からリーグ23位の3.41得点となってしまいました。
ただし、この変更がすべてを説明しているわけではありません。
不振の理由は他にもある!
フロリダは選手の病気や怪我に対処してきました。ディフェンスのアーロン・エクブラッド(26歳)は11試合、ディフェンスのラドコ・グダス(32歳)は10試合を欠場しています。フォワードのアンソニー・デュクレア(左ウィング、27歳)は今シーズンプレーしていません。
フォワードのパトリック・ホルンクヴィスト(右ウィング、36歳)は19試合、センターのアレクサンデル・バルコフ(27歳)は10試合、センターのアントン・ランデル(21歳)は9試合を欠場しています。
パンサーズのチーム力は、いくつかの点でそれほど落ちていません。昨シーズン、パックの占有率を示す5対5でのシュート成功率(56.5)でNHL1位でした。今シーズンは4位(53.8)です。
カチャックは期待したとおりの働きをしてくれました。49ポイント(20ゴール、29アシスト)でチームをリードし、オールスターゲームにも出場します。
「何が足りないのだろうか?」、モーリスは言いました。「改善しなければならない、明白なポイントがいくつかあります」。
守備に難あり…
一つはペナルティ・キルです。パワープレーは、「2勝33敗」のスタートから昨シーズンと同じ24.4%となっています。しかし、昨シーズンNHLで16位の79.5%だったペナルティ・キルは、現在75.0%でリーグ22位です。ウィーガーを失ったことが痛手なのかもしれません。
※ペナルティ・キル=ショート・ハンドとも。例:自チームの1人がマイナー・ペナルティをした場合、該当チームは2分間1人少ない人数でプレーすることになる。その人数でゴールを決めることをいう。
ただし、この場合、ペナルティによって1人人数が少ない守備側を想定しており、今シーズンのパンサーズは、上記の数字にあるように、守備力が落ちていることになる。
もう一つはゴールテンディングです。スペンサー・ナイト(21歳)は9勝7敗3分、平均3.05失点、セーブ率.906です。セルゲイ・ボブロフスキー(34歳)は9勝12敗1分、平均失点3.26、セーブ率.895。
良いニュースは、NHLの最高のゴールキーパーとしてベジーナ・トロフィーを2度受賞したボブロフスキーが12月8日から調子を上げ、5勝6敗、平均失点2.76、セーブ率.912を記録したことです。
「私は自分たちチームを完全に信じており、素晴らしいグループを持っている」とカチャックは述べました。「我々の記録はおそらく、今年どれだけ良いプレーをしたかを示していません」。
アウェーの連戦をどう乗り切るか
パンサーズは、次の2週間半、自分たちにチャンスを与えなければなりません。
火曜日(1月10日・東部標準時午後9時30分;ESPN+、HULU、SN NOW。日本時間1月11日・午前11時30分)、スタンレーカップのディフェンディング・チャンピオン、コロラド・アバランチ戦を皮切りに、次の9試合のうち7試合がアウェーで行われます。
その後、彼らのスケジュールは軽くなります。ホームゲームは残り20試合。その時点での残り12試合のロードゲームのうち、3試合は中部標準時ゾーンで行われます。残りは東部標準時ゾーンとなります。
※フロリダ州は中部と東部に跨っており、非常に時間帯がややこしい。だが、本拠地周辺は東部を採用しており、同じ標準時ゾーンで試合ができる。
モーリスは「われわれは、これらすべてを精神的にプレーオフ・ゲームと考えながら、取り組まなければならないモードにある」と述べました。「プレーオフで16勝0敗になるわけでもないし、(今月の)すべての試合に勝つわけでもない。
これは今月のNHLで見たのと同じくらい厳しい旅です。…しかし、我々にとって、今、失うよりも多くのものを勝ち取らなければならない」。
昨シーズン、勝率.744だったチームです。再び走る可能性があります。
「非常に多くの可能性があります」とエクブラッドは述べました。「非常に緊急性が高いのは間違いないでしょう」。
まとめ
選手達のインタビューに目を通すと、危機感を募らせながらも、どこか弱気になっている部分があるようです。アウェーの緒戦、こちらもやや不調のアバランチとの試合が、一つの鍵になると予想しています。ここでスターズ戦のような大敗を喫するようだと、かなり厳しいです。
※この記事執筆中、アバランチ戦が終了。パンサーズは5-4で勝利。4-4に追いつかれた時は、「また守備が破たんしてるな」と思いましたが、よく持ち直しました。
ゴールテンダーが安定してきているのなら、アウェー戦は定石通り守備的に行って、確実に勝利を拾っていく。これまでのスタイルを捨てて、勝負に徹することができるかどうか。オールスターのお祭りムードをさらに盛り上げるためにも、パンサーズは奮起しないといけませんね。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!