はじめに
8月のNHLは移籍市場も一段落し、新たな顔ぶれを加えた各チームを分析した「新シーズン予想」の季節です。どのNHL情報サイトも共通しているのは、詳細なデータを駆使している点でしょうか。いろいろ見ていくと、「えっ、こんな項目もあるんだ」というのに驚かされます。
さて、プレーオフに順当に進出するであろうチームの予想を見ても、あまり面白くありませんし、このブログのあまのじゃくな性格に反してしまいます。今回取り上げたのは、13年間、プレーオフ進出と絶縁状態にあるバッファロー・セイバーズです。
開幕から連敗続きで、どっぷり負けグセの付いているようなチームではないのですが、怪我人が多い上に、選手層の薄さのせいで、それをフォローする人材が出てこず、シーズン途中に息切れしてしまうタイプのチームです。さあ、このオフ、どう戦力を整えたのでしょうか。
大負けしない代わりに、上位と激しく争うわけでもない、
良くも悪くも「中くらいのチーム」なんだにゃ。
セントルイス・ブルースもそんな感じ。
今回、新加入選手も何人か紹介されているけど、
うーん、どうなんでしょ…って感じなんだなぁ。
引用元:NHL.com「 Inside look at Buffalo Sabres」
13年間もご無沙汰とは
バッファロー・セイバーズは、NHL記録となる13年間のスタンレーカップ・プレーオフ不出場の低迷に終止符を打つために、ベンチ後ろのスタッフやロースターの変化、そして中心選手たちの復活を期待しています。
「我々はチームに対して高いレベルを実行する方法論と構成をどうしたいのかを求め、チームは精神的にその準備を済ませており、我々のフォローに対応できるほど成熟していると私は考えている」とゼネラルマネージャーのケビン・アダムスは4月に述べています。
2011年、ポストシーズンにセイバーズを導いた(現時点で)最後の監督であるリンディ・ラフは、4月22日に雇われ、現在はポストシーズンに戻ろうとする船の舵取りを任されています。
「各選手が自分の強みを信じ、毎晩何をもたらし、どのようなレベルで戦えるかを信じることで、クラブの態度は一変する」とラフは語りました。「そして、夜の終わりに、ホッケーの試合に勝たなければなりません。
ホッケーの試合に勝つと、その信念は本当に(チーム内へ)伝染します。自分のプレーが好きで、チームメイトをより高いレベルに押し上げ、勝たなければなりません」。
チームに一貫性がない
昨シーズン(23-24)のバッファローの勝ち点は84でしたが、これは、セイバーズがイースタン・カンファレンス第2ワイルドカードのフロリダ・パンサーズと、勝ち点1差で終えた(プレーオフ進出を逃した)2022-23シーズンより、7ポイント少ないのです。
チームは足場を固めるのにも、一貫性を見出すのにも苦労し、しばしば序盤で何点ものビハインドを負い、連勝を規則正しく続けることができませんでした。
「素晴らしいチームだとわかるときもあれば、(勝敗に)淡々としすぎているときもあったと思う」と、フォワードのテージ・トンプソンはシーズン終盤に語っています。「それ(チームの一貫性)は我々に植え付けなければならないことだと思う。
そしてそれは、チームの一貫性とは何かという説明責任の問題にもつながってくる。もし誰かが必要なプレーをしていないのであれば、このロッカールームにいる我々がお互いに責任を持つということだ」。
セイバーズの選手たちは、ラフの下で簡単でないことを知っていますが、準備はできています。
「我々がチームとして実際に話し合ったこと、そして次のレベルに進むために何が必要かを個々の選手で話し合ったことに、彼(ラフ)はマッチしている人だと思う」と、ラフが監督に採用された後、フォワードのアレックス・トゥックはラフが雇われた後に語りました。
「そして、彼はそれにぴったりだと思う。…彼を受け入れる準備はできているし、そのチャンスにも応える準備ができている」。
弱点の補強は進んでいる
ボトム6の刷新(第3・4ライン)は、GMのアダムスが次のステップに進むために行った、もう一つの変更点です。
ライアン・マクロードは、7月5日、フォワード候補マシュー・サヴォアとのトレードで、エドモントン・オイラーズからセイバーズにやって来ました。アダムスがNHLのロースターを助けるため、選手層の厚い若手有望株達に手を加えたのは初めてのことです。
マクロードはおそらくサードラインのセンターとなり、バッファローの中盤に厚み加え安定させるのに役立つでしょう。
また、ベック・マレンスティン(6月29日にワシントン・キャピタルズからトレード)、サム・ラファティ(フリーエージェント、バンクーバー・カナックスから)、ニコラス・オーブ・クーベル(フリーエージェント、ワシントン・キャピタルズから)を獲得し、スピードとフィジカルを向上させ、
ジェイソン・ザッカー(フリーエージェント、ナッシュビル・プレデターズから)はスピード、スキル、執拗さ、多才さをラインナップにもたらします。
このロースターの変更は、ラフがセイバーズで計画しているスタイルに合致しています。-相手にとって対戦するのが難しく、ダイレクトでスピードがあり、フィジカルに優れているものです。
また、昨シーズンは攻撃面で苦戦を強いられたにもかかわらず(22-23シーズンは3位・293ゴールでしたが、23-24シーズンはNHLで23位・244ゴールでした)、バッファローはロースターの才能を信じており、トンプソン、トゥック、ディラン・コゼンスの復調を期待しています。
2022-23シーズンにキャリアハイを記録した後、昨シーズンはそれぞれオフェンス面で調子を落としました。
NHLの中で最も若いチーム
セイバーズはNHLで最も若いチームであり、過去数シーズンはこの「タイトル」を保持してきています。32歳のザッカーがチーム最年長スケーターになる予定で、ゴールキーパーのジェームズ・ライマーは、彼がロースターに載っている場合、36歳で最年長の選手になります。
しかし、ロースターに24歳以下の選手が10人いる一方で、その中心的な選手の多くはNHLで数百試合を経験しており、経験不足の概念を排除する存在です。
その中には、24歳のラスムス・ダーリン(436試合)と23歳のコゼンス(280試合)が含まれ、26歳のトンプソンは372試合に出場しています。
「我々がリーグで最も若いチームであることは知っている」とアダムスは言いました。「私はそれを理解しているし、それが現実であり、一貫性のなさや浮き沈みの激しい時期があるのはそのせいだと思う。
しかし、我々には今、このリーグで経験を積み、リーグで数試合出場した選手がいる。それはもう語るまでもないだろ」。
GMは、若手の多いチームの大化けを期待しているんだろうにゃ。
個々の選手は光り輝いていても、
いざ、試合になると、力を発揮できなくて敗戦…。
アイスホッケーって組合せの美学だから、上手く操れる監督さんが来ないと…。
ラフの戦術が今に適応するかどうか。
引用元:NHL.com「3 questions facing Buffalo Sabres」
スピード重視の補強
1.(新シーズンに向けて)選手の入れ換えは十分ですか?
セイバーズが期待を大きく下回る成績を収めたシーズン後、昨シーズン(23-24)終盤、特に選手間で、前線強化の必要性を強く語っていた選手達に対し、リンディ・ラフ監督は高いレベルを実行する方法論と新たな構成をもたらすために雇われました。
ゼネラルマネージャーのケヴィン・アダムスもボトム6(第3&4ライン)を刷新しました。7月5日、彼はエドモントン・オイラーズとのトレードで、第3ラインのセンターとして出場する可能性が高いフォワードのライアン・マクロードを獲得しました。
マクロードは、97パーセンタイル(成人男性の歩行速度を50パーセンタイルを基準とした場合の速度)以上にランクインするスピードをもたらし、中盤とペナルティ・キルの安定にも貢献するでしょう。
また、6月29日にワシントン・キャピタルズからベック・マレンスティンをトレードで獲得し、フリーエージェントとしてサム・ラファティとニコラス・オーブ・クーベルと契約しました。
それぞれがスピード、フィジカル、フォアチェックでの執拗さをもたらし、セイバーズを対戦するのが難しいチームにするはずです。これらは、チームが昨シーズンにもっと必要としていたことです。
この新加入選手の中には、フリーエージェントで、スピードがあり、多才なジェイソン・ザッカーの獲得も含まれており、セイバーズはより明確なラインナップを手に入れ、13年間のスタンレーカッププレーオフの低迷を終わらせるために重要な役割を果たすでしょう。
パワープレーを徹底強化
2.オフェンスは立ち直ることができますか?
セイバーズは、2022-23シーズンは3位(293ゴール、1試合あたり3.57ゴール)でしたが、昨シーズンはNHL23位(244ゴール、1試合あたり2.98ゴール)にランクされています。
テージ・トンプソン、アレックス・トゥック、ディラン・コゼンスは、それぞれキャリアハイから脱落しました。24ゴールでチーム3位の記録を残したジェフ・スキナーは、6月30日のバイアウト(チームが残りの契約を買い取り)により1抜けてしまい、その穴は残ったままです。
パワープレーでのシーズン中の苦戦は、何の助けにもなりませんでした。バッファローは、パワープレー効率(16.6%)でNHL29位、パワープレーゴール37は30位にランクインしています。両方のカテゴリーで9位だった2022-23シーズンとは対照的でした。
アメリカンホッケーリーグのロチェスターで4シーズン、コーチを務めた後、ラフのスタッフのアシスタントに昇進したセス・アパートは、マン・アドバンテージ(パワープレー)を担当します。
パワープレー部門において、ロチェスターはAHL上半分の順位でフィニッシュしており、最初の3シーズンそれぞれ20%以上の成功率を記録していましたが、昨シーズンは17.9%に低下しました。
アダムスは、トンプソン、トゥック、コゼンスが攻撃面で調子を取り戻し、28ゴールで昨シーズンにブレイクしたJJ・ペテルカと、負傷でシーズンを棒に振ったものの、次のステップに進む寸前と思われたジャック・クインが成長し続けることで、
攻撃面での解決策が内部で生まれると信じています。
「そのロースターには才能があります」とアダムスは7月1日に言いました。「我々はもっとシャープにプレーする必要があるし、もっと一貫性を持ってプレーする必要がある。もっと競争力のあるプレーをする必要があるが、私は攻撃的な部分について心配していない」。
レンジャーズなんかは、
パワープレーとペナルティキルをバランス良くこなして、
勝ちを拾っていったチーム、
セイバーズは大いに参考にすべきだと思うにゃ。
うーん、新コーチはAHLで手腕を発揮したみたいだけど、
NHLでそれが上手くいくかは分からんなぁ。
主力の怪我が早く治りますように
3.マティアス・サミュエルソンとジャック・クインの状態は大丈夫ですか?
ディフェンスマンのサミュエルソンとフォワードのクインは、過去2シーズンにわたり、それぞれ怪我に悩まされており、それがセイバーズの選手層の厚さにストレスを与えています。
サミュエルソンは昨シーズン、1月23日に上半身を負傷し、シーズン終了まで欠場したため、41試合の出場にとどまりました。2022-23シーズンは下半身の怪我で1ヶ月間離脱し、シーズン最終週には別の怪我で欠場しています。
トップペアでラスムス・ダーリンとペアを組むことが多い24歳の彼は、トップ4(第1&第2ライン)に穴を空けました。
穴埋めできるオプション(控え選手)が限られており、穴埋めしようとした選手も苦戦したため、ダーリンとオーウェン・パワーの仕事量はさらに重くなったのです。
(補強により)ディフェンスの厚みを増しているとはいえ、セイバーズが成功を収めるためには、そしてシーズンを乗り切るためにサミュエルソンが必要です。
ルーキーシーズンで好調な成績を収めたクインはトップ6(第1&第2ライン)に抜擢されましたが、オフシーズンのトレーニング中にアキレス腱を痛め、シーズン最初の32試合を欠場することになりました。
22歳の彼は12月中旬に復帰していますが、1月27日に下半身の怪我を負って手術した後、再び2ヶ月間欠場することになりました。
この22歳の選手は、復帰後27試合に出場して19ポイント(9ゴール、10アシスト)を挙げ、まるで何もミスをしていないかのように見えたものです。
しかし、彼がいなかったことと、(ポジションをフォローした)他の何人かが苦戦したため、セイバーズはラインナップの重要な部分を固めることができませんでした。
故障から復帰したクインは、フォワード陣にとってだけでなく、成長を続けるクイン自身にとっても重要なのです。
まとめ
サミュエルソンもクインも主力中の主力なので、やはり開幕からフルに働いてもらわないと、ラフの計算は大いに違ってくる思います。ディフェンスにはラスムス・ダーリン、オフェンスにはテージ・トンプソンとスターがいても、その次の存在は重要なのです。
名将スコッティ・ボウマンですら、手綱さばきに手こずったチームであるセイバーズ。得てして再登板はあまり成功しない例の多いNHLで、リンディ・ラフがどう立て直すか。GMはなぜか?自信満々ですが、現有戦力だと、ワイルドカードに引っかかればいいかな、って感じです。
セイバーズは、10月5日、24-25シーズン開幕を飾るグローバル・シリーズ(チェコで開催)で、ニュージャージー・デビルズと対戦します。どのチームよりも早くレギュラー・シーズンに入ることが、新チームにどう影響するのかも見どころです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- リンディ・ラフがドン・グラナートに代わって監督就任後、スキナーは新監督の戦略に合わないと判断され、バイアウトの可能性が高くなった。
2024年6月29日、セイバーズはスキナーの残りの契約を買い取り、バッファローでの在籍期間を終了させて、フリーエージェントにすると発表。同年7月1日にフリーエージェントとなった後、スキナーはエドモントン・オイラーズと1年300万ドルの契約を結んでいる。 ↩︎