はじめに
勝ち点を積み重ねながらも、どこかスッキリしない――今季のペンギンズを象徴しているのが、延長戦とシュートアウトでの苦戦です。
本記事では、深刻な数字の背景にある「自信」の問題、練習での工夫、読まれている決めパターン、そしてゴーリー事情とトレードの狙いまでを丁寧に整理。惜しい位置にいる今だからこそ見えてくる、ペンギンズの現状と行方を追います🐧
参照記事:Pittsburgh Post-Gazette1「From The Point: Penguins’ crisis of confidence in shootouts could cripple their playoff hopes」
惜しい位置にいるペンギンズ🐧
ペンギンズは29試合を終えた時点で、ほとんど誰も予想していなかったほど、かなり良い位置につけています。正直、この成績をここまで想像していた人は多くなかったはずです。ただ、その一方で「もっと上に行けたのでは?」というモヤモヤが残るのも事実です。
特に重くのしかかっているのが、延長戦とシュートアウトでの取りこぼし2です。ここまでの延長戦成績は1勝7敗。その中には、火曜日のアナハイム戦での悲惨なシュートアウト負けも含まれています。
この試合では、残り0.1秒という土壇場で同点ゴールを許し、そのままシュートアウトで敗れました。こうした勝ち点を逃す展開は、混戦が続くイースタン・カンファレンスでは致命的になりかねません💦
3対3の延長戦そのものの内容は、決して悪くありません。得点は1点と少ないものの、失点も2点に抑えています。問題がはっきりしているのは、その先にあるシュートアウトです。
シドニー・クロスビーという絶対的な存在がいて、ほぼすべての他の場面では安定したゴールテンディングを得ているにもかかわらず、シュートアウトでは0勝5敗と結果が出ていません。
数字を見ても、その厳しさは明確です。ペンギンズはリーグで最もシュートアウト成績が悪いチーム3。シュートアウトでのセーブ率は.308と、複数回シュートアウトを経験したチームの中で最低の数字です。
シュート成功率(21.4%)は、少なくとも1回以上シュートアウトを経験しているチームの中で「下から11番目」にとどまっていますが、シーズン序盤のわずかな成功がなければ、さらに印象は悪くなっていたでしょう。
止まらない悪循環と「自信」の問題😓
シュートアウトの流れは、かなり深刻です。ペンギンズのシューターは、直近9回のシュートアウトですべてゴールを決められていません。最後に成功したのは、10月28日のフィラデルフィア戦までさかのぼります。
時間が経つほど、「決まらない」という意識が強くなってしまうのも無理はありません。
この状況について、ブライアン・ラストははっきりと「自信の問題」だと認めています。今季、チーム最多タイとなる4回のシュートアウトを任されているラストは、試合が65分を超えた時点4で、チーム全体が心理的に苦しい状態に陥っていると語りました。
「もう少し楽しむ必要があると思う」とラストは木曜日に言います。「メンタル的にブロックがかかっていて、本来できるはずのことや、自分たちが持っているフェイントや駆け引きを出し切れていない部分があるのかもしれない。そんな感覚があるようだ。
どんなことでもそうだけど、少し自信を失うと体が硬くなって、考えすぎてしまう。だから、もっと自由に、リラックスしてやることが大事なんだ。正直に言って、これ以上悪くなることはないからね」。この言葉には、苦しい現状を打破したい本音がにじんでいます。
ブライアン・ラストもシュートアウト失敗!もうひと押しが足りなかったか…。
練習で見せた工夫と、コーチのスタンス🧊
ペンギンズは木曜朝のスケートの最後に、シュートアウトの練習時間5を設けました。ラインアップの上下に関係なく、多くの選手が順番に動きを試し、それぞれが自分なりの形を探します。その中で印象的だったのが、ケビン・ヘイズのプレーでした。
どこか気だるそうな助走から一転、鋭いリストショットを放ち、ゴーリーのアルトゥルス・シロフスの壁を破ります。この一連の動きは、今チームに求められている「創造性」と「引き出しの多さ」を象徴していました✨
「もっと取り組んでいくつもりだ」と、ペンギンズのダン・ミューズ監督も、シュートアウト対策を今後さらに強化していく考えを示しています。ただし、現実的な制約もあります。
「時間を見つけなければならない。ただ今は、練習時間があまり取れない時期でもある。だから試合前のスケート後でもいいから、少しずつ積み重ねていく。選手を状況に置いて反復させることで、こちらも関わりながら、できる限りのサポートをしたい。明らかに改善が必要な分野だから、必ず時間を作って取り組むよ」。
一方で、指導の仕方には慎重です。ミューズが強調するのは、「教えすぎない」こと。優柔不断になったり、考えすぎたりする状態は、シュートアウトでは特に避けたいものです。情報を詰め込みすぎたり、必要以上のプレッシャーをかけたりすると、かえって逆効果になる。
だからこそ、試行錯誤は練習の場で行い、試合では直感を信じてプレーする。この考え方が、チームの基本方針になっています。

練習の中で、選手それぞれが「自分の引き出し」を探している姿がとても印象的だったにゃ。ヘイズの一連の動きに象徴されるように、型にはめず、考えすぎず、直感を大切にする。そのスタンスこそが、ペンギンズがもうひと皮むけるために、必要な前向きな工夫だと感じさせられた。それって、試合のどの場面でも必要だから。
同じ動きが読まれている現実🎯
シュートアウト敗戦がプレーオフ争いに与える影響は、非常に大きくなり得ます。もし今シーズンがこの時点で終わるとしたら、イースタン・カンファレンスのワイルドカード枠に入るのはペンギンズとフライヤーズ。しかもフィラデルフィアが、ピッツバーグを1ポイント上回っています。
この差を考えると、シュートアウトで失った勝ち点の重みがよく分かります。
対照的なのがフライヤーズです。彼らはシュートアウトで5戦全勝。フォワードのトレバー・ゼグラスは、4回のチャンスですべてゴールを決め、リーグ2位となるシュートアウト得点数6を記録しています。
卓越したスティックハンドリングを武器に、ゼグラスはシュートアウト通算20回以上試みた選手の中で、成功率68%という歴代トップの数字を誇ります。
それと比べると、ペンギンズの攻めはどうしても単調に見えてしまいます。フェイントを重ねても、ゴーリーがほとんど動じない場面が続いています。相手からすれば、「来る動き」がある程度見えている、そんな印象すらあります。
シドニー・クロスビーのシュートアウトでの定番ルーティンは、多くのファンにとっておなじみでしょう。左サイドからゆっくり入って中央へ切れ込み、シュートを放つ。多くの場合、狙いは股下、もしくはグローブ側の上。この形は、これまで何度も成功してきました。
しかし火曜日のアナハイム戦では、ビレ・フッソがその動きを完全に読んでいました。シュートを止めた場面を見て、スポーツネット・ピッツバーグの解説者フィル・ボークは、「あれがシドのシュートアウトでの決めパターンだ」と指摘します。
左から入って中央へ切れ込む。その動きに対し、フッソはグローブを動かす必要すらありませんでした。
クロスビーの通算シュートアウト成功率は37.9%。ただし昨季は7回中1回しか決められていません。今季も、ブライアン・ラストと並んで4回中1回の成功にとどまっています。
コロンバス戦では、どちらもゴーリーのエルビス・メルズリキンスが前に出てきたところを見て、スティックの上を越すように浮かせるシュートでゴールを奪いましたが、結果としてはまだ安定した数字にはなっていません。
シューターだけでは解決しない課題🥅
シュートアウトについて、ラストは「ゴーリーごとの違い」を意識する重要性も語っています。アグレッシブなタイプもいれば、運動能力に優れたタイプ、グローブの位置が特徴的なタイプもいる。そうした情報を踏まえたうえで、自分の強みと相手ゴーリーの傾向を組み合わせていく必要がある、という考えです。
またラストは、シュートアウトを巡る内部競争にも一定の効果があると見ています。ここまでペンギンズのシュートアウト14回の試行には、6人のスケーターが関わってきました。顔ぶれを固定しすぎず、いろいろな選手に機会を与えることで、新しい感覚が生まれる可能性もあります。
自信を失っている時ほど、練習で多く触れることが大切だとも話しています。「本番ではない状況で、楽しみながら試せる」というのは大きな意味を持ちます。自由に動き、創造的なプレーを試す。その積み重ねが、少しずつ自信を取り戻すきっかけになる、というわけです😊
ただし、問題はシューターだけではありません。どれだけ攻めが改善しても、シュートアウトでのゴールテンディングが安定しなければ、すべては無駄になってしまいます。
アルトゥルス・シロフス7は通常の場面では今季ほとんどの試合で安定したプレーを見せていますが、シュートアウトでは完全に崩れています。シュートアウトでのセーブ率は.200(10本中2本)。これは、3本以上シュートを受けているゴーリーの中で最悪の数字。シュートアウトのある試合では0勝4敗となっています。
24歳のシロフスは、火曜日のアナハイム戦でトロイ・テリーの2本目を止めるまで、5本連続でゴールを許していました。シューターのあらゆるフェイントに引っかかっているように見え、クリーズ内で大きく体勢を崩し、簡単に得点機会を与えてしまっているように見えます。
ジェッツ戦で、シロフスは追いつかないと見るや、相手シューターの足をスティックで引っ掛けようとしてペナルティ。サッカーと同じPK戦となってしまいました…。
現在、アメリカン・ホッケー・リーグで失点率とセーブ率の両部門トップに立っている21歳のルーキー、セルゲイ・ムラショフは、まだNHLでシュートアウトを経験していません。しかし、練習ではそうした場面でも非常に落ち着いているように見えます。
トレードと今後を見据えた判断🔄
今回のトリスタン・ジャリーのトレード8については、ペンギンズのホッケー運営部門社長のカイル・デュバスの手腕に対して、表彰されるか、少なくとも拍手を受けるべきでしょう。年俸の一部も保持せず、ジャリーとサム・プーリンを放出して、3つの戦力を手に入れた形です。
この動きは、チームにとって現実的で冷静な判断だったと言えるでしょう。
獲得したスチュアート・スキナーは、契約が今季限りの正真正銘のNHLゴーリーです。2年前には36勝を挙げ、その前年も29勝、セーブ率.913を記録し、NHLオールスターにも選ばれています。数字だけを見ても、確かな実績を持つゴーリーであることは間違いありません。
私は、スキナーがプレーオフでどうだったかは重要ではないとしています。それはここでの役割ではない。ペンギンズにとって彼の役割は、今から4月までチームが大きく崩れないよう支え、セルゲイ・ムラショフへとつなぐ「橋渡し役」です。
もしスキナーが安定したパフォーマンスを見せれば、トレード期限で再び放出する選択肢も出てきます。
金曜日のトレードについて、選手たちがどう受け止めているかをデュバスに尋ねたところ、その回答の一部はスキナーに関するものものでした。「スチュ・スキナーは、エドモントンで非常に良い実績を積んできた選手だ、というメッセージをロッカールームに伝えている」とデュバスは語ります。
「彼自身も、チームとしても、理想的な形でシーズンが始まったわけではなかったと思う。ただ、特に最近は、期待されているレベルのプレーを再び見せていると思っている」。
まとめ
ペンギンズは好位置につけながら、延長戦とシュートアウトの弱さで勝ち点を落としています。必要なのは技術以上に自信と柔軟さ。今後は起用や戦い方の変化、ゴーリー運用に注目しながら試合を追いたいところです🐧

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 通称「Post-Gazette」は、アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグを拠点とする有力な日刊紙で、1786年の創刊以来200年以上にわたり地域社会とスポーツ界を伝えてきた老舗メディア。歴史の長さでは全米でも古い部類に入り、政治や経済、社会問題からスポーツまで幅広いニュースを扱っている。
特にスポーツ面では、ペンギンズやスティーラーズ(NFL)、パイレーツ(MLB)など地元プロチームの動向を詳しく報じることで知られており、その地元密着型の報道はファンや地域住民から高い信頼を得ている。
地元スポーツの特集や分析、選手インタビューなどを積極的に掲載し、Post-Gazette独自の視点でチーム事情を深掘りする記事も多く、ピッツバーグにおけるスポーツ報道の中心的存在として評価されている。
また、Post-Gazetteは複数回のピューリッツァー賞受賞歴を持つなどジャーナリズムの質でも高い評価を受けており、地域ニュースだけでなく全国的にも影響力のある報道を行ってきた。近年ではデジタル化やニュースルーム内の労使問題など挑戦もあるが、依然としてピッツバーグとその周辺地域で最も広く読まれている新聞のひとつである。
↩︎ - NHLメディアや現地分析によれば、ペンギンズのシュートアウト不振は単なる偶然ではなく、ここ数シーズンにわたって蓄積された構造的な弱点として捉えられている。まず今季だけでなく2024-25シーズンから含め、ペンギンズは連続でシュートアウトに敗れており、直近では9回連続敗戦、成功率も20%台と極めて低調。これは単なる成績の悪さを超え、勝ち点の損失がプレーオフ争いに直接響くレベルと言われている。
背景として指摘されているのが選手構成とプレー傾向のミスマッチ。シドニー・クロスビーやブライアン・ラスト、クリス・レタンといったベテランは通常のゲームでは優れた実績を示しているものの、シュートアウトという「1対1の技術勝負」ではフェイントや変化のある動きが少なく、予測しやすいパターンに終始しているという評価がある。つまり、相手ゴールキーパーから見ると動きが読まれやすく、決定力が発揮されにくい状態が続いている。
さらにゴールテンディング面でも問題が残っており、現状の主戦ゴーリーが通常の試合では優秀でもシュートアウトでは対応力に欠けるという指摘もある。過去数年間でペンギンズのゴールキーパーはリーグ最低クラスのシュートアウトセーブ率にとどまっており、シュートアウト専用の準備や経験が不足している可能性が指摘されている。
このように、シュートアウトでの結果が悪いのは単発的な不運ではなく、選手の強みとシュートアウト特有のスキル要求との間にギャップがあることが要因として挙げられている。また、評論家らは、ゲーム終盤の勝ち切る力の欠如がシュートアウトにつながる前から露呈しているとも指摘しており、延長戦・シュートアウトを含めた「試合の終盤の弱さ」がチーム全体の課題になっているという分析もある。
↩︎ - NHLでシュートアウトが重要な勝ち点獲得の要素であるなか、どのチームがシュートアウトを得意としているかは、「ペンギンズの不振」を浮き彫りにするうえで理解しておきたい視点。
リーグ全体のデータを見ると、2024-25シーズンにはフロリダ・パンサーズがシュートアウト勝利数でトップに立ち、コロンバス・ブルージャケッツやフィラデルフィア・フライヤーズも高い勝率を示していた。これらのチームはシュートアウトで安定して得点を挙げ、勝利に結びつける場面が多く、リーグ平均を上回る成功率を維持していたと言われている。
統計サイトStatMuseがまとめた過去2年のシュートアウト成績ランキングでも、カロライナ・ハリケーンズ、ベガス・ゴールデンナイツ、シアトル・クラーケンなどが比較的良い勝率を残している。これらのチームはシュートアウトでの得点力やゴールテンディングが総じて高く、緊張感の高い1対1の状況でも成果を上げていることが分かる。
対照的にペンギンズはここ数シーズン、シュートアウトでの勝利が極めて少なく、最新のシーズンも連敗が続いている。
専門メディアなどでは、これは単なる不振ではなく、選手のフェイントや個々のシュート技術、ゴールキーパーの対応力といった“シュートアウト特有のスキルセット”で他チームに劣っている結果だと分析されている。こうした比較を知ることで、ペンギンズの順位やプレーオフ争いにおける苦戦の背景がより深く理解しやすくなるだろう。
↩︎ - アイスホッケーの試合が60分を超え、延長戦やシュートアウトといった「勝敗の分かれ目」に差しかかると、選手には技術だけでなく強い心理的負荷がかかることが北米メディアや専門家の分析でも指摘されている。
NHL選手自身やチーム関係者へのインタビューなどを通じてまとめられた研究では、プレッシャー下での精神的な準備(mental readiness)や集中力の維持がパフォーマンスに大きく影響する要素として挙げられており、これらは「精神的な準備」「邪念のコントロール」「強い自信」といった精神スキルとして定義されている。
こうしたスキルはOrlickらが提唱した“人間の卓越性モデル”の主要な構成要素でもあり、エリートアスリートに共通するものとされる。研究によれば、プロ選手は試合全体を通じて高い集中状態を保つことが困難で、特に決定的瞬間である延長戦やシュートアウトのような局面では不安や過度な思考が集中力を削ぎ、普段のプレーができなくなることがあるとされている。
この傾向はスポーツ心理学でも広く認められており、個々の選手が一瞬の状況判断で自信を持ってプレーするためには、習慣的なメンタルトレーニングや心理的準備が不可欠だと分析。また、楽しくプレーすることやリラックスした状態で挑むことが、逆にプレッシャーを減らし成功率を高めるという点も、現役選手の証言や心理学的研究で支持されている。
こうした背景を考えると、65分を過ぎた重要局面でペンギンズのように「チーム全体の自信が揺らぐ」状況は、単なる偶然ではなく氷上競技に特有のメンタル負荷の影響として起こりうるものだと理解できる。
↩︎ - NHLではシュートアウトが試合を決める重要な場面として定着しており、各チームは単なる練習以上の準備を行っている。単純にゴール前でシュートを打つだけでなく、シュートの角度やタイミング、フェイントなど様々な状況を想定した反復練習を重視。
例えば、専門的なホッケー指導では、選手が角度を変えながらゴールに向かう練習や、速いアプローチからブレーキをかける「スピード変化」の練習を取り入れることで、ゴールキーパーの読みを狂わせることが推奨されている。
これにより、選手は固定された走り方やワンパターンな動きにならず、実戦でゴールキーパーの反応を引き出しやすくすることが目的。さらに実際のNHL現場では、選手個々のシュートのクセやゴールキーパーの傾向をビデオで分析し、意図的に変化をつける練習が行われる例も報告されている。
このように、シュートアウトの練習は単なる技術反復に留まらず、個々のプレースタイルに合わせた創造性と読み合いを磨く場にもなっている。
↩︎ - NHLではシュートアウトに秀でた選手がチームの勝敗に大きく影響します。最新シーズンでは、テウヴォ・テラヴァイネン(シカゴ・ブラックホークス)が4本4ゴールで100.0%という完璧な成功率を記録してトップに立ち、アレクサンダー・バーコフ(フロリダ・パンサーズ)とアレックス・タック(バッファロー・セイバーズ)も5本中4ゴール、80.0%と高い数字を残している。
さらに、ケント・ジョンソン(コロンバス・ブルージャケッツ)は6本中4ゴールで66.7%の成功率を記録するなど、複数チームにシュートアウト得点力の高い選手がいる。これらは公式統計で確認されており、特に成功率の高さはシュートアウトにおける冷静な決定力の現れである。
歴史的な記録でも、T.J. Oshie(ワシントン・キャピタルズ等)がキャリア104回のシュートアウト試行で49ゴール・47.1%という成功率で上位に位置し、Erik Christensen(アトランタ・スラッシャーズ等)やJonathan Toews(シカゴ・ブラックホークス)、Tyler Seguin(ダラス・スターズ)なども複数シーズンにわたって高い成功率を残していることがデータとして示されている。
これらの数字は、単なる一発勝負ではなく、選手ごとの技術・傾向の違いが明確に現れる部分であり、成功率や総数が高いほどゴーリーを翻弄する能力が高いと評価される。
また、NHL史上ではパトリック・ケインが132回、ジョー・パヴェルスキーが130回というキャリア最多シュートアウト試行数の記録を持っており、経験豊富な選手ほど繰り返し局面に出て成功機会を増やす傾向にある。こうした具体的な数字は、シュートアウトで信頼できる選手起用の戦略や、成功率と試行数のバランスを見るうえでも参考になる。
↩︎ - ペンギンズのゴールテンディングを支えるアルトゥルス・シロフスは、通常の試合展開では安定感のあるセーブを見せているが、シュートアウトでは大きな課題を抱えていると北米メディアやデータでも指摘されている。
2025-26シーズンの通常のセーブ率は約.900前後で、ゴールアゲインストアベレージ(GAA)も2点台と比較的堅実な数字を残しているものの、シュートアウトに限ると結果が著しく悪く、複数試合で0勝4敗かつセーブ率.200(2本中2本止めただけ)という記録となっている。
これは同条件で複数のシュートを受けたゴーリーの中でも最も低い数字にあたり、シュートアウトに対応する技術や読みの部分で不安があるという評価につながっている。
実際の試合データでも、シロフスは規定時間内では多くのセーブを記録しペンギンズを試合延長まで導いているが、シュートアウトで複数回ゴールを許す場面があり、ゴールキーパーとしての“勝負どころでの反応”や“1対1対応力”に課題があるのではないかと分析する向きもある。
対照的に、通常のプレーでは.916近い高いセーブ率を示すこともあり、これは技術的には完成度が高い一方で、シュートアウト特有の状況に適応する経験やスキルの不足が表れていることを意味している。
↩︎ - 2025年12月12日(金)、ペンギンズはトリスタン・ジャリーとサム・プーリンをエドモントン・オイラーズへ放出し、その見返りとしてゴールテンディングの補強と将来の資産を一度に得るトレードを成立させた。
ジャリーはピッツバーグで10シーズンを過ごし、NHLオールスターにも選出された経験あるナンバー1ゴーリーで、今季も14試合で9勝3敗1分、セーブ率.909、GAA 2.66とまずまずの数字を残していたが、ペンギンズは将来の戦略上この時点で動く判断をした。
交換条件として、ペンギンズはスチュアート・スキナー(ゴーリー)、ブレット・クラーク(ディフェンス)、そして2029年の2巡目ドラフト指名権を受け取った。スキナーはエドモントンでプレーオフ経験が豊富で、近年の実績から将来性のある若手ゴーリーとみなされている。
またクラークは左右どちらのサイドでもプレーできる守備の多才さを持ち、即戦力のディフェンダーとして期待されている。加えて将来のドラフト指名権を得たことは、チーム構築の柔軟性を大きく高める材料となっている。
このトレードが注目される背景には、ペンギンズが将来を見据えつつ現状も戦えるバランスを意識した判断であると分析されている。長期契約中のジャリーを温存せず、サラリーキャップの柔軟性を確保したうえでポジションの競争を促進し、若手の登用機会を生み出すことを狙った動きだと捉えられている。
また契約満了が近いスキナーやクラークを一時的な戦力として活用しつつ、2巡目指名権を将来の戦力に変換できることは、GMカイル・デュバスの長短両面を見据えたチーム運営として評価されている。
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