NHLシアトル・クラーケンが全席大幅値下げを決断した理由とは

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🏒はじめに~シアトル・クラーケンのちょっと素敵な取り組み

 NHLって、アメリカとカナダを中心に人気のプロアイスホッケーリーグなんだけど、日本ではまだまだ知られていないスポーツのひとつ。でも、そんなNHLに新しく加わったチーム「シアトル・クラーケン」が、ちょっと心温まる取り組みをして話題になってるのです😊

 アメリカ・ワシントン州シアトルを本拠地にするこのチームは、2018年にNHLから正式に認められて、2021年に初めてシーズンをスタートさせたばかりの新しいチーム。でも、すでに地元では大人気で、試合はほとんど満席なんだとか!

参照記事:N.Y.Times「 Why one NHL team is slashing ticket prices next season

💡人気でも「値下げ」を選んだ理由

 そんなクラーケンが、2025-26シーズンに向けて「チケットの価格を下げます!」と発表。なんと、アリーナの80%の席の価格を見直して値下げするというから驚き😲

 数年前、シアトル・クラーケンの経営幹部たちはオフィスでセラミック製のホワイトボードを見つめていました。そこには、NHLのフランチャイズを成功させ続けるためのアイデアが書き込まれていたのです。

 「話し合ったことはすべて達成できたと思う、この発表ができて、本当に嬉しかった」とクラーケンのCEO兼社長であるトッド・ライウィッキ1は発表をした数日後に語りました。

 これは一般的な流れに逆らうものです。他のNHLチームが「人気の席をもっと高く売ろう」としている中で、クラーケンはその逆を行く。すべてのシーズンで満席にもかかわらず、価格を下げ、割引グループパッケージを追加しています。

 チケット収入はNHLにとって重要な経済的要因であり、テレビ放映権による収入はNFL、NBA、MLBと比べて少ない。NHLのサラリーキャップ(年俸総額の上限)は今後3シーズンで大幅に上昇すると見込まれており、それに対応する確実な方法は、チームの「最も価値ある資産」であるチケットの価格を上げることのはずです。

 それなのに、なぜクラーケンはチケットの需要が高いにも関わらず、価格を下げるのか?この背景には「もっとたくさんの人にホッケーを楽しんでもらいたい」という、チームのあたたかい思いがあったのです💙

 ライウィッキは、「来年の予算以上のビジョンを持つオーナーシップが必要だ。これは単なるチケットの話じゃない。ファンを増やすための大事な一歩なんだ」と話しています。

🍿ファンに優しい価格とサービスも!

 クラーケンの試合に行くと、シーズンチケットを持っている人には飲み物や食べ物が25%オフで提供されるのも嬉しいポイント✨

 さらに、家族や友達と一緒に楽しめる「4人分のチケット+ソーダ+ポップコーン」のセットが150ドルで買えるようになったり、会場内の一部の席も1試合あたり最大56ドル安くなったりと、お財布に優しい改革2が続々。

 実は、クラーケンのチケットってNHLの中でも高めで、セカンダリーマーケットでも、試合に入場するのは安くはありませんでした。StubHub3のデータによると、今季のクラーケンの平均チケット価格は118ドルで、NHL全体で5番目に高かったのです😅。だから今回の値下げは、ファンにとってはかなり嬉しいニュース。これは大胆な戦略なのです。

📺「ホッケーはテレビでも楽しめる」を実現!

 でもね、クラーケンの「ファンを増やしたい」という思いは、チケットの値下げだけじゃないんです📣

 ライウィッキは、ファンへのアンケート調査を含む2年間のプロセスを経て、経営陣は2つのことが必要だと確信したと語りました。それは、「すべての試合を地元で放送すること」と、「チケットが入手可能であり、しかも手頃であることを人々に知らせること」です。

 ファンからの声をしっかり聞いたクラーケンは、「地元の人たちが、もっと気軽に試合を見られるようにしたい」と考えて、なんと地元テレビ局4で全試合の放送を実現!さらに、Amazon Primeでも追加料金なしで地域限定のストリーミング配信をスタート🎥

 これまでは全試合を見られなかったファンも、自宅で手軽に観戦できるようになったのは大きな変化!「もっと多くの人にホッケーの面白さを知ってもらいたい」という気持ちが伝わってきますよね。

 「これは大きな一歩だった。必要不可欠なことで、我々の観客層の拡大につながると確信している。でも、ファン層を築く最良の方法は、実際に人々をアリーナに呼び込むことなんだよ」とライウィッキは語りました。

🏟️ちょっと特別なアリーナ体験

 ライウィッキは、そのアリーナを誇りに思っています。

 クラーケンの本拠地「クライメット・プレッジ・アリーナ」も、ちょっとユニークな会場なんです✨もともと1962年の万博5のために作られたアリーナの屋根をそのまま使いつつ、中は新しく生まれ変わった近代的な施設。

クライメット・プレッジ・アリーナの紹介映像です!幾つかパターンがあるのですが、これが一番分りやすいかな。

 試合の時には最大17,100人が入れるんだけど、下層の席はほとんど地下にあって、ビデオスクリーンも他の会場より高い位置にあるという、他とは違うレイアウト。「広すぎない、ちょうどいい距離感があるから、一体感がある」って評判😊実際に行ったら、きっとその空気にハマっちゃうかもしれません!

❤️ファンとの約束を大切にするチーム

 NHLが2018年12月にシアトルを32番目のフランチャイズとして承認して以来、クラーケンはシーズンチケットの販売に苦労することはありませんでした。

 2年前のファンアンケートでは、クラーケンファンの声がはっきりと聞こえてきたのです。試合の人気が高まるにつれて、「チケットが手に入らない」「もう行けないかも」って思う人が出てきたと言われています。

 この地域はNFLのシーホークス、MLBのマリナーズ、MLSのサウンダーズ、WNBAのストームを支持し、かつては愛されたNBAチーム「ソニックス」を2000年代にオクラホマシティへ移転させられたという歴史を持ちます。また、初期のスタンレーカップ時代6にさかのぼるホッケーの伝統もあり、マイナーリーグチーム7も成功を収めてきました。

 そんな状況を受けて、長年スポーツ業界で活躍してきたライウィッキは、「再構築(reinvention)」が必要だと考えました。しかもただ値下げするだけじゃなくて、「最初から応援してくれた人たちをちゃんと大事にすること」も忘れていません。

 「初期にチケットを購入した人たちの多くは、それまで一度もNHLの試合を観たことがなかったんだ」と彼は言います。「それが、彼らの生活の大きな一部になった。でも、本当にファン層を拡大したいのであれば、チケットの門戸を開く必要があるんだよ」。

 例えば、パンデミックの制限により存在していなかった家族向けのグループパッケージを新しく導入しつつ、それまで来てくれていたファンに負担が増えないように気を配ったり、フードのアップグレードやアイススケート体験やマスコットとの写真撮影といった特典も、あくまで“楽しさのサービス”として提供されているのです🎁

マスコットのブオイ。元々は北欧、特にノルウェーの伝承に登場する妖精の一種だそうです。

 そして、それらが「隠れた料金」と見なされるような形で行ってはならないと。

🎉「ホッケーは遠い世界」じゃなくなる日

 「家族が『うちは試合を観に行く余裕がない』と言っているのを耳にすると、胸が痛むし、感情的にも動かされる」とライウィッキは語りました。「でもそういうことをやるからには、最初から来てくれていた人たちのことを大事にしなければならない」。

 本来なら第5シーズンを迎えるにあたって「利益優先」に走ることもできましたが、クラーケンはその逆を選んだのです―それは新たなファンをクライメット・プレッジ・アリーナに呼び込み、NHLの生観戦という体験に夢中にさせ、生涯のファンへと変えていくためなのです。

 「現在のチケットを持っている人たちは、“エリートしか入れない場所”のような雰囲気を望んでいない」とライウィッキは言います。2年前、幹部チームと一緒にホワイトボードにアイデアを書き出していた時のファンアンケート結果と議論を振り返りながら。

 「我々だけがファン優先で考えていると言うつもりはないよ。でも、すべての座席を最高値で売り出すようになれば、“エリートしか入れない場所”になってしまう可能性はあるんだ」。

讃岐猫
讃岐猫

🧊まとめ~これからのホッケー、ちょっと気にしてみない?

 もちろん、ホッケーのルールや試合の流れは最初は少し難しく感じるかもしれない。でも、実際に観てみたら、そのスピード感と迫力、そして会場の一体感にきっと驚くはず!

 そして、もしシアトル・クラーケンのように「ファンを大切にするチーム」がもっと増えていけば、NHLの魅力がどんどん広がって、日本でもホッケーがもっと身近になる日が来るかも✨

 まずは一歩、気になるチームをチェックしてみることから始めてみては?
シアトル・クラーケン、けっこうイケてるかもしれませんよ🦑🏒

讃岐猫
讃岐猫

【註釈】

  1. NHLシアトル・クラーケンの共同オーナー兼CEOであり、長年にわたりNFL、NBA、MLSなど複数のプロスポーツチームで経営幹部を務めてきた人物。

     かつてはシアトル・シーホークス、サウンダーズFC、タンパベイ・ライトニング、NFL本部などでリーダーシップを発揮し、チーム運営やファンエンゲージメントを重視した改革に尽力。現在はクラーケンを通じて、ホッケー文化の浸透と地域密着のチームづくりを推進している。
    ↩︎
  2. 座席に関して言えば。アメックス・ホールやアリーナの下層・上層席の一部は、1試合あたりそれぞれ56ドル、35ドル、4ドルの値下げとなる。
    ↩︎
  3. スポーツ、音楽、演劇などのチケットをオンラインで購入・販売できるマーケットプレイス。チケットの転売が可能で、人気イベントのチケットを手に入れる手段として利用されている。購入者は「100%チケット保証」により安心して取引ができ、イベントがキャンセルされても返金対応が行われる。
    ↩︎
  4. 地元放送はNBC系列のKING-TVや独立局のKONGで放送され、またクラーケン・ホッケー・ネットワークが今季立ち上げられた。ESPNやターナー・スポーツで全米放送された試合を除き、このネットワークにより、シアトル市場のファンは初めてすべてのクラーケンの試合を視聴可能となった。
    ↩︎
  5. シアトル万博(Century 21 Exposition)は、未来の技術と宇宙開発をテーマにした国際博覧会で、シアトル・センターで開催された。象徴的な建物スペースニードルが建設され、コンピュータやカラーテレビなどの最先端技術が紹介された。この万博はシアトルの発展に大きな影響を与え、観光地としても注目を集めた。
    ↩︎
  6. シアトルのプロアイスホッケーの歴史は、1915年に結成されたシアトル・メトロポリタンズに始まる。このチームは、1917年にアメリカを本拠地とする初のスタンレー・カップ優勝チームとなった。

     しかし、1924年にアリーナが売却され、その後チームは解散。また、シアトル・トーテムズ(元々はシアトル・アイアンメン)は、1944年から1975年までウェスタンホッケーリーグで活動していましたが、リーグ解散とともにチームも終息した。
    ↩︎
  7. クラーケンのAHL傘下チームであるコーチェラ・バレー・ファイヤーバーズは、カリフォルニア州サウザンドパームズをホームとする。クラーケンは、NHL理事会に承認された後、AHLのマイナーリーグチームを買収する計画を進め、2019年6月にはパームスプリングス地域を選定。

     新しい拡張チームは2021-22シーズンの開始予定だったが、アリーナ建設の遅延によりデビューは2022-23シーズンに延期。2021年11月には、ファイヤーバーズのチーム名、ロゴ、カラーが発表された。ファイヤーバーズは初の2シーズンでカルダーカップ決勝に進出。

     シーズン前に準備が整わなかったため、2021-22シーズンはシャーロット・チェッカーズと提携し、最終的にはディビジョン優勝後、プレーオフで敗れた。 ↩︎

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