データが暴く王者の正体!スタンレーカップを勝ち取る絶対条件

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はじめに

 NBAに負けじと、NHLもプレーオフに向けて熱を帯びる季節がやってきましたね!❄️

 今回のテーマは、王者への絶対条件と言われる「5対5(イーブンストレングス)」の支配力です。実は、プレーオフ得点の約3分の2はこの局面で生まれているのをご存知ですか?

 本記事では、過去17年のデータから見えた「優勝の合格ライン」を徹底分析!📊2018年のキャピタルズのような“例外”はなぜ起きたのか?苦戦中のブルーインズに逆転の芽はあるのか?統計の壁を越えてカップを掲げるための「勝利の鍵」に迫ります。

 ホッケー観戦がもっと深く、面白くなること間違いなしです!🏒✨

参照記事:The Athletic「How bad can an NHL team be at five-on-five and still compete for the Stanley Cup?

5対5のプレーが運命を分ける?スタンレーカップへの道🏆

 MLB開幕したけど、NHLも頑張ってると思ってるみなさん、こんにちは!今日はNHLで最高の栄誉である「スタンレーカップ」を勝ち取るために、切っても切れない「ある条件」についてお話ししようと思います。

 ズバリ、その問いとは「NHLのチームは、5対5のプレーがどれほど悪くても、スタンレーカップを争うことができるのだろうか?」という点です。結論から言ってしまうと、もし本気でカップを掲げたいなら、5対5のプレーをしっかり自分たちのペースで支配する必要があるんです。

 「えっ、パワープレー(相手が反則で人数が少ない時)の方が大事じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんね。もちろんパワープレーは1分あたりの得点効率で見ればすごく高いです。でも、実はプレーオフのホッケーの80%以上は、お互いが5人ずつで戦う「5対5」の時間なんですよ。

 さらに驚くべきことに、プレーオフで生まれる得点のおよそ3分の2は、この5対5の場面で決まっています。イーブンストレングス(人数が同数)で戦う時間が圧倒的に長いため、得点もそれに比例するというわけですね🏒。

 ここで、プレーオフ進出チームの調子を測る「体温計」のような面白い指標を紹介します。それは「得失点差」です。過去17年間を振り返ってみると、得失点差がマイナスの状態でポストシーズン(プレーオフ)に進んだ25チームのうち、なんと20チームが1回戦で姿を消してしまっています。

 確かにパワープレーは重要ですし、特にプレーオフの序盤戦ではそのチャンスが増えることもよくあります。また、プレーオフはとにかく戦いが激しいので、どこまでフィジカルに攻めていいのかという「線引き」をちゃんと理解して、反則のラインを越えないようにすることも欠かせません。

 でも、やっぱりスタンレーカップの歴代王者たちを見てみると、みんな例外なく「5対5でエリート級」の強さを誇るチームばかりなんです。2007-08シーズン以降の現代ホッケーにおいて、たった一つの例外を除いて、すべての優勝チームはレギュラーシーズンの時点で5対5の時間帯をしっかり制していました。

 その「唯一の例外」とは、2018年のワシントン・キャピタルズです。彼らはシュート数や「期待得点(xG)」という指標で、50%(ブレークイーブン)を下回っていました。つまり、数字の上では攻め込まれている場面もあったということですね。それでも最終的には、圧倒的な得点力と守護神のセーブによって、その時間帯を強引に勝ち切って優勝を掴み取ったのです。

2018年のワシントン・キャピタルズ

 このシーズンのキャピタルズが「5対5で劣勢でも優勝した唯一の例外」とされる理由について、北米メディアや分析系サイトでは、“運”ではなく「勝ち方の質が極端に特化していたシーズン」として評価されている。

 まず大きいのは、アレクサンダー・オベチキンを中心とした得点の“質”の高さだ。通常、xG(期待得点)はチャンスの量と質を平均化する指標だが、この年のキャピタルズは、オベチキンのワンタイマーや高精度のセットプレーによって、モデルが想定する以上に得点効率を引き上げていたのである。

 いわば「期待値を超えるフィニッシュ力」で、5対5の劣勢を帳消しにしていた。

 さらに決定的だったのが、ブレイデン・ホルトビーの存在である。プレーオフ途中から正GKに復帰したホルトビーは、特に決勝のベガス・ゴールデンナイツ戦で歴史的セーブ(いわゆる“ザ・セーブ”)を含む高水準のパフォーマンスを維持し、ハイデンジャーエリアからの失点を大きく抑えた。

 現地では「この年のキャピタルズは、平均的な守備をエリート級のゴールテンディングで上書きした」と評されている。

 戦術面でも特徴があり、当時の指揮官バリー・トロッツは、ポゼッション(保持率)で押し切るのではなく、リスク管理を優先したトランジション重視のホッケーへとシフトさせた。

 これにより、被シュートは増えても“危険度の低い外側”に誘導する守備が機能し、xGでは不利でも実際の失点は抑えられる構造が生まれていたと指摘されている。

 加えて、エフゲニー・クズネツォフやニクラス・バックストロームらによるカウンターの精度、そしてプレーオフ全体を通じてリーグ上位だったパワープレー成功率も、試合の流れを引き寄せる重要な要素だった。

 5対5で押される時間帯があっても、特別チームと個の決定力でスコアを動かせる“非対称な強さ”を持っていたのである。

 総じて現地の評価は、「シュートの質・決定力・ゴールテンディングを極限まで高めれば、指標上の不利を覆せる」ことを証明した特異な優勝例というものだ。つまり2018年のキャピタルズは、強みを極端に尖らせることで“確率そのものを歪めたチーム”として位置づけられている。

過去のデータが語る!「平凡なチーム」でも奇跡は起きるのか?📊

 さて、ここで気になるのが今のチームたちの状況ですよね。例えば、2026年のボストン・ブルーインズ、アナハイム・ダックス、そしてモントリオール・カナディアンズのファンのみなさんは、自分たちのチームの現状に不安を感じるべきなのでしょうか?

自分たちのチームの現状に不安を感じるべきなのでしょうか?

 2026年のボストン・ブルーインズ、アナハイム・ダックス、そしてモントリオール・カナディアンズが不安視される最大の理由は、「5対5で主導権を握る構造が未完成である点」にあると、北米の分析系メディアでは共通して指摘されている。

 ボストンは依然としてデイヴィッド・パストルナークの決定力と、ジェレミー・スウェイマンの安定したゴールテンディングによって試合を拾えるチームだが、5対5では被圧力の時間が長く、ポゼッションの継続性に課題を抱えると見られている。

 プレーオフではシリーズが進むにつれて相手のチェック精度が上がるため、この“耐える構造”は再現性に乏しく、長期戦になるほど崩れやすいという評価が一般的だ。

 アナハイムについては、若いコアを軸にしたスピード志向のホッケーが評価される一方で、守備構造の粗さが課題とされている。特にトランジション局面での対応やスロット周辺の守備密度に問題があり、「攻撃の勢いが止まった瞬間に一気に押し込まれる」傾向がある。

 現地では、こうしたチームはレギュラーシーズンでは勢いで勝てても、プレーオフでは相手に弱点を徹底的に突かれるため、5対5の安定性がなければ勝ち上がるのは難しいと見られている。

 モントリオールは、ニック・スズキやコール・コーフィールドを中心とした攻撃力が評価されているが、依然として“試合管理能力”の不足が課題とされる。得点はできるものの、守備ゾーンでのポジショニングやリバウンド処理にばらつきがあり、結果としてxGの安定性を欠く試合が多い。

 プレーオフではこの不安定さがそのままシリーズの流れに直結する可能性が高い。

 総じて3チームに共通するのは、「勝つ力は持っているが、5対5で試合を支配する基盤が弱い」という点である。

 現地の評価では、このタイプのチームが優勝に到達するためには、2018年のキャピタルズのように、エリート級のゴールテンディングと高効率の得点力が同時に機能し、なおかつ短期決戦の流れを引き寄せる必要があるとされている。

 つまり不安の本質は、“勝ち方がプレーオフに適合しているかどうか”にある。

 「5対5のプレーが平凡なチームでも、スタンレーカップを勝ち取ることは本当に可能なのか?」という疑問が湧いてきますよね。もし可能だとしたら、一体どんな道筋をたどれば頂点に立てるのでしょうか。そのヒントを探るために、近年のNHLの歴史を詳しく振り返ってみましょう。

 2008年以降、2020年の特殊なプレーインラウンドも含めると、合計で296ものチームがプレーオフに進出してきました。その中で、5対5の「期待得点(xG)」が50%未満、つまり数字の上では不利な状況でポストシーズンに挑んだチームは70チームもありました。

5対5の期待得点(xG)が50%未満

 この状態が「不利」とされる理由は、シュート数で押されているだけでなく、試合の主導権そのものを相手に握られている可能性が高いことを意味する。

 北米の分析系メディアや統計モデル(Evolving-HockeyやNatural Stat Trickなど)では、xGは“どれだけ危険な得点機会を作り、どれだけ許したか”を総合的に示す指標とされており、50%を下回るチームは、長いスパンで見ると「自分たちより相手のほうが質の高いチャンスを多く得ている」状態にあると解釈される。

 この状態がプレーオフで致命的になりやすいのは、シリーズが進むにつれて偶然の要素が削ぎ落とされ、「再現性のある強さ」だけが残るからだ。

 レギュラーシーズンではゴールテンダーの好調やシュートの上振れによって勝てる試合もあるが、7戦4勝のシリーズでは同じ展開が何度も繰り返されるため、継続的にチャンスの質で劣るチームは徐々に押し込まれ、最終的には失点の増加という形で収束していく。

 実際、xGが低いチームは被シュートの“量”だけでなく、“危険度の高いエリア(スロットやゴール前)からの機会”を許す割合も高い傾向があり、これはゴールテンダーの負担を大きく増やす要因とされている。

 さらに重要なのは、xGの劣勢は攻撃面にも直結するという点だ。5対5で相手に押し込まれる時間が長いチームは、パック奪取後も自陣からのクリアやロングパスに頼る場面が増え、結果として持続的な攻撃を構築できない。

 これによりシュートの質も低下し、「少ないチャンスを高確率で決め続けなければならない」という非現実的な条件を背負うことになる。現地ではこれを“シューティングパーセンテージ依存のホッケー”と呼び、長期的には維持できないスタイルと分析されている。

 したがって、2008年以降にxG50%未満でプレーオフに進んだチームの多くが早期敗退しているのは、「チャンスの質で劣る構造は、シリーズ戦で必ず露呈する」という統計的な必然に近い。

 逆に言えば、2018年のワシントン・キャピタルズのように勝ち切った例は、ゴールテンダーの突出したパフォーマンスやエリート級の決定力によって、この確率的な不利を一時的に上書きした極めて例外的なケースと位置づけられている。

 しかし、その70チームの中で、本当にプレーオフで快進撃を見せてカンファレンス決勝(ベスト4)まで勝ち進んだのは、わずか9チームしかいないんです。その顔ぶれを見てみると、以下のようになります。

2018年に見事優勝を飾ったキャピタルズ
2024年と2022年のニューヨーク・レンジャーズ
2020年のニューヨーク・アイランダーズ
2017年のオタワ・セネターズ
2014年と2010年のモントリオール・カナディアンズ
2012年のアリゾナ・コヨーテズ
2008年のフィラデルフィア・フライヤーズ

 もちろん、82試合という長いレギュラーシーズンの結果はとても重要です。でも、たった一つの総合的な数字だけでは、シーズン中に起きたチームの調子の波や、浮き沈みをすべて反映できるわけではありません。

 チームの置かれた状況、例えば急激な調子の変化やトレードによる補強、主力選手の負傷といった背景も、数字にはなかなか表れにくいものです。時には、レギュラーシーズンではあえて力を温存しておいて、ここぞという勝負どころで一気にギアを上げてくるようなたのもしいチームも存在します⚙️。

 だからこそ、レギュラーシーズンで期待得点が50%を下回っていたチームが、プレーオフが始まった瞬間にどれだけパフォーマンスを引き上げられたかを確認することが非常に重要になってきます。

 実際に調べてみると、レギュラーシーズンでxGが50%未満だった70チームのうち、28チームはプレーオフに入ってからその数値を改善させていました。

 ところが、約3分の1のチームが改善を見せたとはいえ、残りの49チームは依然として50%未満という苦しい数字にとどまってしまいました。そして、その大半のチームは、残念ながら早期敗退という結果に終わっています。

 具体的には、2020年のプレーインで3チーム、1回戦で31チーム、そして2回戦で8チームが姿を消してしまいました。

奇跡の快進撃!深いプレーオフ進出を支えた「勝利の鍵」とは?🔑

 レギュラーシーズンで苦戦しながらも、カンファレンス決勝までたどり着けたのは、過去わずか6チームだけでした。2008年のフライヤーズ、2010年のカナディアンズ、2012年のコヨーテズ、2014年のカナディアンズ、2017年のセネターズ、そして2022年と2024年のレンジャーズがその顔ぶれです。

 これらのチームは、たとえレギュラーシーズンの結果がどうであれ、自分たちの力でプレーオフの深いところまで勝ち進めることを証明してくれました。では、その成功を支えた本当の鍵は一体何だったのでしょうか?

 実を言うと、チームごとに置かれた状況やプレーオフでの対戦ルートはバラバラなので、誰にでも当てはまる完璧な「勝利の方程式」なんてものは存在しません。対戦相手との相性や、組み合わせの運といった要素に左右されることも珍しくないんです。

 ただ、2017年のセネターズのように、自分たちの力で道を切り開いていったチームも確かに存在します。彼らの快進撃は、スーパースターであるエリック・カールソンの卓越したプレーに支えられていました。

 さらに、下馬評を覆す「アンダードッグ」としての強いメンタリティや、どこからでも点が取れる層の厚い攻撃陣、そしてジャン=ガブリエル・パジョーのような予想外のプレーオフヒーローの誕生がチームを強力に後押ししたのです。

2017年のセネターズ

 この年のセネターズが「自力で道を切り開いたチーム」と評される理由は、当時のリーグの主流とは異なる“勝ち方の設計”を徹底していた点にあると、北米の戦術分析では広く指摘されている。

 この年のセネターズは、5対5の支配力やポゼッションで優位に立つチームではなかったが、代わりに自陣での守備構造を極端に最適化していた。指揮官ガイ・ブーシェの下で採用されたのは、いわゆる「1-3-1」に近いミドルゾーントラップで、相手の侵入ルートを限定し、パックを外側へ追い出すことを徹底する戦術だった。

 この結果、被シュート自体は許しても“危険度の低い位置”からのものに抑え、ゴール前の質の高いチャンスを極端に減らすことに成功していたのである。

 その守備戦術を成立させていた中心が、エリック・カールソンである。カールソンは単なる攻撃型ディフェンスではなく、パック奪取から一気に攻撃へ転換する“起点”として機能し、守備で耐えた時間をそのままカウンターに変換していた。

 特にこのプレーオフでは、足の負傷を抱えながらも高いパフォーマンスを維持し、「守備的チームに攻撃の出口を与える唯一無二の存在」と現地で評されている。

 さらに重要だったのが、得点の“分散”である。スターに依存するのではなく、複数ラインから断続的に得点が生まれる構造を持っており、その象徴がジャン=ガブリエル・パジョーだった。彼はカンファレンス決勝で4得点を挙げるなど、本来は主役ではない選手が試合の流れを決定づける場面を作り出し、「予測不能なスコアリング」が相手の守備計画を崩したと評価されている。

 加えて、ゴールテンダーのクレイグ・アンダーソンも安定したパフォーマンスを維持し、チーム全体の守備戦術と噛み合うことで失点を最小限に抑えた。この“守ってカウンターで刺す”スタイルは、ポゼッション全盛のリーグにおいて異質であり、対戦相手にとっては非常に対策しづらいものだったとされる。

 結果としてセネターズは、当時の優勝候補だったニューヨーク・レンジャーズやボストン・ブルーインズを破り、カンファレンス決勝ではピッツバーグ・ペンギンズを第7戦延長まで追い詰めた。

 ここで示されたのは、「5対5で支配できなくても、守備構造・トランジション・得点分散を極限まで最適化すれば、優勝候補を倒す現実的なルートは存在する」という事実であり、このチームは“例外”ではなく、“もう一つの勝ち方の完成形”として今でも語られている。

 また、ゴールテンダー(守護神)の圧倒的な存在感が、チームの守備の弱点をまるごとカバーしてしまうケースもあります🧤。2012年のコヨーテズでは、マイク・スミスがまさに「確変」とも言える神がかった活躍を見せてチームを押し上げました。

 ニューヨーク・レンジャーズでも、イゴール・シェスターキンが2022年と2024年の両方でエリート級のパフォーマンスを披露してくれました。彼は36試合のプレーオフで、合計39点分もの「期待失点以上のセーブ」を叩き出したのです。

36試合のプレーオフで、合計39点分もの「期待失点以上のセーブ」

 「期待失点以上のセーブ(Goals Saved Above Expected / GSAx)」とは、ゴールテンダーが“本来なら何点取られていてもおかしくない状況”から、どれだけ失点を防いだかを数値化した指標であり、近年はEvolving-HockeyやMoneyPuckなどの分析サイトで広く用いられている。

 シュートの位置、角度、パスの有無といった要素から「そのシュートがどれくらいの確率でゴールになるか」を積み上げたものが“期待失点”であり、実際の失点がそれを下回れば、その差分が「期待以上に止めた=GSAxプラス」として評価される。

 この観点から見ると、イゴール・シェスターキンがプレーオフ36試合で+39という数値を記録したことの異常性が見えてくる。これは単純化すれば、「平均的なゴールテンダーであれば39点多く失点していた可能性がある状況を、彼一人で帳消しにした」ことを意味する。

 プレーオフの1シリーズが通常6~7試合で決着することを考えれば、シリーズ単位で見ても複数試合分の勝敗をひっくり返し得るインパクトであり、実際に北米メディアでは「シリーズの流れそのものを変えるレベルの上振れ」と評価されている。

 さらに重要なのは、その“止め方の質”である。シェスターキンは、スロットやワンタイマーといった高危険度の場面でのセーブ率が極めて高く、いわゆる“本来は入る確率が高いシュート”を連続して防いでいた。

 これは守備が崩れた状況でも試合を壊さない能力を意味し、5対5で劣勢になりやすいニューヨーク・レンジャーズにとっては、戦術的な弱点を覆い隠す“最後の防壁”として機能していたと分析されている。

 ただし現地の評価は一貫していて、「エリート級のゴールテンディングは弱点を補えるが、構造的な問題を完全には消せない」というものだ。

 レンジャーズはシェスターキンの活躍と高水準のパワープレーによって期待以上の勝ち上がりを見せたが、最終的には5対5での劣勢が積み重なり、タンパベイ・ライトニングやフロリダ・パンサーズといった強豪相手に押し切られた。

 つまりGSAxが大きくプラスであるということは「守護神が試合を救い続けている状態」を示す一方で、それ自体がチームの構造的な負担の大きさを裏返しに示す指標でもあると解釈されている。

 彼の鉄壁の守りに加え、高いレベルのパワープレーがチームを支え、5対5での弱点が最終的に強豪チーム(タンパベイ・ライトニングやフロリダ・パンサーズ)に露呈するまでは、期待以上の素晴らしい結果を残し続けました。

 一方で、2020年のアイランダーズは、いくつかの具体的な改善を重ねることでプレーオフを勝ち進みました。セミヨン・ヴァラモフとトーマス・グライスのコンビはチーム合計でセーブ率.920という高い数字を記録しましたが、一番の決め手はより堅実になった守備でした。

 5対5の場面でも、数的不利のショートハンド時でも、守備力が向上したことが成功に繋がったのです。

 当時の名将バリー・トロッツ監督のもとでのアイランダーズは、まさに「プレーオフ向きのホッケー」を体現しているようなチームでした。同じくトロッツ監督が率いた2018年のキャピタルズも、レギュラーシーズンの数字を覆してプレーオフで一気にパフォーマンスを引き上げた例外的存在です。

 彼らはプレーオフに入ると、期待得点(xG)51.6%、得点率58.8%という驚異的な数字を叩き出しました。興味深いことに、この年のワシントンはトレード期限でも派手な補強はせず、ディフェンスのミハル・ケンプニーを一人加えた程度だったんです。

 それでも、チーム全体が試合をこなすごとに成長し、プレーオフを通じてどんどん強さを増していったことこそが、最大の成功要因でした。

チャンピオンへの絶対条件?数字が教える優勝の「合格ライン」🏆

 さて、ワシントン・キャピタルズの例外的エピソードをお話ししましたが、実はそれ以外の歴代王者たちを見てみると、かなりはっきりとした共通点が見えてきます。

 ワシントンを除けば、過去17回の優勝チームのうち16チームは、レギュラーシーズンの時点ですでに「期待得点(xG)」がおおむね50%以上をしっかりと維持していたんです。

 もちろん、すべてのチームが圧倒的だったわけではありません。2009年のピッツバーグ・ペンギンズ、2011年のボストン・ブルーインズ、そして2015年のシカゴ・ブラックホークスのように、50%をわずかに上回るくらいで踏みとどまっていたチームもありました。

 その一方で、2008年のデトロイト・レッドウィングスや2025年のフロリダ・パンサーズのように、レギュラーシーズン中から手のつけられないような強さを見せつけていたチームもありましたね。

 そして、過去17回の優勝チームのうち15チームは、レギュラーシーズンで培ったその「5対5での強さ」をそのままプレーオフにも持ち込み、見事にスタンレーカップ制覇へと繋げているのです。

 「じゃあ、レギュラーシーズンの数字が良ければ安泰なの?」と思うかもしれませんが、ホッケーはそう単純ではありません📉。レギュラーシーズンでの“優秀さ”が、必ずしもプレーオフでの成功を100%保証してくれるわけではないんです。

 もし数字だけで決まるなら、カロライナ・ハリケーンズは今ごろいくつものタイトルを手にしているはずですからね。

讃岐猫
讃岐猫
カロライナ・ハリケーンズ

 ハリケーンズは、近年のNHLにおいて「レギュラーシーズンの指標はトップクラスなのに、優勝に届かないチーム」の代表例として、北米の分析系メディアで頻繁に言及されてきた存在である。

 ハリケーンズの強さの本質は、ショットボリュームとポゼッション支配にある。いわゆる“Corsi”や期待得点(xG)といった指標ではリーグ上位を長年維持しており、5対5では相手を自陣に押し込み続ける時間が非常に長い。

 実際、分析サイトNatural Stat TrickやEvolving-Hockeyでも、ハリケーンズは複数シーズンにわたり「最も試合を支配しているチームの一つ」と評価されてきた。つまり、“数字だけ見れば優勝候補の条件を満たしているチーム”である。

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◎Corsi(コルシ)とは、アイスホッケーにおける「どちらのチームが試合を支配しているか」を測るための指標で、簡単に言えばシュートの試行回数の差を表す。

 具体的には、ゴールに入ったシュート(得点)だけでなく、枠内シュート・枠外シュート・ブロックされたシュートまで含めた“すべてのシュート試行”を合計する。つまり「どれだけ攻めて、どれだけ打たせたか」を数値化したもの。

 例えば、あるチームが試合中に60回シュートを打ち、相手に40回打たれた場合、Corsiは+20となり、そのチームが試合を押していたと判断される。この割合で示したものが「Corsi%」で、50%を超えていれば主導権を握っていたとされる。

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 それにもかかわらず結果が伴わない理由として、現地で繰り返し指摘されているのが「チャンスの質と決定力のギャップ」だ。ハリケーンズはシュート数では圧倒するものの、外側からの低危険度シュートの割合が高く、ゴール前の“仕留め切る攻撃”に欠ける傾向がある。

 そのためレギュラーシーズンでは相手を圧倒できても、プレーオフのように守備が引き締まり、ゴール前のスペースが消される環境では、得点が急激に伸び悩む。

 さらにプレーオフでは、ゴールテンダーのパフォーマンス差が結果を大きく左右する。ハリケーンズは安定した守備構造を持つ一方で、シリーズを単独で決定づける“圧倒的な上振れ”を見せる守護神に恵まれなかった時期もあり、相手ゴーリーに上回られることで流れを失うケースが目立ってきた。

 北米メディアでは「ハリケーンズは“正しいホッケー”をしているが、プレーオフでは“勝つための最後の1%”が欠けている」と表現されることもある。

 また、コロラド・アバランチの分析担当であるドーソン・スプリングスが示しているように、期待得点は将来の得点を予測する上でとても優れた指標ですが、たとえその数字(xG)が少し低下したからといって、そのチームが絶対に失敗する運命にあるとも言い切れません。

 実際に、2017年のピッツバーグ・ペンギンズと2019年のセントルイス・ブルースは、プレーオフ中のxGが50%を下回りながらも優勝をさらった、数少ない例外的なチームです。どちらのケースも、詳しく分析してみると、チャンスを創り出す質そのものは表面的な数字ほど高くはなかったという背景がありました。

 それでも彼らが頂点に立てたのは、限られたチャンスを確実にモノにする決定力があり、期待値以上の得点を挙げることができたからです。さらに、そこを支える堅実な守備でしぶとく勝ち上がっていった結果、栄冠を勝ち取ることができたのです。

2017年のピッツバーグ・ペンギンズと2019年のセントルイス・ブルース

 この両チームがxGで劣勢にもかかわらず優勝できた理由は、「チャンスの量ではなく“決定局面の質”を極端に高めた点」にあると、北米の分析では整理されている。

 まずペンギンズは、5対5での継続的な支配力こそやや落ちていたが、シドニー・クロスビーやエフゲニー・マルキンを軸にした“ワンチャンスを仕留める能力”が突出していた。

 特にトランジション局面では、相手のミスやリバウンドを即座に得点へ変換する精度が高く、いわゆる「東西の横断パス→ワンタイマー」といったxGモデルでも、高評価となるプレーを少ない回数で確実に決め切っていたと分析されている。

 加えて、マット・マーレーが高危険度シュートへの対応で安定し、被xGを実失点で下回るパフォーマンスを維持したことで、“押されながらもスコアでは上回る”構造が成立していた。

 一方のブルースは、より明確に「守備とフィジカルで試合の質を変えたチーム」として語られる。ライアン・オライリーやアレックス・ピエトランジェロを中心に、ニュートラルゾーンでの圧力とボード際の競り合いで相手の攻撃を寸断し、試合全体をロースコア化することに成功していた。

 さらに決定的だったのがジョーダン・ビニントンで、プレーオフではハイデンジャーシュートに対して高いセーブ率を記録し、特にアウェーでの試合でシリーズの流れを引き寄せるパフォーマンスを見せたと評価されている。

 両チームに共通しているのは、「xGでは劣っていても、試合の“決定的な瞬間”を制していた」という点である。ペンギンズはスピードとスキルで高効率な得点を生み出し、ブルースは守備強度とゴールテンディングで相手の得点期待を実際のスコアに反映させなかった。

 結果として、どちらも“期待値以上に得点し、期待値以下に失点する”という状態を維持し続け、確率的に不利なはずの展開をシリーズ単位で覆していった。

 現地の評価では、これらの優勝は「xGを無視して勝った」のではなく、「xGでは捉えきれない領域――フィニッシュの精度、ゴール前の競り合い、そしてゴールテンダーの上振れ――を極限まで引き上げた結果」とされている。

 つまり彼らは、数値上の劣勢を“例外的な実行力”によって乗り越えたチームであり、再現性は低いが、確かに存在する勝ち筋を体現したケースとして位置づけられている。

 さて、ここまでの歴史を踏まえて、今年の戦いに目を向けてみましょう。有力候補以外で、今のプレーオフ進出チームの中で、ポストシーズンでの成功に欠かせない「試合支配力」をしっかり持っているのは一体どこなのでしょうか?

 そして、かつてのペンギンズやブルースのように、下馬評を覆すような例外的な快進撃を見せてくれるのはどのチームなのか、非常に楽しみですね。

運命の数週間!プレーオフ進出を懸けた各チームの現在地🏁

 さて、ここからは今シーズンの具体的なチーム状況を見ていきましょう。ボストン・ブルーインズは貴重なワイルドカード枠を確保している可能性がありますが、実はいくつか不安材料も抱えています。

 特に気になるのが、リーグ29位に相当する期待得点(xG)46%という数字です。主な問題は守備にあり、オリンピックブレイク以降はその状況がさらに悪化してしまっています。

 それでもボストンが「例外的な存在」になれる可能性はあるのでしょうか?もし、ヴェジーナ賞級のパフォーマンスを見せているジェレミー・スウェイマン(ヴェジーナ賞級のパフォーマンスを見せている)や、デイビッド・パストルナーク、モーガン・ギーキーたちが期待通りの結果を出せれば、そのチャンスは十分にあります。

 過去の“例外”チームたちが証明してきたように、個人の力だけでプレーオフの構図をガラリと変えてしまうこともあり得るからです。

 ただ、現実的に考えると、5対5の状況が今のボストンのような数値にあるチームの多くは、残念ながら1回戦を突破できていないのが厳しい現実でもあります。

 一方で、バッファロー・セイバーズは少し違った状況にあります。シーズン全体で見れば5対5のプレーが完璧とは言えませんが、リーグ再開後は着実に内容を向上させています。これこそが、彼らがアトランティック・ディビジョンで首位を維持できている大きな理由です。

 この勢いのままいけば、プレーオフが始まるまでには「ブレークイーブン(50%)」を上回る可能性も高いでしょう。

リーグ再開後は着実に内容を向上させています

 セイバーズが「再開後に内容を向上させている」と評価されているポイントは、勝敗ではなく、5対5における“プレーの質そのもの”が段階的に改善している点にある。

 シーズン前半のセイバーズは、攻撃面ではテージ・トンプソンやアレックス・タックを軸に爆発力を見せる一方で、トランジション守備の甘さとゾーン内のカバー遅れにより、相手に“質の高いチャンス”を許しやすい構造が課題とされていた。

 つまり、得点はできるが、その分だけ失点リスクも高い“打ち合い型”のチームだったのである。

 しかしリーグ再開後は、この構造に明確な変化が見られている。最も大きいのは、フォアチェックの精度向上によって相手のブレイクアウトを遅らせ、自分たちが攻撃を始める位置を高く保てるようになった点だ。

 これにより、シュートの本数だけでなく「ゴール前に近いエリアからのチャンス」が増加し、期待得点(xG)の質的改善につながっていると分析されている。同時に、守備面ではディフェンスラインの間隔が整理され、スロットへの侵入を許す回数が減少し、被xGの抑制にも成功している。

 さらに注目されているのが、若手の成熟による“プレー選択の変化”である。特にラスムス・ダーリンは、単なる攻撃参加型ディフェンスから、リスク管理を伴ったパック運搬へと進化し、無理な持ち上がりではなく状況に応じた展開を選べるようになったと評価されている。

 これによりチーム全体のターンオーバーが減少し、攻守のバランスが安定してきた。

 加えて、ゴールテンダー陣も極端な上振れに頼るのではなく、守備構造と連動した“止められる形で守る”展開が増えており、結果として試合全体の再現性が高まっている。北米メディアでは、この変化を「プレーオフ仕様への移行」と位置づける見方も出ている。

 総じてセイバーズの改善は、「攻撃力に守備の秩序が追いついたこと」によるものだと評価されている。シーズン前半は“得点で上回るしかないチーム”だったのに対し、現在は“5対5で拮抗、もしくは優位を取れるチーム”へと変化しつつある。

 この質的転換こそが、ブレークイーブン超え、ひいてはプレーオフでの現実的な勝ち上がりを期待させる最大の要因とされている。

 現在、プレーオフ圏外で追いかける展開となっているニューヨーク・アイランダーズは、直近で5対5のパフォーマンスがやや低下気味です。特にトランジション(攻守の切り替え)での守備の不安定さが響き、72試合を消化した時点でのxGは47%まで落ち込んでしまいました。

 それでも、期待のルーキー、マシュー・シェーファーのスター性や、守護神イリヤ・ソローキンの存在があれば“例外”になる可能性は残されていますが、限られたプレーオフ枠を巡る競争は非常に激しくなっています。

 モントリオール・カナディアンズについては、今シーズンのxGはほぼ50%付近を推移しています。守備に少し粗さは見られるものの、チャンスを作る力と得点力でそれをうまく補っている形です。さらに、ブレイク後のパワープレーの強化もチームの攻撃力を後押ししています。

ブレイク後のパワープレーの強化

 カナディアンズのパワープレーが「ブレイク後に強化された」と評価されている背景には、“攻撃の設計そのものの変化”があると、北米の戦術分析では指摘されている。

 従来のモントリオールのパワープレーは、コール・コーフィールドのシュート力に依存する傾向が強く、セットが読まれると攻撃が停滞しやすい構造だった。しかし再開後は、ニック・スズキを中心とした“パック循環の質”が明らかに向上し、ワンパターンの展開から脱却している。

 特にハーフウォール間の横断パスや、ゴールライン付近を経由したプレーが増えたことで、相手のボックス守備を横に揺さぶり、シュート前のスペースを意図的に作り出せるようになったと分析されている。

 さらに重要なのが、“シュート前の一手”の精度向上である。単純なミドルシュートではなく、スロットへのスリップパスや、ディフェンスの視界を遮るスクリーンを伴ったフィニッシュが増加し、いわゆるハイデンジャーエリアからのシュート比率が上昇している。

 これにより、期待得点ベースでも効率の高いパワープレーへと変化していると評価されている。

 加えて、ブルーラインの役割も変わっている。ディフェンス陣は単にパックを回すだけでなく、シュートフェイクやポジションチェンジを用いてペナルティキルの陣形を崩し、内側へのレーンを開く役割を担うようになった。

 これにより、コーフィールドのワンタイマーだけでなく、複数の選択肢からフィニッシュに至る“多層的な攻撃”が可能になっている。

 総じてこの改善は、「個の決定力に頼るパワープレー」から「構造で崩して決めるパワープレー」への転換と捉えられている。5対5ではまだ不安定さを残すモントリオールにとって、この高効率の特別チームは試合の流れを引き寄せる重要な武器となっており、現地では「5対5の弱点を補完する最も現実的な勝ち筋」として評価されている。

 一方で、デトロイト・レッドウィングスは5対5のプレー内容が中位程度にとどまっており、得点も思うように伸びていません。この状況からの巻き返しは、正直なところ容易ではないでしょう。

 結局のところ、ブルーインズ、レッドウィングス、アイランダーズといったチームが、攻守両面で5対5のパフォーマンスをどこまで引き上げられるかが、数週間後の最終的な順位を大きく左右することになりそうです。特に、最近好調を維持しているコロンバス・ブルージャケッツやオタワ・セネターズの存在を考えると、一瞬も気が抜けない戦いが続きますね。

後編に続きます!

まとめ

 スタンレーカップ制覇には「5対5の支配力」という明確な合格ラインが存在しますが 、2018年のキャピタルズのように、圧倒的な個の力や守護神の活躍で統計を凌駕する例外も起こり得ます 。

 今後は単なる勝敗だけでなく、「5対5の期待得点(xG)」や「守護神のGSAx(期待以上のセーブ)」といった指標にぜひ注目してみてください 。自チームが「王道の支配者」か「確率を歪める挑戦者」かを見極めることで、プレーオフ観戦の深みが一気に増すはずです 。

讃岐猫
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