はじめに
アメリカのスポーツ界では、選手たちが思わぬ“新しい問題”に直面しています。スポーツベッティングが広がる中、試合の結果だけでなく個々のプレーが賭けの対象となり、その影響が選手の日常にも押し寄せています。「負けたから金を返せ」「お前のせいで賭けに失敗した」——そんなDMが毎日のように届く選手もいるのだとか😰
なぜこんな状況になっているのか?そして選手やリーグはどう受け止めているのか?今日取り上げた各リーグの声をもとに、その“いま”をまとめました。
参照記事:The Athletic「How sports betting is affecting NFL, NBA, MLB and NHL players」
🏒スポーツとギャンブル、何が起きているの?
近年、アメリカのスポーツリーグでは「スポーツ賭博」が大きな話題になっています。きっかけは、2018年に連邦レベルのスポーツ賭博禁止が撤廃1されたこと。それ以来、NFL、NBA、MLB、NHLなど、どのリーグも賭博に関する問題と無縁ではいられなくなっています。罰金や出場停止、リーグ追放、さらには連邦起訴にまで及ぶ規則違反に直面してきました。
特に、(ファンから)選手へのメッセージが一気に変わったと言われています。選手たちがギャンブルの影響をどのように受けているかを理解するため、The Athleticが行った匿名選手調査でも、多くの選手がファンからの嫌がらせや脅迫を受けたと答えました。以下はその主要なポイントです。
🔥各リーグで増える「嫌がらせメッセージ」
【MLB】選手や家族にまで届く脅迫
MLBでは、The Athleticが調査した133人のうち78%が「スポーツ賭博の合法化でファンの態度が変わった」と答えました。特に深刻なのが、ピッチャーのリアム・ヘンドリックス(ボストン・レッドソックス)やランス・マッカラーズJr.(ヒューストン・アストロズ)は、自身や家族が死の脅迫の標的になったと語っています。
あるベテラン投手は、こんなメッセージを受け取ったと語っています。
「ゲームに負けたから9,000ドル払え、払わなければ家族を探す、といった脅迫付きのVenmoリクエスト2を受け取ったこともある。これはやりすぎだ。選手としてMLBのセキュリティに、このままでは手に負えなくなると伝えた。我々はこう言いたくないが、何か悪いことが起きるだろう。それはまさに『だから言っただろう』ということになる」と話しました。
ナショナルリーグのポジション選手の一人は、「今は『お前と家族をぶっ殺す』なんて日常茶飯事だ。悪い日だった、ごめんと言っても、ファンは『今日4打数4安打しろ』と期待しているようなものだ」と語っています。
たった1試合の結果で、ここまで言われてしまう現実に、多くの選手が不安を感じています。
【NBA】「毎試合のように脅迫が来る」
複数のNBAスター選手が、ファンからの「度を越した」メッセージについて公に語っています。ニューヨーク・ニックスのポイントガード、ジェイレン・ブランソンは、「想像以上にひどいメッセージが送られてくる。考えている最悪のことよりもさらにひどい」と述べました。
The Athleticの今年の匿名NBA選手アンケートでは、リーグの約3分の1、158人中150人がスポーツ賭博に関する意見を回答しました。NBAではさらに深刻な声が多く、ある選手は「1試合で10件、DM(ダイレクトメッセージ)が届く。『ぶっ殺すぞ、家族もだ』という内容だ」と語る選手もいます。😢
別の選手は、「個人的にギャンブルは嫌いだ。みんながパーレイ3(複数の賭けを組み合わせた賭け)について話すのも嫌だし、インスタで『お前のせいでパーレイが外れた』とDMをもらうのも嫌だ。パーレイを外したから脅迫されるのも本当に嫌だ」と話しました。
さらに別の選手は、「最悪だ。毎試合、いい試合でも悪い試合でも、死の脅迫や人種差別的な言葉が送られてくる。必ずだ。今確認すれば、たぶん今日の試合のメッセージも届いているだろう。DMやTwitterなど、至る所で。選手がターゲットになる時が来るだろう、ファンが大金を失ったときにね。でも、間違っていてほしいとも思う」と語りました。
選手たちがここまで言うのは、日常的な嫌がらせが“限界”に来ているからです。
【NHL】毎日のように届く毒のあるメッセージ
NHLのアンケートでは、157人の選手回答者のうち、約67%の選手がスポーツ賭博合法化後も嫌がらせメッセージは増えていないと答えたものの、中には有害なメッセージを受け取った選手もいました。ある選手は「毎日1~2件は届く」と話しています。
ゴールテンダーの一人は、「正直、75%はファンが怒っている内容だ。『なぜあの遅いゴールを入れさせた? アンダー4に賭けてたのに、ふざけんな』といった類のメッセージだ」と説明しました。「ゴールテンダーとして、こういう標的にされやすい面もある」と付け加えました。
また別の選手は、「死の脅迫やその他いくつかもある」と話しています。
さらに一部のファンは踏み込んだ行為をしています。NHLではVenmoやCash App5を通じて選手に金銭を要求することが頻繁に行われ、メッセージだけでなく、実際のお金の請求という形でも嫌がらせが起きています。
【NFL】この質問に関する選手への正式なアンケート無し
最近いくつかの選手がファンからの怒りのメッセージについて語っています。ニューヨーク・ジャイアンツのキッカー、グラハム・ガノは、パフォーマンスが悪かったこと6でファンから死の脅迫を受けたと述べています。
アリゾナ・カージナルスのランニングバック、エマリ・デメルカドはツイートで「ファンは僕たちを人間として扱わない。僕たちは彼らが観る試合の駒に過ぎない」と訴えました。レイブンズのQBラマー・ジャクソンも昨シーズン、「僕たちも人間だと理解してほしい」と語っています。
🎯プロップベットは選手やリーグにどんな影響を与えている?
【NBA】相次ぐ不祥事と“利害相反”問題
NBAはプロップベット(特定の選手や状況に賭ける個別賭け)の増加で特に揺れています。
ポートランドのコーチ、チョーンシー・ビラップス、ヒートのガード、テリー・ロジアー、元選手兼コーチのデイモン・ジョーンズらは、非公開情報を賭博者に伝えたり、違法ギャンブル組織に関与した疑いで連邦捜査当局に逮捕されました。
2023年3月23日にミッドレンジのジャンパーを決めた後、テリー・ロジアーは試合数分後に退場する前に右足首を押さえている様子。この試合は調査対象となり、ロジアーが賭博者に「自分がケガを装うのでプロップベットのアンダーを買え」と伝えたとされる試合。
元トロント・ラプターズのフォワード、ジョンテイ・ポーターは、NBAの試合に賭け、自身の怪我の状態を明かしてパフォーマンスを操作したことが発覚し、生涯出場禁止となりました。
こうした事件が続き、匿名アンケートによると、選手のほぼ50%が、NBAのギャンブル企業との提携はリーグにとって悪影響だと回答しています。NBAは操作防止策7として、2ウェイ契約や10日間契約の選手に関する「アンダー」のプロップベットを提供しない契約をギャンブルパートナーと締結しています。
NBA選手会の広報担当者は8月に、「NBA選手は最高レベルで競技に臨み、高い誠実性を持っていますが、プロップベットがオンラインや対面での選手への嫌がらせの増加源となっていることを懸念しています。規制を強化することでこうした被害を最小限にできるなら、私たちはその検討を支持します」と声明を出すほど深刻です。

負けたから金を返せ、なんて脅迫DMが日常的に届くなんて…選手がギャンブルの被害者になってる現実、スポーツ本来の楽しさを返してほしいにゃ😰!賭けのせいで選手が恐怖にさらされて、いいプレーが見られなくなるのはおかしいでしょ?😢そろそろリーグも本気で対策を考えるべきなのに、なんかいつも中途半端なんだよな。
ギャンブルとリーグの利害相反
さらに、一部の選手はNBAに“矛盾”を感じています。複数の選手は、NBAが明確な利害相反を抱えていると指摘しています。「リーグが常にギャンブルを宣伝しておきながら、選手が関わることを期待しないのは矛盾している」とある選手は疑問を呈しました。
別の選手は、「テレビやNBA TVをつければ、いつもスプレッドやギャンブルの話が目に入る。一部の選手は問題を抱えているのに、常にそれを考えさせられるのは挑発されているようだ。さらに、NBA自身にとっても利害相反だと思う。だから良くない」と語っています。
リーグは収益のためにギャンブルを推進しつつ、選手には関与しないよう求める。この“ねじれ”が、選手たちを悩ませています。
NHLご意見番おじさんも、ギャンブルとリーグの矛盾した関係にだいぶご立腹。試合途中に異常な数で流れるスポーツ・ベッティングCMやスター選手の出演に関する問題提起をしています。
【NFL】ルールを改めて周知
今週、NFLは全32チームに向け、選手の怪我、審判判定、キッカーの失敗などの単独プレー、事前に決まった試合結果に関する賭けの制限を記したメモを送付しました。メモに記された禁止事項は新しいものではなく、最近のギャンブルスキャンダルを受けてチームに改めて注意を促す内容でした。
2023年にギャンブル規定違反で10選手が出場停止処分8を受けて以来、公になったギャンブルスキャンダルはありません。NFLはプロップベット9の制限や禁止に取り組んでいると述べていますが、大手スポーツブックでは依然として数百種類のマイクロベットが可能です。
【MLB】プロップベット廃止を求める声
MLB選手会のリーダー、トニー・クラークは公にプロップベットの廃止を求めています。トップエージェントのスコット・ボラスも同意見です。クリーブランド・ガーディアンズの投手、エマニュエル・クラセとルイス・オルティスは、特定の投球結果を賭けと結びつける計画に関与した疑いで起訴10されました。
2021~2023年にサンディエゴおよびピッツバーグで内野手としてプレーしたトクピタ・マルカノは、昨年6月に野球賭博で生涯出場禁止処分を受け、他の4選手は1年間の出場停止処分を受けました。
11年のベテラン選手は、「誘惑に勝てないと考えている選手は甘い✨」と語っています。ある選手は、「スマホ📱でプロップベットを簡単に調べられるし、みんな賭けている。俺の知る限り、全員だ😅」と述べています。
気軽にアクセスできる分、ハマりやすい環境が広がっていることがよく分かりますよね。ここから各リーグがどんな教育を行っているのかが語られていきます。
🏈NFLは教育がかなり徹底されている様子
NFLの選手たちに「リーグのギャンブルに関する教育は十分?」と聞いたところ、83%が「十分」と回答したそうです。多少の混乱はあるものの、選手の多くが教育内容に納得しているという結果になっています。
ある選手はこんなふうに話しています。「うちはよく説明してもらってるよ。結局のところ、ギャンブルから離れてさえいれば大丈夫。仲間内で遊ぶ分にはいいけど、自分を危険にさらすようなことはするなってね」。
NFLは「とにかく距離を置けば安全」というシンプルで分かりやすい指針を徹底している印象ですね💡
⚾MLBはパートナーシップと教育の両立に苦労している印象
MLBでは、コミッショナーのロブ・マンフレッドが「リーグはギャンブル企業とのパートナーシップを結んでいるが、選手教育にも全力で取り組んでいる」と強調しています⚾️✨。ワールドシリーズの期間にも、選手向けのリソース提供について「しっかり努力している」と説明したそうです。
ただし、リーグ内の一部の幹部は「まだ足りない部分がある」と感じているようです。
テキサス・レンジャーズの球団運営部門トップで、以前はコミッショナーオフィスでも高い役職にいたクリス・ヤングはこう話しています。「選手、審判、コーチ、フロントスタッフを守れるルールや規制を整えてほしい。素晴らしい野球というスポーツが、ギャンブルによって汚されるようなことがあってはならない」。
さらに、レッドソックスのベースボールオペレーション部門トップであるクレイグ・ブレスローも、現状の危機感を示しています。「選手が直面している脅威や、実際に持ちかけられる誘惑は本物だ。しっかり対応していかないといけない」。
MLBはパートナーシップを広げながらも、選手を守るための教育体制や規制強化に迫られている状況が、この記事からよく伝わってきますね⚠️
🎯まとめ
スポーツ界では、ギャンブルとの距離感が大きな課題になっています。リーグはギャンブル企業と提携しながら、選手には厳しい規制を求めており、その矛盾に戸惑う声が多く上がっています。
NFLは教育が進んでいるものの混乱もあり、MLBでは処分事例が続出。ギャンブルはファンの楽しみを広げる一方、選手のキャリアに影響する重大なリスクとなっており、今後も議論が続くテーマです⚾️🏀🏈🏒。

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 撤廃された背景には、1992年に成立した「Professional and Amateur Sports Protection Act(PASPA)」の存在がある。PASPAはほとんどの州でスポーツ賭博を禁止していたが、例外的にネバダやデラウェアなど一部州は許可されていた。
しかし、ニュージャージー州が「州には賭博を規制する権限がある」として訴訟を起こし、この訴訟(Murphy対NCAA)を通じて、最高裁は2018年5月14日、PASPAが合衆国憲法修正第10条(州の自治権)に反していると判断。これにより、連邦政府が賭博を一律禁止する権限は侵害され、合法化の判断は各州に委ねられることになった。
この判決以降、多くの州が独自にスポーツベッティングを合法化する動きを加速させ、各州での規制付きギャンブル市場が急速に拡大。また、合法化によって賭け金に対する課税が可能となり、州の財政再建策としても注目された。
↩︎ - Venmoアプリで「お金を請求」する機能のこと。相手のユーザー名や電話番号を指定して、「Pay/Request」画面から請求金額と用途などを入力して送信する。請求を受けた相手は通知を受け取り、支払いを承認することで簡単に送金ができる。
ただし、リクエストされたからといって必ず支払いがあるわけではなく、拒否も可能です。また、請求を悪用した詐欺も報告されており、知らない相手からの請求は拒否するのが安全だとVenmoも注意を促している。
↩︎ - parlayとは、スポーツベッティングにおいて複数の賭け(レッグ)を1つの賭けとしてまとめる手法のこと。各レッグをすべて当てないと勝利にはならず、一つでも外れれば全てが無効となる。一方で、成功すればオッズが掛け算されるため、大きな払い戻しが得られる可能性があるのが魅力とされているが、その分リスクも非常に高くなる。
↩︎ - スポーツ賭博でよく使われる「オーバー/アンダー(over‑under)ベット」の一種で、試合の最終的な合計得点(ゴール数など)が、ブックメーカーが提示したライン(合計スコアの基準)より少ない方に賭けることを意味する。
たとえば、総得点のラインが45.5点と設定された試合で、「アンダー」に賭ければ、両チームの合計得点が45点以下で終わると賭けが的中となる。このベットは、どのチームが勝つか(勝敗)を予測するのではなく、試合の「流れ(得点量)」に対する見通しを立てるもので、多くのスポーツで人気がある。
↩︎ - Venmoは、PayPalが所有する米国発のモバイル決済サービスで、友人や家族間の送金に使われることが多く、アプリ上で支払いや請求ができる仕組み。また、支払いをSNSのように共有できる機能があり、送金時にメッセージや絵文字でやり取りすることも可能。
銀行口座やデビット・クレジットカードと連携でき、即時転送やQRコード決済などの機能も備えている。一方で、プライバシーやセキュリティ面での懸念も指摘され、公開設定をプライベートにするなどの対策が推奨されている。
Cash Appは、Block(旧Square)が開発するP2P送金アプリで、スマホからメールアドレスや電話番号、$Cashtagを使って簡単に送金・請求が可能。銀行口座と紐づけて資金を送受信できるだけでなく、アプリ内でビットコインや株の取引もでき、Cash App専用のVisaデビットカード「Cash Card」も使用可能。
最近はグループでお金を集める「プール」機能も導入されており、買い物や送金がより便利になっている。ただし、過去には利用者保護に関する問題で米国の消費者金融保護局(CFPB)から制裁も受けており、セキュリティ面には注意が必要。
↩︎ - ガノのキッカーとしてのパフォーマンスが問題視されてきた背景には、けがの頻発と重要場面での失敗がある。近年、ネックや鼠径部の故障に悩まされ、2025年には頚椎椎間板ヘルニアと診断されて背中の神経に影響が出ていることを明かした。
特に、サンフランシスコ・49ers戦では45ヤードのフィールドゴールを外し、賭けをしていたファンからの怒りが再燃。彼はこうしたミスによって「賭博者から死を促すようなメッセージを毎週受ける」と告白し、SNSのDMや手紙、試合当日の対面までを通じて深刻な嫌がらせを受けていると語っている。
↩︎ - NBAは、かつて起きた元ラプターズのジョンテイ・ポーター選手による賭博不正スキャンダルを受け、操作防止の対策を強化。具体的には、ポーターが所属していた2ウェイ契約や10日間契約の選手について、主要スポーツブック(BetMGM、FanDuel、DraftKingsなど)と協議のうえ「アンダー(under)」賭けの提供を停止する取り決めを結んでいる。
この制限は、給与が低めで不安定な契約の選手が成績を操作しやすい“弱み”を悪用するリスクへの対応であり、リーグとしてゲームの公正性を守る狙いがある。また、NBAとブックメーカーとの協力はこれにとどまらず、ファウル数やターンオーバー、ミスフリースローなど、操作されやすいプロップベットの見直しも進行中だと報じられている。
↩︎ - 2023年、NFLは賭博規定違反を理由に10人の選手を処分。中には、デトロイト・ライオンズのクインテズ・セフス、C・J・ムーア、ワシントン・コマンダーズのシェイカ・トニーが、NFLの試合に賭けたとして無期限の出場停止処分を受けている。
また、テネシー・タイタンズのニコラス・プティ・フレールは、チーム施設内でNFL以外のスポーツに賭けていたため6試合停止に。インディアナポリス・コルツからはアイザイア・ロジャース・シニア、ラショッド・ベリー、デメトリウス・テイラーの3人が無期限停止処分を受け、後に解雇。
ドーヴァーのデンバー・ブロンコスからは新人のイヨマ・ウワズリケが、ルーキー時代にNFL試合に賭けたとして無期限停止に。これらの処分は、リーグがギャンブルの健全性を強化しようとする一環であり、インサイダー情報の使用は確認されなかったとの声明も出ている。
↩︎ - NFLが「プロップベットを制限・禁止する方向で動いている」と語る際のprop betsとは、試合の勝敗とは直接関係ない、個人選手の成績やプレーの細かな統計などに賭けるタイプのベット(例:あるQBがパスヤードを何ヤード投げるか、タッチダウンを取るか、など)を指す。
この種の賭けは、試合結果よりも選手の一アクションにフォーカスするため、“プロポジション”ベットと呼ばれる。
一方、micro-betsとは、より細分化された賭けで、1プレーごとや1投球ごとの動きなど、試合内の非常に短い時間・小さなイベントに対して行われる賭けのこと。MLBなどではストライクかボールか、または投球速度などを対象とするマイクロベットが問題視されており、一部リーグはこれらを制限する動きを進めている。
マイクロベットは特定の選手の行動に強く依存するため、公正性のリスクが高く、選手による操作(スポットフィクシング)への懸念があるとされている。さらに、マイクロベット市場はかなり巨大で、米国のある業者は、スーパーボウル中にドライブ結果を予想するマイクロベット市場で、数百万ドル規模の賭けを扱ったことも報告されている。
↩︎ - 2025年11月、ガーディアンズの投手エマニュエル・クラセとルイス・オルティスが、特定の投球を事前に賭け仲間に知らせて賭けを操作する共謀をしたとして、連邦起訴された。
検察によれば、クラセは2023年ごろから賭け業者と共謀し、試合中に携帯電話で連絡を取りながら、スライダーを故意に遅く投げたり、ストライクゾーン外にボールを投げるなどし、賭け対象となる「ボールかストライクか」「速度は予め決められたラインより速いか遅いか」といったプロップベットを有利に導いていたとされている。
この一連の違反行為により、賭け仲間は40万ドル以上を不正に得たとされ、クラセおよびオルティスは賄賂やキックバックを受け取っていたと指摘されている。起訴内容は、電信詐欺(wire fraud)、賄賂共謀、マネーロンダリングなど複数の重罪を含み、有罪になれば最大で長期の実刑刑もあり得ると報じられている。
オルティスが関与を始めたのは2025年6月とされ、彼は特定のイニングの最初の投球をボールにする見返りに金銭を受け取っていたと起訴状で主張されている。MLBは調査を進めており、両選手は試合から外れて調査されている状況。
↩︎

