第3ピリオドでの逆転劇は今やお家芸、アナハイム・ダックス6連勝!

アイスホッケー名勝負

はじめに 

 どんなプロ・スポーツでも連敗街道まっしぐらのチームもあれば、その逆のチームも存在します。日本の場合、得てして「その逆のチーム」の方が人気チームになる現象を起こしやすいようですが…。「弱くても見捨てられない。自分はずっと応援する!」みたいな人が多いようです。 

 昨シーズン、「その逆のチーム」だったアナハイム・ダックスが、とても順調に白星を重ねています。しかも、最終ピリオド=第3ピリオドで逆転して勝利&連勝を掴み取るなんて、まさに日本人好みの展開を見せています。 

 そんなアナハイムが「チャンピオン・チーム」まで倒してしまいました。またもや、第3ピリオドで人が変わったように連続得点をして勝ってしまう、今シーズンを象徴するような試合内容でした。先行逃げ切りもいいですが、大逆転劇はやはりドラマがありますね。 

讃岐猫
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引用元:NHL.com「Ducks score 4 in 3rd, end Golden Knights’ point streak at 12

アナハイムもベガスも記録づくめ!

 11月5日(日曜日)のホンダセンターで、アナハイム・ダックスは第3ピリオドに4連続ゴールを決めて4-2で勝利し、ベガス・ゴールデンナイツは今季初のレギュレーションでの(試合時間60分間での)敗北を喫しました。

 サム・キャリック(センター、31歳)が2ゴールを決め、フランク・ヴァトラノ(右ウィング、29歳)とカム・ファウラー(ディフェンス、31歳)がそれぞれ2アシストを記録したダックス(7-4-0)は連勝を6に伸ばしましたが、その間、第3ピリオドでの劣勢から5回も逆転勝利を収めています。ジョン・ギブソン(ゴールテンダー、30歳)は30セーブを記録しました。

 「ここにいる選手たちの個性を示したものだね」とキャリックは言います。「決して諦めず、ずっと諦めず、お互いを信じることさ。1点差だろうが2点差だろうが3点差だろうが関係なく、我々には逆転のチャンスがあるんだってね」。

 ジャック・アイシェル(センター、27歳)がゴールとアシストを決め、ローガン・トンプソン(ゴールテンダー、26歳)が19セーブを記録したゴールデンナイツ(11-1-1)は、2012-13シーズンのシカゴ・ブラックホークス(24試合)以来となる、13試合以上連続得点で開幕シーズンを過ごしたチームとなりました。

ベガスの監督、余裕の弁

 ベガスは、11月4日(土曜日)、コロラド・アバランチに7-0で勝利しています。アナハイムは、11月1日(水曜日)アリゾナ・コヨーテズ戦で4-3の延長戦で勝利して以来、試合をしていませんでした。

 ゴールデンナイツのブルース・キャシディ監督は「人数が足りていれば、ベストではないにしても、今年最高の守備面で優れた試合の1つだったかもしれないが、第3ピリオドに3ゴールで逆転されたのが目立ってしまった」と語っています。

 「我々(ベガス)はそこで抑え込みたかったんだが、彼ら(アナハイム)は得点する方法を見つけてしまったね」。

 第3ピリオド・1分38秒、アダム・エンリケ(センター、33歳)がパワープレーでゴールを決め、アナハイムが2-1としました。

 ファウラーは最初のショットをブレット・ハウデン(センター、25歳)にブロックされましたが、パックが彼の元に戻り、ファウラーはそれをスロットに向かって打ち返し、エンリケがスピンして得点したのです。

 エンリケのゴールは、ギブソンが左パッド(左足の防具)でアイシェルの攻撃を止めた直後のものでした。

讃岐猫
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サム・キャリック(アナハイム)、大暴れ!

 キャシディは「ジャック(・アイシェル)のショートハンド・ゴール(ベガス側の人数が少ない場合のゴール)を止められていなかったら、延長にもつれ込むチャンスがあった」と語っています。

 「うまくいかなかったけど、問題じゃないよ。我々は十分に良いプレーをし、ホッケーの試合に勝つのに十分な守備をした。アナハイムは我々の(ゴールの)背後にゴールを叩き込む方法を見つけたのさ」。

 10分55秒、キャリックは2-2の同点に追いつきました。

 アイシェルからターンオーバー(シュート以外のミスでパックを取られること)の後、パヴェル・ミンチュコフ(ディフェンス、19歳)はキャリックにパックをパスし、キャリックはショットをフェイクした後、ゴールテンダーの前方から1人で5ホール(ゴールテンダーの股下の空間)を抜いて得点したのです。

 さらに16分20秒に、メイソン・マクタビッシュ(センター、20歳)がバトラーノからのパスをゴールライン下から5ホールで決め、3-2とリードを広げました。彼は7試合連続ポイントとなり、NHLキャリアハイの10ポイント(5ゴール、5アシスト)を記録しています。

ダックスの大逆転劇!

 キャリックは試合終了残り1分9秒に無人のゴールネットを揺らし、4-2で勝利を決めました。

 第1ピリオド・8分51秒、(相手チームの人数:自チームの人数)3対1の状況で、アイシェルからのバックドアパス1にイヴァン・バルバシェフ(センター、27歳)が合わせ、ゴールデンナイツに先取点をもたらしました。

ベガス、第2ピリオドまで2-0で優勢だったが…

 第2ピリオド・13分43秒、4対4の場面でアイシェルが得点し、2-0とします。彼はニュートラル・ゾーン2を通って右サークルにパックを滑り込ませ、ギブソンの左肩越しにショートサイドのシュート3を放ちました。

この試合のハイライト映像です!

 指の骨折で開幕からの10試合を欠場した後、ダックスでデビューを果たしたFWアレックス・キロン(センター、34歳。タンパベイ・ライトニングから新加入)は、「スタンレーカップ・チャンピオンで、リーグ最高のチームだと私は思っているベガス・ゴールデンナイツに2-0で負けている状況から、チームの回復力を発揮して逆転するなんて、ウチのチームじゃいろんな相手に何度もやってきたことさ」と語っています。

 「このグループ、特にウチのような若いグループに、そんな回復力が見られたことは非常に印象的だね」。

讃岐猫
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この試合の注目点

注:ダックスは、2018-19シーズンのバッファロー・セイバーズに続き、少なくとも第3ピリオドでの逆転5回を含む6連勝したNHL史上2番目のチームです。

 …キャリックにとってNHLで2度目の2ゴール・ゲームとなりました。もう1回は2022年3月23日。

 …ミンチュコフは11試合で8ポイント(1ゴール・7アシスト)で、ルーキーの中でNHLトップタイとなっています。

 …キロンは17分11秒のアイスタイムで1本のシュートを放ちました。

 …ゴールデンナイツのFWウィリアム・カールソン(センター、30歳)は、9試合連続ポイント(6ゴール・7アシスト)でストップしました。

まとめ

 ベガス戦の次、11月7日の試合、勢いに乗ってピッツバーグ・ペンギンズにも勝利…とは行かず、アナハイムは0ー2でシャットアウト負けを喫してしまいました。第2ピリオド終了までは0-1で進み、「最小得点差だ、まだまだ!」って感じはしたんですけどね。

 得意の第3ピリオドに追加点を許し、かつピッツバーグの守備網にことごとく引っかかり、試合終了。相手はスタート・ダッシュの遅いアナハイムを研究していたと思いますし、連勝で気が緩んだか、やや雑な攻めを繰り返したアナハイムのスキを突かれた形です。

 とはいえ、昨シーズンと比べ、アナハイムの守備面は格段の進歩を見せており、安定した試合運びが試合開始からできているのは大きなアドバンテージです。疲れ知らずの若武者達のこと、今回の敗戦で気持ちを切り替え、今のチームの特徴を活かして戦っていってほしいです。

讃岐猫
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【註釈】

  1. バックドアとはパックがある位置と反対側のこと。前方へパスを撃つと見せかけてゴール前を横切るパスを出し、バックドアからシュートを撃つ戦術の際用いられる。
    ↩︎
  2. アイスホッケーのリンクで、2本のブルー・ラインによって分けられたゾーンの中央の区域。センター・ゾーンともいう。
    ↩︎
  3. ゴール横のほとんど角度がないあたり(デッドアングル)からシュートを打つ場合、狙うコースは、自分から見て手前側のGKの肩口である。その手前側のことをショートサイドという。 ↩︎
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