はじめに
海外だと、プロ・チームのオーナー交代はよくありますが、日本はそれほど多いと言えないかもしれません。「スポーツ=アマチュア精神の発露」みたいなところがあって、スポーツにお金をかけてプロ化するのに、企業が躊躇する時代が長かったのも原因の一つだと思います。
北米4大スポーツの場合、国土の広さもあって企業も多いですし、「オラがチーム」を求める声を背に受けて、その企業が元あるチームを買収したり、新たにチームを立ち上げることが多いと言えます。「アメリカン・ドリーム=プロ選手」の考え方も強いですし。
今回は、オタワ・セネターズを買収した実業家マイケル・アンドラウアーが、前GMの残した負の遺産に苦労している話をお届けします。オタワ買収問題について、ある映画俳優の手元へチームが移るゴシップもありましたが、それ以外にもチーム内に問題を抱えていたのです。
日本には今でこそプロ・リーグ増えてきたけど、その昔はプロ野球一択だったにゃ。
プロ化の波にアイスホッケーは遅れるどころか、
リーグ自体の存続が危ういってのが何とも悲しい。
引用元:ESPN.com「Pierre Dorion out as Senators GM after team docked 1st-round pick」
新オーナー、前GMを解任!
ピエール・ドリオン(カナダ、オンタリオ州オタワ出身。経歴は記事中にあり)は辞任し、オタワ・セネターズのゼネラルマネージャーとしての職務を解任されました。ホッケー事業部社長のスティーブ・ステイオス1が暫定GMに就任します。
11月1日(水曜日)の記者会見で、昨春にチームを買収したオーナーのマイケル・アンドラウアー2とステイオスが出席し、8シーズンにわたってチーム運営の指揮を執ったドリオンの退任を発表しました。
ドリオンの解雇は、2022年、エフゲニー・ダドノフ(右ウィング、34歳。現在、ダラス・スターズ所属)とアナハイム・ダックスの間で行われた無効なトレードに、オタワが関与したとして、ドラフト1巡目指名権剥奪を受けて行われたものです。
アンドラウアーによると、先週受け取ったばかりの73ページの文書には、セネターズがいかに「本質的に怠慢」であったかが書かれており、それがドリオンから離れるための最後の一押しだったと言われています。
新オーナー、怒りの記者会見
「これまでに下された決定の多くや、われわれが抱えていた問題の一部は回避できたと思う」とアンドラウアーは述べました。「我々の注意義務が無視され、リーグを困惑させ、他の2つのNHLクラブを怒らせてしまった。
このリーグの一員として、私たちは自分たちの行動に責任を負わなければなりませんし、私が管理する以前に、本件は行われていましたが、私はその決定を尊重しなければなりません。
本日、ピエール・ドリアンが辞任し、ゼネラルマネージャーの職務を解かれたことをお知らせします」。
アンドラウアーによると、ドリオンとは火曜日に夕食を共にし、双方が「別れるのが最善」と判断したと言われています。しかし、それは性急な決断ではありませんでした。
アンドラウアーによれば、9月下旬、アンドラウアーが初めてセネタースに大抜擢したステイオスに、先週、GMポストの交代を考えていることを伝えたということです。
「おたく、チーム運営怠け過ぎ」って言われりゃ、オーナーも腹立つだろにゃ。
せっかく手に入れたチームにトラブルばかりじゃ、「おいおい」って誰でも感じるよ。
不正トレードの他に、選手の賭博問題まで…
ダドノフの失態に対するNHLの厳しい処分に加え、制限付きフリーエージェントのシェーン・ピント(センター、23歳)の最近のギャンブル関連の出場停止処分3により、アンドラウアーは行動を起こし、GMポストについて新たな道を追求することを余儀なくされました。
51歳のドリオンは、2007年、セネターズのチーフ・アマチュアスカウトとしてスタートし、2009年に選手に関する人事部長、2014年にアシスタント・ゼネラルマネージャーに昇進しています。2016年4月10日、ブライアン・マレー4の後任として正式に新GMに任命されました。
ドリオンの下でオタワはプレーオフに1回だけ出場し、2007年、イースタン・カンファレンス決勝に進出しています。
2019年、ドリオンに雇われたヘッドコーチのDJスミスは、スタッフとともにその地位にとどまりました。
オタワの釈明のための記者会見中、ダドノフのトレード失敗から来る結果に直面していることについて、アンドラウアーは不満を表明しています。
今後3年間のドラフト指名にペナルティ
2021年、ダドノフをラスベガスのゴールデンナイツにトレードした際、5ダドノフの契約に10チームのトレード禁止条項が含まれていることについて、オタワがラスベガスに伝えなかったことに起因する罰として、2024年、2025年、2026年のいずれかのドラフト一巡目の選択を、オタワは没収されています。
そのため、2022年、ゴールデンナイツがダドノフをダックスにトレードしようとしましたが、無効になりました。
「なぜ私が本件を受け継がなければならないのか、わからない」とアンドラウアーは言っています。「(調査に)そんなに時間がかかる理由はない」。
セネターズは今、どのシーズンに1巡目指名を断念するかについて決めなければならず、その年のドラフト抽選から24時間以内に決定しなければなりません。
アンドラウアーは、(1巡目指名断念の)シーズン選択に関して「最善のシナリオと、どのようにすれば(組織に)影響が少ないかを見極めるプロセスを経るだろう」と述べました。「まだその段階には達していませんが、時間をかけてじっくりと検討するプロセスがあります」。
ペナルティで1巡目を手放すなんて、チームとしては恥、
不名誉な歴史と言わざるを得ないにゃ。
おまけに、チーム強化で後手に回るのは必至、新オーナー、どう出るか。
新オーナー、NHLの不透明性に不満
今週の困難に加えて、セネターズはピントの停職処分をめぐる副次的影響にも対処しています。クラブとまだ新しい契約を結んでいないピントは、NHLの賭博規則に違反したとして、10月26日に41試合の出場停止処分を受けました。
ピントがなぜ特別なフラグを立てられたのかについて、リーグは詳細を明らかにしませんでしたが、NHLの試合に賭けたことで非難されたわけではないと述べています。
ピントの行動に対するNHLの調査は昨年夏に始まりましたが、NHLが賭博行為の実態を知ったのはもっと最近のことだ、とアンドラウアーは主張しました。そのため、NHLがすべての事実を収集するまで、ピントとの交渉を停止することをアンドラウアーは望んだのです。
そしてまた、アンドラウアーは、ピントが調査されていた時期やダドノフとの取引の失敗について、NHL自身の透明性の欠如に当惑していました。
時間がかかりすぎだ!(怒)
「なぜこんなに時間がかかったのか理解できない」とアンドラウアーは言います。「クラブが売りに出されていて、(プロセスを)混乱させたくなかったからかもしれない。売り手が可能な限り高い価格で取引できるようにしたんだ。
わからないね、僕には答えられないよ。リーグにその質問をしなければならないだろう」。
一方、ステイオスはオタワの次期ゼネラルマネージャーを探しています。彼は、カナダの首都で激動としか言いようのないシーズン最初の1ヶ月を過ごした直後に、「グループに安定と自信を植え付ける」ことが最優先だと語りました。
「オタワ・セネターズのために最善を尽くす」とステイオスは述べています。「それが肝心だ。だから、この(GM探しが)進展し始めたら、どんな選択肢があるのか、誰が使えるのか、もっと長い目で見ていくことになると思う」。
まとめ
賭博問題は、プロスポーツ・チームにとって致命的なものになりかねない、最も忌み嫌うべき存在だと思います。選手個人の私利私欲のため、必死に勝利を求めているチームに冷や水をかけるわけですから。しかも、チーム内に賭博が広がっていく可能性もあります。
ヘルスケア事業を手掛けるオタワの新オーナーとしては、やはり「清廉潔白なチーム」というイメージが必要なはずです。なのに、いわば「薄汚いトラブル山積なチーム」では、買収したことを後悔しているかも…。
しかも、リーグと情報共有できていなかったことにもガッカリしているでしょう。チームはとにかく勝っていって、イメージを良くしていくしかありません。
しかし、混戦とはいえ、オタワはアトランティック・ディビジョン最下位…、シーズン序盤、そろそろ巻き返さないと厳しくなっていくかも。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- カナダ、オンタリオ州ハミルトン出身、50歳。現役時のポジションはディフェンス。両親はマケドニア出身。NHL6チームを渡り歩き、レギュラー・クラスで活躍。アトランタ・スラッシャーズ(現ウィニペグ・ジェッツ)拡張ドラフト対象者。
↩︎ - フランス、トゥールーズ出身、51歳。カナダの実業家であり、自らの名を冠するヘルスケア関連事業を主とするグループのCEO。
ファーム・チームとベルビル・セネターズ(AHL)とブラントフォード・ブルドッグス(OHL)を含むオタワセネターズのオーナー。以前、モントリオール・カナディアンズのマイナーチームのオーナー経験あり。
↩︎ - 2023年10月26日、NHLはスポーツ・ギャンブルに関するリーグの規則に違反したとして、ピントは41試合出場停止(リーグ史上最長)となる。
NHLの試合に賭けた証拠は見つからなかったが、出場停止は、NHL選手協会、リーグの間の交渉の結果であり、正式な懲戒プロセスの結果ではない。ピントはその後、謝罪声明を発表している。
NHLのベッティング・パートナーは初夏から調査をしており、ピントは別なベッターとのつながりがあると報告されていた。ピントは停止となった時点で契約延長の署名をしていなかったため、両者間の同意があるまでペナルティ開始とならない。
↩︎ - カナダ、オンタリオ州オタワ出身、74歳。GM歴も長いが、監督歴も長く、17シーズンで620勝を記録し、そのうち13シーズンはチームをプレーオフに導いている名将でもある。甥のティム・マレーもバファロー・セイバーズでGMを務めている。
↩︎ - 2021-22シーズン中、ゴールデンナイツは、バッファロー・セイバーズからジャック・アイシェル獲得に伴うサラリー・キャップ調整のため、2022年3月21日のNHLトレード期限にダドノフと条件付き第2巡目指名権をアナハイム・ダックスにトレードしようと計画。
ダドノフの契約のトレード禁止条項により、この取引はすぐに疑問視された。セネターズが条項について通知しなかったとゴールデンナイツは主張し、ダドノフがその有効性に異議を唱える前にNHLは取引を処理し、3月23日、トレードは正式に無効となる。
本件により、NHLは将来的にトレード禁止条項の処理方法変更計画を発表した。 ↩︎