リーフス再建への道!ブルーインズに学ぶ戦略的リツールの極意

NHLチーム紹介

スコット・ロートン(センター)🦾

 次にご紹介するのは、スコット・ロートンです。もう一人の期限付きFA(UFA)候補で、彼もまた、キャップヒットがわずか150万ドル(日本円で約2億2,000万〜2億3,000万円)という、今の市場では非常に魅力的な「超低価格」の契約になっています。

 もしトレードの際にリーフスが年俸の半分を負担することになれば、相手チームはリーグの最低年俸以下のコストで彼を獲得できてしまう計算です。

相手チームはリーグの最低年俸以下のコストで彼を獲得できてしまう計算

NHLのトレードで年俸保持(salary retention)とは、選手をトレードする際に、元のチームが選手の年俸とサラリーキャップヒットの一部を負担し続けることを意味する。ルールとしては、トレードするチームは最大でその年俸・キャップヒットの50%までを保持できると定められており、保持した割合分は元のチームの支払い・キャップヒットにも反映される。

 たとえば、年俸が200万ドルの選手を50%保持してトレードすれば、元のチームは100万ドルを負担し続け、新しいチームは残りの100万ドルだけを負担することになる。保持には上限や制約(1チームで同時に3契約まで、総保持額はリーグキャップの15%までなど)もあるが、トレード成立を促進する重要な制度。(PuckPedia

 今回のロートンのケースでは、彼の契約は年俸ヒット(cap hit;チームのサラリーキャップに計上される金額)が150万ドル程度と比較的低いものであり、仮にリーフスが保持割合を50%に設定すると、新しいチームが負担するキャップヒットはその半分、約75万ドルになる。

 これはリーグ最低年俸(新CBAのルールで2026-27から約85万ドルに引き上げられる予定)を下回る可能性がある水準。(CapWages

 この仕組みが「相手チームがリーグ最低年俸以下のコストで選手を獲得できる」ように感じられるのは、キャップヒットが実際の年俸支払い額ではなく、その選手の契約をキャップにどう反映させるかを示す指標であるため。

 実際には選手本人には契約どおりの給与が支払われるが、新しいチームは保持分を差し引いた低いキャップヒットで契約を抱えることになるため、チーム運営上の負担が小さく見えるのである。このように年俸保持は、相手チームが負担するキャップヒットを戦略的に軽減してトレードを成立させる手段として使われる。

 ロートンは、いわゆる「ハート&ソウル」を地で行くような、闘争心あふれるベテラン選手です。フェイスオフに強く、数的不利な状況での守備(ペナルティキル)でも体を張れる実力を持っています。

 こうした数字に表れにくい「無形の価値(インタンジブルズ)」は、プレーオフという厳しい戦いを勝ち抜きたいチームにとって、喉から手が出るほど欲しい要素なんです。

 正直なところ、昨年リーフスが彼を獲得するために支払った大きな代償(1巡目指名権と期待の若手、ニキータ・グレベンキン)と全く同じだけの見返りを得るのは難しいかもしれません。それでも、リーグ内での彼の評判はすこぶる高く、熱心なGMがいれば、彼を手に入れるためにかなりの好条件を提示してくる可能性も十分にあります。

 昨年の似たような例では、ブランドン・タネフが2巡目指名権と引き換えに、シアトルからウィニペグへ動いたケースがあり、ロートンもそれに匹敵する価値があると見られています。

ロートンはフライヤーズから昨シーズン獲得したばかりなのに、もうトレード候補?だったら、すぐに返してくれ!フライヤーズの守備ボロボロなんで。

ニコラ・ロイ(センター)🏆

 もう一人の注目株は、ニコラ・ロイです。彼は昨年の夏に「右利きの大型3列目センター」という期待を背負ってリーフスに加わったばかりの選手です。

 ロイの最大の強みは、数年前にベガス・ゴールデンナイツでスタンレーカップを制覇したという「優勝経験」があることです。大きな舞台での勝ち方を知っている選手の価値は、市場で非常に高く評価されます。

 彼のトレードを考える際、一つの目安になるのが、昨年ブルーインズが行ったチャーリー・コイルのトレードです。この例を参考にすると、トロントはロイの放出と引き換えに「ロースター級の即戦力の選手+2巡目指名権+有望な若手(プロスペクト)」という、かなり豪華なセットを狙うことも夢ではないでしょう。

昨年ブルーインズが行ったチャーリー・コイルのトレード

2025年3月7日、ボストン・ブルーインズはベテランセンターのチャーリー・コイルをコロラド・アバランチへトレード。

 このトレードでは、ブルーインズがコイル本人と合わせて2026年の5巡目指名権を放出したのに対し、アバランチからはセンターのケースィ・ミッテルシュタット、18歳のフォワード有望株ウィリアム・ゼラーズ、そして2025年の2巡目指名権を獲得する形となった。(Boston.com

 コイルはこの年シーズン中64試合で22得点(15ゴール)を記録しており、ブルーインズでは7シーズンにわたってチームの中心として中堅ラインで活躍してきた実績があった。しかし、シーズン途中でパフォーマンスが低迷していたこともあり、組織再建の一助として若手や将来の資産を獲得する方向に舵を切ったという見方が現地メディアで示されている。

 ミッテルシュタットは比較的年齢が若く、プレーメーキング能力を持つセンターとしてポテンシャルを評価されている一方、ゼラーズは米国ジュニアリーグで得点力を発揮した有望プロスペクト。このように、ブルーインズは即戦力のベテランから「若手+指名権」という将来の価値に換えるトレードを成立させたことになる。

 この事例は、トレードデッドラインでの価値交換としてよく引用されており、「ベテラン選手1人を放出して若手プロスペクトと指名権という複数の資産を得る」という形が、トレードマーケットでどの程度の見返りになるかを示す比較可能な先例として、他球団のGMや分析者の間で参照されている。

カレ・ヤーンクローク(左/右ウイング)🏒

 次にご紹介するのは、カレ・ヤーンクロークです。彼はキャリアの後半戦に差し掛かっているベテランで、リーグ内では「どこでもこなせる器用な選手」として知られています。

 ただ、正直なところを言えば、今の彼がトレードで大きな見返りを連れてきてくれる可能性はそれほど高くありません。2025年の似たような例を挙げると、シャークスがニコ・シュトゥルムをパンサーズへ放出した際に得られた「4巡目指名権」あたりの条件が、現実的なラインと言えそうです。

サイモン・ブノワ(左ディフェンス)🛡️

 ディフェンス陣に目を向けると、サイモン・ブノワが面白い存在です。彼は、昨年デッドラインでウィニペグへ移籍し、2巡目と4巡目の指名権という高い代償を引き出したルーク・シェンよりも若く、さらにキャップヒットも135万ドルと非常にリーズナブルです。

 もちろん、実績やプレーオフの経験という点ではシェンには及びません。ですが、その恵まれた体格(サイズ)とフィジカルの強さ、そして何より今の「お手頃な契約」がまだ残っているという点は、市場でしっかりとした価値として評価されています。

ブランドン・カルロ(右ディフェンス)

 さて……ここからは少し「世間体」を気にしなくてはいけない、厄介な話になります。それがブランドン・カルロです。

 実はリーフス、このカルロを獲得するために、わずか1年足らず前にとんでもない「大量の資産」を差し出しているんです。1巡目指名権に4巡目指名権、さらに今やブルーインズで主力として大化けしている有望株のフレイザー・ミンテンまで放出して手に入れた選手なのです。

わずか1年足らず前にとんでもない「大量の資産」を差し出している

2025年3月7日、トロント・メープルリーフスはプレーオフに向けて守備力を強化するため、ボストン・ブルーインズからディフェンスマンのブランドン・カルロをトレードで獲得。

 この大型取引において、リーフスがブルーインズに差し出した資産は、2026年の1巡目指名権(トップ5プロテクト付き)と2025年の4巡目指名権(フィラデルフィアからのもの)、そして20歳の有望な若手フォワード、フレイザー・ミンテンの3つだった。ブルーインズはさらにカルロの年俸の15%を保持する形で契約負担の一部を分担し、残りはリーフスが負担する形になっている。

 このミンテンは2022年のドラフト2巡目指名で、当時から将来を期待されるプロスペクトであり、ブルーインズは彼の潜在力を高く評価して今後のチーム再建の核として取り込んでいる。また、1巡目指名権や4巡目指名権も将来のチーム戦力構築にとって重要な資産となるため、カルロ獲得のためにリーフスが放出したトレードパッケージは当時、「数量・質ともに非常に重いもの」と見られた。

 このトレードは、リーフスが即時戦力のディフェンスを欲しがる一方で、ブルーインズが若手育成と将来のドラフト価値を重視するという、その時点の両チームのニーズを象徴するものとして現地でも大きく報じられている。(Boston.com

 もし今、彼をトレードに出すとなれば、当時支払ったほどの豪華な見返りを再現することはまず不可能です。しかし、彼が「右利きの大型守備型ディフェンス」という、どのチームも常に探し求めている貴重なタイプであることに変わりはありません。

 さらに、カルロにはまだ来シーズンの契約も残っています。もしリーフスが彼の年俸の一部を負担して、現在の348万5,000ドル(日本円で約5億円強〈1ドル=150円換算〉)というキャップヒットをさらに下げて提示することができれば、トレードの価値をぐんと高めることもできるはずです。

オリバー・エクマン=ラーソン(左ディフェンス)🏒

 ディフェンス陣の中でもう一人、注目を集めているのがベテランのオリバー・エクマン=ラーソンです。今シーズンのリーフス守備陣は怪我人が続出する厳しい状況でしたが、彼はその中でトップ4としての役割をしっかりこなし、安定したプレーを続けてきました。

 特に攻撃面での貢献度は高く、54試合で32ポイントという立派な数字を残しています。この実績は、トレード市場でも確実に買い手の目を引くはずです。

 彼の契約はあと2シーズン残っており、年俸負担額(キャップヒット)も350万ドルと比較的手頃です。ただ、彼は今年で35歳を迎えるため、この「残りの契約期間」が、獲得を検討するチームにとっては少し慎重になる材料になるかもしれません

獲得を検討するチームにとっては少し慎重になる材料になるかもしれません

エクマン=ラーソンの契約は2024-25シーズンから4年間・総額1,400万ドル(年平均350万ドル)のもので、2027-28シーズン終了まで残っている。この契約の「残存年数があること」が、他チームが獲得に慎重になる材料とされるのは、年齢とパフォーマンスの関係によるもの。

 一般的にNHL選手、特にディフェンスマンは30代半ばに入るとフィジカルやスピード、アイスタイムなどが徐々に低下する傾向があり、ピークを過ぎてからのパフォーマンス持続が不確実になるという分析が存在する。年齢曲線に関する統計的分析では、選手の身体能力や貢献度は20代後半から30代前半がピークとされ、それ以降は緩やかに低下が進む可能性が高いとされる。

 これはエクマン=ラーソンのような35歳前後の選手の場合、長期契約がパフォーマンスリスクを抱える要因になるという見方につながる。(puckpedia.com

 また、契約の残存期間があることが価値評価を難しくする背景には、将来的なサラリーキャップやチーム戦略の変化への柔軟性が低下することもある。具体的には、長期契約を抱えたまま選手のパフォーマンスが低下したり、他の補強資金が必要になったりすると、その契約がチームのサラリーキャップ運用の制約になるリスクが出てくる。

 他チームはそうした“将来的なリスク”も評価に加えるため、残存年数が長い契約は短期契約より市場価値が低く評価されがちなのである。

 このような契約残存年数と年齢による価値評価の考え方から、エクマン=ラーソンのような年齢が高めで契約が複数年残っているベテラン選手は、他球団が即戦力として欲しいと考える一方で、将来的な契約リスクを慎重に見極める必要があると地元メディアでも分析されている。

 そのため、「今が売り時」という判断が出やすく、現時点での市場価値を最大限引き出すことが推奨される背景となっている。

 とはいえ、彼の市場価値がこれ以上上がることは考えにくいでしょう。そう考えると、価値が高まっている今この瞬間に「高値で売却」するのは、チームにとって非常に賢明な判断と言えるかもしれません。

他にもいる!トレードの可能性がある選手たち📝

 ここまで挙げた選手以外にも、リーフスが動かせる可能性のある選手はまだたくさんいます。例えば、マティアス・マッケリ、マックス・ドミ、モーガン・ライリー、ニック・ロバートソン、トロイ・ステッチャー、そしてアンソニー・ストーラーツといった名前が挙がっています。

 今回のデッドラインで、リーフスがブルーインズのマーシャンのような「超大物」を放出する可能性は低いかもしれません。ですが、5人から6人の選手をまとめてパッケージにし、複数の資産をまとめて手に入れるという点では、昨年のボストンと似たような動きになる可能性が十分にあります。

 うまくいけば、1巡目指名権を1つか2つ、さらに上位3ラウンド以内の価値ある指名権をいくつか手に入れることも、決して夢物語ではありません。

 また、ブルーインズがミンテンやマラト・フスヌトディノフのように「すぐに試合に出られる若手」を確保したように、リーフスにとっても即戦力のプロスペクトを獲得することは極めて重要です。主力を大量に放出した穴を、すぐに埋める必要があるからです。

リーフスの再建を成功させるカギ🔑

 今回の「リツール(戦力の組み替え)」を成功させる本当のカギは、デッドラインで手に入れた指名権や若手資産の一部を、オフシーズンのトレードで「経験豊富なベテラン」に変えていくことにあります。

 幸いなことに、トロントは今後かなりの予算(キャップスペース)を確保できる見込みです。これによって、フリーエージェント市場で積極的に動いたり、あるいは他チームの「重荷になっている契約」をあえて引き受ける代わりに有利な条件を引き出したりといった、柔軟なチーム運営が可能になります。

今後かなりの予算(キャップスペース)を確保できる見込み

メープルリーフスが今後大きなキャップスペースを持つ見込みである理由は、NHLのサラリーキャップ自体が今後大きく引き上げられることが確実視されているという、リーグの動向に起因している。

 2024-25シーズンの上限は約8,800万ドルだったが、2025-26シーズンには約9,550万ドルに増加すると発表され、その後もさらに増える見込みであるとリーグと選手会が声明を出している。

 次の2026-27シーズンには約1億4百万ドル、さらにその後も上昇が予測されているため、各チームは現在の契約と将来のキャップ上限の差を利用して、より柔軟な人事計画を立てられる状況にある。(The Hockey News

 この「キャップの拡大見込み」は、リーフスが今季のトレードや放出で多くの高額契約を減らし、かつ主要選手に長期巨額契約を結びにくい局面にあることと重なっている。例えば、スター選手のミッチ・マーナーが去ったり、ジョン・タヴァレスが契約延長して比較的低めの年俸で契約したりすることで、チームの年俸総額が抑えられている。

 その結果、現状の契約状況の中でサラリーキャップが上昇する“余地”が生まれており、将来的には数千〜数千万ドル規模のキャップスペースが確保できる試算となっている。

 このようなキャップ余力は、オフシーズンのフリーエージェント市場で積極的に実力ある選手を獲得したり、他チームが抱える高額契約を“引き受ける代わりに見返りを得る”ような複雑なトレード交渉を展開できる柔軟性を生み出す。

 特にキャップが上昇する局面では、より高年俸選手の獲得にも対応できるようになるため、チーム編成の幅が大きく広がるとの見方が現地メディアでも強まっている。

 果たしてトロントは、1年前のボストンのように見事な復活劇を演じることができるのでしょうか?それはまだ誰にも分かりません。

 しかし、トレードデッドラインという場所では、時にGMが後で後悔するような思い切った決断をすることがあります。そして、その「大きな決断」こそが、不振に苦しむチームにとって、想像もできないような大きな見返りをもたらす理由でもあるのです。🏒✨

まとめ

 トロント・メープルリーフス復活のカギは、感情に流されない「戦略的なリツール」にあります。ボビー・マクマンら低年俸の実力者を最大の武器に、指名権と若手資産を賢く積み上げることが未来への第一歩です。

 今こそブルーインズの成功例に学び、市場価値がピークの今、大胆な決断で最強のチーム再建を目指してほしい!🏒✨

讃岐猫
讃岐猫
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