NHL移籍先未決定・フリーの大物選手、果たしてどうなる?

現役スター選手紹介

 9月21日頃から、NHL各チームはトレーニング・キャンプをスタートさせます。そんな中、GMが選手の代理人に連絡を取り、コーチ陣を集めて、何やら打ち合わせ…。なんて、ニュースも聞こえてきます。

 新シーズンもNHLでプレイできることを期待する、所属チーム未定の選手達にとって、そのようなニュースは朗報かもしれません。ただ、自分の代理人との話し合いで、選手のウキウキ気分に水を刺される場合もあります。

 long-term injured reserveの問題が解決するまで待つように、と代理人に言われている選手もいれば、お試しでキャンプに参加し、身体能力を調べられたり、他の選手と競ってテストされる場合もあります。日本プロ野球のトライアウトやテスト生のようなものでしょうか。

long-term injured reserve=選手は少なくとも10試合の NHL試合とNHLシーズンの24日間を欠場した場合、長期傷害期間を補償する費用が、選手にサラリーとして支給されます。それにより厳格なサラリー・キャップを超えてしまう場合が出てきますので、シーズン・オフに精算して、その結果、フリーの選手を獲得できるかどうかがわかってくるのです。

 自分の一番望む形の契約が来るまで、ひたすら待つ選手もいれば、引退して、別な形でNHLに関わることを考えている選手もいます。

 8月、フリーの選手にとって、いろいろなチームから声をかけられるし、まだ「夢」も持てる時期ではあるのですが、9月ともなれば…。

 今回は、そんなフリーの選手の中でも大物中の大物ディフェンダー、P.K.Subbanの場合を見ていきましょう。

讃岐猫
讃岐猫

かつての大スター選手も、

移籍市場ではかなり苦戦してるようだぞ!

※本記事は、ESPN.com「2022 NHL free agency: Which players are left, and where are they going?」、NHL TRADE RUMORS「NHL Rumors: Top 3 Free-Agent Defensemen & Predictions」、NHL.com「Top remaining NHLunrestricted free agentsinclude Subban, Holtby」等を参照し、編集したものです。

サラリー・キャップ制度の影響について

 8月に所属チームを決められなかった選手にとって、9月は緊張を強いられる月となります。「エージェントからのアドバイスに、あまり耳を傾けない方がいい。とにかく欲張るな、適当な所で折り合いをつけて、プレイするチームを見つけてほしい。なぜなら、用意されていたと思っていた『椅子』は、すぐに盗まれてしまうからだ」なんて意見を言う人もいます。

 各チームに割り当てられた年俸総額が、前年度プラス100万ドルの8250万ドル(日本円で約116億円)にしか上がっていない新シーズン、「公平を期すためのサラリーキャップ」はFA市場と選手全体の給与に影響を与えました。

 あるNHL関係者の話「今年は移籍市場全般的に不幸なことが起きていて、キャップ制のせいで市場が変化した。16~17のチームが負けたいと思っていて、残りのチームが勝ちたいと思っているという奇妙な状況が起きている。

 キャップ制はある意味で負けることを奨励してきたんじゃないかな。『もし、ウチのチームがプレーオフに出ないなら、キャップ・スペースを売ることで、もっと良いことができる』と考えるチームも出てきている」

※NHLは、米国4大スポーツの中でも、かなり厳格にサラリー・キャップ制を守っています。各チームのやり繰り具合によっては、選手補強に失敗して、早々とプレイオフ進出争いから脱落するチームが出てきます。

 サラリー・キャップとは別にキャップ・スペースがあって、これはシーズン後に契約が切れる選手のサラリー合計金額のことです。シーズン終了後、どんどんキャップ・スペースを売ってしまう、つまり契約切れのベテラン選手と再契約しなければ、その分、有望若手選手獲得の軍資金が出ると、プレイオフに進出できなかったチームは考えるわけです。

 (移籍市場が)そうなると、まだ契約を求めているフリーエージェント(特にベテラン)にはほとんど手を出さないでしょう。キャンプ開始まで1カ月を切った今も、フリーエージェント市場に残っている選手はたくさんいます。その中でも超ビッグな選手、それがP.K.Subbanなのです。

P.K.Subbanの現状はどうなっているのか?

選手としての能力は?

 ニュージャージー・デビルズでのシーズンが終わり、P.K.Subbanは鼻風邪で荒れた声を出し、彼のキャリアの中で初めて無制限のフリーエージェントになることについて、今の心境をESPN.com等のメディアに話した。

複雑な心境で刺激的だよ。目を見張るほど最も驚くのは、あれから8年が過ぎたということだろう。楽しい夏になりそうだ

 記事によると、Subbanは、「2014年にモントリオール・カナディアンズと締結した8年間の契約を完了」とあります。しかし、彼はカナディアンズ→プレデターズ→デビルズと移籍していますので、記事の内容と齟齬を来しています。

※SubbanのNHL通算成績は、834試合・467ポイント(115ゴール、352アシスト)、プレーオフ96試合で62ポイント(18ゴール、44アシスト)となっています。

 名ディフェンダーSubbanの契約は複雑なので、保有権自体はカナディアンズが持っていた、ということかもしれません。昨シーズンの基本給は800万ドル(日本円で約11億2千万円)、しかし、年俸上限に反して900万ドル(日本円で約12億6千万円)を稼いでいたというのも、複雑な契約を物語っています。

 「21-22シーズン、彼の氷上でのプレイ時間は1試合平均4分近く減少しています。デビルズでは77試合出場・22ポイント(5ゴール・17アシスト)、デビルズのシーズン成績の平凡さのために見過ごされていたとしても、彼の能力はまだ見るべきものを持っています。

 とはいえ、どんなに強力な分析を行っても、Subbanを過去に引き戻すことはできないし、ノリス・トロフィー(最優秀ディフェンス選手賞)を獲得した頃の数年間に見せたような、爆発力のあるスケートを披露することもできない。

 彼はもう800万ドルのディフェンスマンではない。彼がプレーしたいと思っているなら、今の彼の能力に合ったチームを助けることができます」

 現地マスコミは、優勝を狙うチームでは無理との判断のようです。

讃岐猫
讃岐猫

かなり厳しい評価だにゃあ~

2021-2022シーズン終了までのSubbanの契約とは?

 2014年の夏、カナディアンズと2021-22シーズンまでの8年間、Subbanは7,200万ドル(日本円で約101億円)の契約を結んでいて、かなりビッグで長期契約と言えます。ESPN.comの記事は、これを言っているんだと思います。

 この契約に至る経緯を言うと(分からない部分もあるので、間違ってたらお許しください!)、2013–14シーズン終了後、契約切れの彼は制限付きフリーエージェントになりました。「制限付き」ですので、チームはまだ契約延長交渉の余地が多分にあります。

 NHL団体交渉協約(The collective bargaining agreement) によると、Subbanは18歳~20歳の間にプロとして標準的なプレーヤー契約に署名しており、その後、4年以上のプロとしての経験を積み、給与仲裁の権利を獲得していました。

 Subbanは7月5日の権利行使締め切り前に仲裁を申し立て、公聴会は8月1日に行われ、彼は1年間のサラリー850万ドル相当を要求したのに対し、カナディアンズは550万ドルを提示。公聴会後、48時間以内に交渉して、それが決裂した場合、チームは彼から手を引かねばなりません。

 翌日、Subbanは上記「8年間・7,200万ドル」の契約書にサイン。同時に、no-trade clause、つまり移籍拒否権も彼は手中に収めています。これは2016年7月1日から発効するものなので、Subbanは移籍拒否できるはずなのですが、2016年、プレデターズにトレード移籍しています。

 米国4大スポーツの移籍契約については、とても難しい所があるので、今後勉強していきます!

讃岐猫
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オイラも勉強するにゃ!

代理人のコメントは?

 彼の代理人であるDon Meehan氏は、最近Montreal Gazette(英語の日刊紙。モントリオールのあるケベック州はフランス語を話す州)で、「Subbanがまだ市場に出回っている理由の1つは、彼が厳選を重ね、チャンスを得ようとしているからだ」と語っている。

あまり攻撃的な性格だと思われないようにしながら交渉を進めていけば、それがチームのためになり、彼のためにもなります。彼はどこでプレーするかをある程度選択する特権を得ていると思う。言い換えれば、彼はどこでもプレイしたいわけではないし、彼はその程度の独立心を持っている。

 いくつかのチームからSubbanは興味を示されているが、興味を示しているチームは「他の案件に関わっているので、今は契約する立場にない」と言ってきた、ともこの代理人はコメントしています。

 2018-19シーズン以降、Subbanはプレーオフに出場しておらず、今もスタンレーカップ・リングを追いかけています。ここ3シーズン、彼は上位進出の望めない「宝くじのようなチーム」とスケートをしていて、レーダーから消えていたような存在でした。

Subban「俺の燃料タンクは空じゃない。それが俺のありのままの姿であり、俺の気持ちなんだ。このゲームから離れられるほど、まだたくさんのホッケーをしていないしな」

Subbanのリンク外での活動について

 2022年6月8日付・NHL.com記事として、「Subban of Devils wins KingClancy Trophy」が掲載されました。キング・クランシー・トロフィーとは、リンク上・リンク外において、リーダーシップの資質を最もよく発揮し、注目に値する人道貢献をした選手に毎年贈られます。

 差別のために充分な社会生活を送れない若者達やユース・ホッケーへの支援、パンデミック禍における救済活動等の活動が認められての栄誉です。2015年以来続けている、モントリオール小児病院への1000万ドル支援も特筆すべきものです。

 ベスト・ドレッサー・アスリートのトップ50にランクされるくらいの「オシャレ番長」でも有名。

 その反面、エキサイティングで強引なプレー・スタイルが私生活にも表れるのか、生意気で自己中心的な性格だとも言われています。最近、代理人が「攻撃的な性格」とコメントしたのがこれです。

 ただ、プレデターズ時代にもキング・クランシー・トロフィーにノミネートされていますし、デビルズ移籍後のプレデターズ戦で、ファンからスタンディング・オベーションを受けるなど、キャプテンシー溢れる選手であることに違いありません。

讃岐猫
讃岐猫

僕も見習わなきゃ!

マスコミの移籍先予想は?

 長文記事ではないですが、NHL TRADE RUMORSは移籍先予想を試みています。この記事はESPNの物と比べ、Subbanに好意的です。

「いろいろと評価の分かれるディフェンスのP.K.Subbanは、2022-23シーズンの契約書にまだサインしていない。いくつかのチームから関心が寄せられているようだが、ここまで具体的に取引がないのは少し意外だ。

 Subbanはかつてのような攻撃力を持ち合わせていないが、彼に適した起用法をされるならば、プレーオフに向かおうとしてるチームにとって、生産的な役割を果たすことができる。

 このオフシーズンに、Subbanは、ボストン・ブルーインズとエドモントン・オイラーズと接触しています。2021-22シーズン、22ポイントしか取れなかった状況から立ち直ることを目指しています」

予測:バッファロー・セイバーズとサイン。

※セイバーズは、イースタン・カンファレンス内アトランティック・ディヴィジョン所属のチームです。ディヴィジョンでの順位は8チーム中5位、ワイルド・カード争いにも絡めず、現状のままだと、プレイオフ進出は難しいかもしれません。

 チーム総得点232に対し、失点290で得失点差-58の数字が物語るように、守備の立て直しが急務なのは明らか。Subbanにディフェンス・ライン統率を任せるのは現実的考えでしょう。Subban一人の力で大きく建て直すのは無理としても、彼のリーダーシップと経験値の高さをチームに示せば、少しずつ守備力は上昇していくと思われます。

まとめ

 33歳とベテランの域に達していますし、ディフェンスの選手ですから歴戦の蓄積疲労もあって、肉体的に厳しい部分はあるかもしれません。

 しかし、まだまだ予断を許さないパンデミック禍の中、チームの調子が下り坂の時、(やや強引とはいえ)Subbanのリーダーシップがチームを奮い立たせてくれると思います。NHLはまだまだ彼を必要としているはずです。

 Subbanの支援に感謝している方々からも、応援の声が上がっているはずです。きっと、Subbanはそれに勇気づけられているでしょう。

 このナイス・ガイの未来に栄光あれ!

讃岐猫
讃岐猫

フレー!フレー!

今日も最後まで読んでくれて、

サンキュー、じゃあね!

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