はじめに
日本のプロ野球でよくやっている、球場に来たカップルを映し、ダンスを踊ってもらったりして、そのアピール度の大きいカップルに商品を渡す企画をご存知でしょうか。正直言って面倒くさいので、いつもその時間帯になるとつまんなそうな顔をするようにしています・笑。
さて、北米ではキスカム、あるいはキスカメラといって、カップルにキスをしてもらって、それを他の観客に冷やかしてもらう企画があります。商品が出るかどうかは知りません(^^;;。今回は、そのキスカムのクリスマス・ヴァージョンとホッケーの関係についてです。
キスカムは、もう北米のスポーツ文化の一部なんだにゃ。
引用元:ESPN.com「Hockey kiss cam inspires a holiday movie」。
キスカムってナニ?
スポーツイベントでのキス・カメラは、ぎこちなく、ロマンチックで、面白く、お祝いやお祭り的でもあります。それもあってか、その特徴を臆することなく取り入れた、ホリデー・ロマンチック・コメディというジャンルのテレビ映画を制作することになったのです。
※キスカム、キスカメラ=アメリカやカナダにおいて、スポーツイベント会場で行われる催し物。本来のイベント・試合におけるタイムアウト、CM休憩、中断時間に行われる。
キスカム用のカメラが観客の中からカップルを選び、会場の大型スクリーンに映し出し、映されたカップルは、他の観客によってはやしたてられながら、お互いキスするよう誘われる。
カップルがキスをすれば喝采を浴びるのだが、キスすることを拒否すればブーイングとなる。
「Merry Kiss Cam」について
Huluで配信されている「Merry Kiss Cam」では、アーティストのジェス(ケイティ・ロウズ)とバーテンダーのダニー(ジェシー・ブラッドフォード)が休日に会います。
※ケイティ・ロウズ=映画よりテレビを主とする女優。シーズン7まで続いた『スキャンダル 託された秘密』が代表作。
※ジェシー・ブラッドフォード=全米屈指の名門校・コロンビア大学卒。1984年、「恋におちて」でロバート・デ・ニーロの息子役で映画デビュー以来、映画・テレビを問わず、印象的な役をこなし、キャリアを積む。
彼は彼女を連れて、負け癖のついている地元の大学ホッケーチームを見に行きます。彼女はザンボニを「誰かがゴールを決めたときに鳴らす角笛」だと思っているようです(それだけホッケー初心者ってことです)。
※ザンボニ=整氷車のこと。アイスホッケーやフィギュアスケートなどの競技で使用する、リンクに張られた氷の表面を滑らかにするための特殊な車両。発明者の名前が由来。
彼らはビデオボードのキスカムに映ってしまいます。その隙に、彼女は彼に「一撃を食らわせ」ました。その直後、ホームチームが得点し、試合に勝利してしまうのです。
突然、彼らは「ラッキーリップス」カップルとして知られるようになり、町にあるスポーツの迷信のおかげで、カップルがずっとKiss Camへ参加するようになったのです。
日本でもハグやキスをする人増えたけど、
大勢の前ではちょっと…にゃ。
制作者からのコメント~ブラックホークスがきっかけ
「キスカムは、スポーツイベントで一番好きかもしれませんね、私は体育会系ではないので。ハーフタイムショーのために、スーパーボウルを見るようにね」と、夫のエヴァン・D・ワトキンスと一緒に、この映画を書いたマヤ・ブードローは言います。
※エヴァン・D・ワトキンス、マヤ・ブードロー=ワトキンスは映画制作スタッフ、ブードローは女優で、日本でも放送されたテレビドラマ『シカゴ・ファイア』等に出演。
「〈ホリデー・ロマンス〉を観ないような新しい視聴者を取り込むことができると思います」と彼女は述べました。「ホッケーを楽しむために来て、ロマンスの楽しさを味わうために滞在する。そして、それは素晴らしいことだと思います」。
ブードローとワトキンスがシカゴでデートしていた頃、作家たちはクリスマスの時期にシカゴのフォーシーズンズのバーに出かけました。ちょうどシカゴ・ブラックホークスの試合が行われていて、彼らはキスをしました。
すると、ブラックホークスは即座にゴールを決めたのです。
「私たちの後ろにいたシカゴの老人が、『もう一度キスしてくれ!お前たちは幸運そのものだ!』って言ってるようでした。そして私たちは顔を見合わせて、『これはクリスマス映画みたいだね』って感じだったわ」と彼女は言いました。
「私はシカゴ出身なので、カブス・ファンやブラックホークス・ファンのイライラぶりは間違いなく理解しています」。
制作過程での苦労
夫妻はダメ元で脚本を書き、それはブラックホークスに焦点を当てたものでしたが、しかし、NHLが関与するとなると、「ライセンスやその他もろもろで複雑になる」とワトキンスは考えていました。
NHLも、太っ腹で行って欲しかったにゃ~。
結局、ミネソタ州ダルース市を舞台にしたのは、同市の撮影に関する税制優遇措置があったからです。
※ミネソタ州ダルース市=アメリカ合衆国ミネソタ州北東部に位置する都市。五大湖のひとつ、スペリオル湖の最西端に位置する港湾都市であり、鉄鉱石の積出港として栄える。ボブ・ディランの生まれた街でもある。
なお、米国では、撮影費が地域に落とす額も相応に期待できることから、西暦2000年辺りから、米国各州が映像産業にかかる主要な税制等の優遇措置を取るようになっている。
さらに台本に手を加え、チームを「ダルース・スノーホークス」と呼ぶことにした後、ミネソタ大学ダルース校と契約を結び、NCAA男子ホッケーの大規模なファン・コミュニティーを中心に話を進めることになりました。
映画に出てくるチームは胡散臭いのですが、ミネソタ・ダルースは2021年に「フローズン・フォー」になっています。ああ、まさに映画の魔法!
※フローズン・フォー=NCAA男子アイスホッケー選手権のこと。出場校はNCAAディビジョンIに所属する16校で、シングル・エリミネーション(勝ち残り式)トーナメント方式で準々決勝(地区決勝)までは4つの地区に分かれる。
各地区の優勝校4校が4月に行われるフローズン・フォー(準決勝・優勝決定戦)でトーナメント方式により優勝校を決める。
「Twitterで〈ブルドッグスは最高だ!彼ら(ワトキンス達のこと)はクレイジーなのだろうか?〉と言っている人を見かけました。でも、少しはクリエイティブな判断が必要だ」とワトキンスは言います。
※ブルドッグス=ミネソタ大学ダルース校・男子ホッケー部のマスコットが、ブルドッグであることから、同部はブルドッグスと呼ばれる。
※ワトキンスは、おそらく強いチームより「弱くてどうしようもないチームの方が、映画的に面白い」と思っているのでしょう。
Kiss Camは公開の場なので、2人の幸運の口づけには最適な手段でした。
「2人の関係は単に2人の間のことだけでなく、大きな町との関係でもあるのです。もし、それらが幸運のお守りになるなら、そこには大きな利害関係が出てきます。
例えば、2人の関係があやふやになり始めたら、ファンが2人を盛り立てる原動力になります」とワトキンスは言います。
キス・カムへの批判と今後の展望
Kiss Camは長年、批判を浴びてきました。異性愛者のカップルに焦点を当てていることが指摘されていたのです。ニューヨーク・メッツなどのチームは、Kiss Camを反同性愛者のオチに使うという慣習をやめました。
「Merry Kiss Cam」ではゲイやノンバイナリーのファンがビデオボードに登場しますが、これはワトキンスとブードローがオリジナルの脚本に盛り込んだものです。
「私たちは、すべての人に、あらゆるタイプの人間関係や物事を表現してほしかったのです」とワトキンスは言います。
この映画は、他のKiss Camの計画と共に上映されています。たとえば、アリーナ内で見られるだけでなく、例えば、テレビ中継でも、プレーが中断されている間、ダニーのバーで、ファンが「ラッキーリップス」のカップルに見入っている様子が紹介されているのです。
しかし、ワトキンスは、もっと時代を先取りしようと思っています。「必要なのは、どこかの企業がライブCMとして、キスカメラのスポンサーになってくれればいいんです」と彼は言いました。
おーい、キスカメラが休日のロマンスを盛り上げてくれるなら、それでいいじゃないか。
上記の言葉は、ビジネス色を押し出す
ワトキンスへの皮肉なのかにゃ?
まとめ
ESPN.comとしてはキスカム自体を認めているけど、ワトキンスのビジネス臭のする発言に、やや賛同しかねている感じがします。とはいえ、暗い数年間の後ですから、もっと楽しくやろうよ!という点では、みんな気持ちは一つなはずです。
世界中が手探りながらも新型コロナ禍から立ち直ろうとしている昨今、「ラッキー・リップス」が世界中の人々に笑顔をもたらしてくれるといいですね。来年、日本にもラッキーが訪れますように。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!