ペンギンズが11位指名したベン・キンデルに各メディアが賛否

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はじめに

 2025年のNHLドラフトで、ピッツバーグ・ペンギンズが11位に指名したのは、予想外の選手ベン(ベンジャミン)・キンデル。多くの有力選手が残る中、ノーマークの選手が指名され、マスコミも驚きを隠せません。

 小柄ながら高いホッケーIQと創造力を武器に、WHLで好成績を残したキンデルには評価の声と疑問の声が入り混じります。その実力と将来性に迫ります。

参照記事:PensBurgh1What they’re saying: Penguins draft Benjamin Kindel

ESPNの評価:スコアリングマシンのキンデル⚡️

 ペンギンズは6月27日(金)の夜、全体11位でベン・キンデルを指名し、やや予想外の選択をしました。その決定を受けた各所の反応は以下の通りです。

 ジェシー・マーシャル(ESPN)のスカウティングメモは以下のようになっています。

 ペンギンズが11番目に指名したベン・キンデルはポイント・マシーンです。彼は、2024-25シーズンのWHL2ルーキーイヤーで60ポイントを記録し、今季は全体ポイント・ランキングで7位(99ポイント!1位は132ポイント!)に入りました🏒。特に5対5でのプレーが素晴らしい選手です。

 彼はミドルシックス(第2〜第3ライン)のウィングとして、攻守両面でバランス良くプレーできると期待されています。彼のモーター(プレーに対する持続的なエネルギー)は途切れることがなく、それによってスピード不足を補っており、混雑したエリアを突破してワンツーパスを容易に実行することができます。

 正確なショットと危険なパス能力を併せ持つデュアルスレット3の攻撃型選手であり、エリート級のホッケーセンスによって、相手を出し抜き、危険なエリアで時間とスペースを使って味方をうまく活かすプレーを創出します✨。また、パックを持っていないときのポジショニングにも優れています。

 ディフェンスやフォアチェックでも、キンデルは知性、予測力、努力を活かしてサイズの不利をものともせずパック争いに勝ちます。NHLで成功するには、スケーティングの姿勢やパックコントロールの改善、さらにスピードアップが求められますが、才能とハードワークを合わせ持つ彼は、セカンドラインのセンターやミドルシックスのフォワードとしての成長が期待されています。

彼がフィットする理由:

 キンデルはオフェンスの潤滑油となる存在で、卓越したプレーメイカーです。11位での指名はやや驚きでしたが、彼は高いホッケーセンスを活かしてスペースのある味方を見つけ出す能力に長けています。

 小柄ではありますが(180センチ、82キロ)、スピード、プレーメイキング能力、そして止まることのないエネルギーを持つ彼のパッケージは、NHLでも十分に通用するはずです。

 キンデルのチーム内ポジションの上限は、味方を活かしてプレーを作るセカンドラインのセンターです。もしそこに届かなくても、彼はミドルシックスでの補助的な得点源となり、第2パワープレーユニット4に加わるタイプでしょう。

 ペンギンズは、知性があり、スケーティング能力が高く、オフェンスを推進できる選手を求めており、キンデルのポテンシャルに大きな賭けをしています。

 今後2年で彼がもう1〜2インチ成長すれば、ブレイデン・ポイント(タンパベイ・ライトニング)のようなプレースタイルとの比較も現実味を帯びてきます。どちらもスケーティング、頭脳的プレー、小柄ながらゲームを動かす力を持つ選手です。

ペンギンズ関連の情報サイトが、ドラフト終了後、早速キンデルのダイジェスト映像をアップ。ちょこまかと動き回るタイプかな。

Bleacher Reportの評価:創造力と課題のはざまで🎨🤔

長所: ホッケーセンス、創造力
短所: 安定性、判断力の欠如(時折)
B/Rランキング: 20位
指名評価: B−

分析:カルガリー・ヒットメン5のフォワード、ベンジャミン・キンデルは今季65試合で100ポイントにあと一歩の99ポイントを記録しました✨。その数字だけを見ても、彼のスキルの高さは明らかです。

 ペンギンズは今回、キンデルの指名で意外性のある選択をしましたが、指名順位を無視すれば、彼を選んだこと自体を責めることはできません。

 キンデルの強みは生まれ持った高いホッケーセンスと創造力にあり🧠、その才能を開花させられるチームがあるとすれば、それはペンギンズでしょう。ただし、まだ多くの有力選手がボード上に残っていた(他にも指名すべき選手が残っていた…)のも事実です。

 純粋なスキルとポテンシャルという点では、キンデルは非常に優れています。ただし、その武器をプロの舞台で毎試合発揮できるかは、まだ未知数です。

 彼のハイレベルなホッケーIQは特筆すべき点で、自己完結的なプレーもできれば味方を活かすことも可能です。また、フィジカル面でも積極的で、パック争いやバックチェックにも取り組んでいます。ただ、現時点ではフィジカル面での強さに欠けており、シュート力の向上も求められます。

 さらに、相手を欺くテクニック(ディセプション)を加えることで、ゲームスピードに対応したプレーの幅が広がるはずです。一方で弱点もあり、時折判断の一貫性に欠けるところや決断力に関しては、今後の成長に期待したいですが、現段階ではまだ不十分に感じる場面もあります⚠️。この点は今後の課題と言えそうです。

 全体評価はB-とやや辛めですが、才能は十分にあり、これからの成長に期待がかかります🌱。

その他メディアの声:期待と懸念の入り混じる評価⚖️❓

 ペンギンズがキンデルを指名したことについて、いくつかのメディアが異なる視点からコメントしています。

 ある声では、「ペンギンズは指名順位以上に彼を高く評価している」とし、キンデルの「純粋なスキルと潜在能力は間違いなくある」と認めています⚡️。ただし、プロの舞台で毎試合その力を発揮できるかは未知数とされています。

 USA Today(評価:B−)は、「今回もまた“リーチ”(過剰評価)と言える指名で、ペンギンズが小柄な得点型選手キンデルを指名した」とやや辛口。

 「小柄でスコアリングの脅威ではあるが、まだ成長の余地がある」と指摘。さらに、「この再建寸前のチームのニーズを考えると、ミドルセンターでプレー可能なのは強み」としつつも、「才能豊富な選手が他にもいた中で、GMのカイル・デュバス6のこの指名は意外」との声もありました🤔。

 Yahoo!はキンデルを「賢く戦術的なフォワード」と評価し、スピードは速く、パス能力も高いと称賛。さらに「ブレイクアウト7時、パックを持っている相手にプレッシャーをかけミスを誘う賢さが光る」と伝えています✨

 「アイスの状況を見極める能力に優れており、相手守備のスキを突いて、味方を得点しやすい位置に導く。フィジカルが成長すれば、さらに面白い選手になる可能性がある」とも。

 The Athleticのコリー・プロンマン(評価:C、プレースタイルの比較対象: ロビー・ファブリ=アナハイム・ダックス)は「初速とトップスピードの両方を兼ね備えた優れたスケーターで、動きながら創造的にオフェンスを展開できる、WHLで最高クラスのフォワードの一人」とし、彼のスケーティング技術や得点力、クリエイティブさを高く評価。

 一方で「典型的な小柄のダイナミック選手とは異なり、努力と才能で成功を掴むタイプ」と分析。キンデルはパックがないときも熱心にプレーし、両エンドでしっかりとした努力を見せるため、将来的にはミドルシックスのウィングとして期待を寄せています🏒

讃岐猫
讃岐猫

ドラフト指名後の記者会見。前所属チームへの感謝や守備を見て欲しいと言っています。ドラフト対象選手の集まるコンバインでは、少々厳しい質問を受けたとか。

ピッツバーグがキンデルを高く評価した理由と将来展望⭐️🏒

 ペンギンズが11番目に、非常にスキルフルで知的、そして競争心の強いベン・キンデルを指名したのは、今ドラフト最大のサプライズの一つでした。

 WHLで今季最高のフォワードの一人として評価されているキンデルですが、小柄であり、サイズ面での不安もあります。そのため、「彼の身体能力がこのレベルで本当に通用するのか?本当に「特別」と呼べる才能なのか」という疑問の声も少なくありません。

 彼を高く評価している人は一部にいますが、それでもこの順位で彼を予想していた声は、私(参照記事の筆者)が知る限り存在しておらず、私自身の視察でもそこまでの印象は持てませんでした。この指名は、エリートスケーターではない小柄なウィンガーに対しては少々攻めすぎのように思えます。

 NHLのプロスペクトに将来何が起こるかは予測がつきません。その証拠として、カイル・デュバスが一昨年(2023年)に1巡目(全体14位)でブレイデン・イェーガー8を指名した際、彼はプロ契約を結んだ後、1年以内にトレードされています。

 とはいえ、この指名が示すのは、ペンギンズがプレドラフト段階で他の多くの評価よりもキンデルを高く評価していた、ということです。ペンギンズのゼネラルマネージャー、カイル・デュバスとプレイヤー・パーソネル担当副社長のウェス・クラークは、キンデルのタレント以上に「ディフェンスへの献身」と「頭脳的なプレー」に惹かれたようです。

 複数のレポートでも、彼のホッケーIQと試合感覚が称賛されており、これはデュバスとクラークが重視する資質です。彼らが好むタイプの選手は、サイズが大きくなくても、ニック・スズキ(モントリオール・カナディアンズ)やブレイデン・ポイントのように高い知性と守備力を兼ね備え、パックを追いかけながら攻撃も生み出せる右利きのセンターの選手です。

 キンデルは本来センターですが、彼のスケート力やサイズの課題からウィングにポジションを変える可能性もあります。とはいえ、WHLで99ポイントを記録した攻撃力は本物で、スキル面での成長と上のレベルでの順応次第では、高い天井(ハイシーリング)も見込め、ペンギンズにとって重要な戦力になることが期待されています。

 ドラフト時点で11番目に指名される選手としては意外でした。デュバスGMの過去の指名傾向9からすると「WHL出身のサプライズ指名があるかもしれない」と予測はしていましたが、モックドラフト10ではコール・レシュニー(カルガリー・フレームスが全体18位指名)を指名すると考えていました。結果的に、ペンギンズが本当に欲していたのはキンデルだったのです。

 ドラフト評価というものは、3年後や5年後には当初の印象とは全く異なる結果になることも珍しくありません。時間だけが、ペンギンズとこの有望な新人の未来を明らかにするでしょう👀✨。

まとめ

 キンデルの評価はメディアによって大きく分かれていますが、ペンギンズはその知性とハードワークに将来性を見出しました。サイズやスケートの課題を乗り越えられるかが、NHLでの成功を左右する鍵となりそうです。

讃岐猫
讃岐猫

【註釈】

  1. ピッツバーグ・ペンギンズ専門のファン向けメディアで、試合のレビューや選手分析、トレード情報、ポッドキャストなどを提供しているSB Nation傘下のウェブサイト。
    ↩︎
  2. ウェスタン・ホッケー・リーグ (Western Hockey League) は、カナダ西部とアメリカ北西部を拠点とする主要なジュニアアイスホッケーリーグ。カナダのジュニアホッケーの最高峰であるカナディアン・ホッケー・リーグ (CHL) を構成する3つのリーグの1つであり、NHLの選手育成リーグとしても非常に重要である。
    ↩︎
  3. パスとシュートの両方でゴールを狙える、攻撃力の高い選手を指す。パックを持った際、パスかシュートか相手ディフェンスが判断しにくいため、非常に厄介な存在となり、チームの得点機会を大きく増やす。
    ↩︎
  4. 相手のペナルティ時に人数の有利な状況で出場する攻撃陣の二番手のこと。第1ユニットとは異なる攻撃パターンや、パックキープ、セカンドチャンス創出などを得意とする選手で構成され、チームの得点機会を継続的に生み出す役割を担う。
    ↩︎
  5. WHLに所属するジュニアアイスホッケーチーム。1994年設立で、カルガリー・フレームスが所有。2度のリーグ優勝経験があり、多くのNHL選手を輩出している。WHLの観客動員記録をいくつか保持しており、2004-05シーズンにはカナダのジュニアホッケー史上初めて1試合平均1万人以上の観客動員を記録。
    ↩︎
  6. ピッツバーグ・ペンギンズのGM兼ホッケー運営部門プレジデント。2018年にトロント・メープルリーフスGMに就任し、若くしてNHLの主要チームのGMとなったことで話題に。分析的なアプローチや、若手選手の育成、チームの再建に力を入れたことで評価されていたが、チームはプレーオフで勝てず、その責任を問われ解雇。

     2023年6月にペンギンズのホッケー運営部門プレジデントに就任し、その後GMも兼任することになった。データ分析を重視する手法が、今回のキンデル指名に結びついたのだろうか。
    ↩︎
  7. 自陣でパックを奪い、相手のプレッシャーをかわしながら効果的にニュートラルゾーンや相手陣へ運び出し、攻撃へと転じる一連のプレー。チームの連携と判断力が成功の鍵となる。
    ↩︎
  8. 2024年7月にピッツバーグ・ペンギンズと初のプロ契約を結んだが、翌月にウィニペグ・ジェッツ、同年12月にはWHLのレスブリッジ・ハリケーンズにトレードされた。WHL5シーズンで130ゴール近く記録しており、潜在能力の高さを示している。
    ↩︎
  9. 過去のNHLドラフトにおいてスキル重視のフォワードや右利きの攻撃的ディフェンスを好む傾向があり、小柄ながら高い技術を持つ選手を上位で指名することが多い。出身リーグはWHLやフィンランドを中心に、欧州からの選手にも注目しており、ゴールテンダーの指名は控えめ。

     また、単一の高順位指名よりも、トレードダウンによって中位指名枠を増やす戦略を多用することでも知られている。
    ↩︎
  10. スポーツリーグのドラフト会議前に、どのチームがどの選手を指名するかを予想する模擬ドラフトのこと。ドラフト前の情報整理や議論、チーム戦略の考察に役立つ。 ↩︎
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