NHL.comのオフシーズン企画、Q&A特集「SittingDown with…」は各チームの現状について、チーム関係者の生の声が聞けて(読めて)、とても面白いです。
今回は、ダラス・スターズGMジム・ニル氏の登場です!スターズが新シーズンを迎えるにあたって、ニル氏は現時点での編成を気に入っているようです。
ジェイソン・ロバートソン、ルペ・ヒンツ、ミロ・ヘイスカネン、ジェイク・オッティンガーといった才能ある若手選手達も豊富な上に、フォワードのジョー・パヴェルスキ、タイラー・セグインとジェイミー・ベンらベテランもコア・メンバーに含まれています。
ニル氏「我々は選手の移籍や契約交渉を続けているが、現在、我々はかなり強力なコアになるメンバーを持っています」
NHL.com「あなたはいつも、選手がどう進んで行くのか予測を立てていますね。今、所属している選手達はそれを実行に移さなければならない。誰がチャンスをつかむのか、見てみましょう。それはエキサイティングです!」
このブログで初めて選手以外、スタッフにスポットを当てた記事になります。どうなりますやら、じっくりとお読みください!
※本記事は、NHL.com「Nill talks Stars transition in Q&A with NHL.com」等を参照し、編集したものです。
リンクを見てもらえば分かるけど、
ニルさんは白いヒゲの印象的な紳士だよ。
昨シーズン、若手選手達の成績は?
「ロバートソン、ヒンツとオッティンガーが、昨シーズン、重要なプレーヤーとして浮上してきたことに励まされている」とニル氏は述べています。
- ロバートソン(23歳)はNHLキャリアハイのゴール(41)とポイント(79)を記録。
- ヒンツ(25歳)もNHLキャリアハイのゴール(37)とポイント(72)を記録。
- オッティンガー(23歳)は48試合(46先発)で30勝15敗、平均失点2.53、防御率.914 を記録。
しかし、チームはまだロバートソンとオッティンガーと正式に契約サインする必要があります。それぞれが制限付きフリーエージェント選手だからです。
※制限付きFAは「restricted free agent」のことを指し、対象選手は基本的にどのチームとでも契約に合意できます、ここは日本プロ野球のFAと大して変わりません。
違うのは、前所属チームが「優先権」を使う場合で、交渉によって選手をチームに残留させることができます。「優先権」については別の機会に譲りますが、おそらくロバートソン達に相当数のオファーが届いているのは間違いありません。
ニル氏は、それらの交渉がスムーズに行われると確信しています。
「我々は対話と交渉を続けているよ。物事は正しい方向に進んでいますが、他の交渉と同様に、時間がかかるんだ。今、期限を決めずに交渉を進めている。我々は両選手と契約するつもりだ、今日の交渉は、契約に向けてのプロセスの一部だ」
ニル氏の粘りが勝つのでしょうか、それとも…。
「時間がかかる」「期限を決めずに」ってのが、
気になるなぁ…。
新シーズン、若手の成長に期待!
新シーズン、ニル氏は、スターズの若手選手による「次の波」が、NHLの壁を突破できるかどうかを確認したいようです。
「既にトップチームでプレーしたフォワードのタイ・デランドレアとフレドリック・カールストローム、新シーズンに出場機会を獲得できそうなワイアット・ジョンストン、ローガン・スタンコベン、マヴリック・バーク、そのうちの2人か4人は本当にここで素晴らしい機会があるんじゃないかな。
私はいつも彼らに敬意を表したい。NHLはトップ・リーグであり、そこでプレーすることは大きな飛躍なのですが、今、名前を挙げた選手の中には既にNHLのドアをノックしている人もいる。
ここ数年、NHLで見てきたように、これらの非常に若い選手達の中には「ビート(ドアのノック音?)」を聴き逃さない人もいるようで、今、名前を挙げた選手達がそういう選手であることを願ってる。
彼らがどのような状態にあるのか、どのようにリーグに適応していくのか、それを見てみたい。だから、それはある意味、私と彼らの関係にとってエキサイティングなことなんだ」
名前が挙がった選手の中で、タイ・デランドレア(Ty Dellandrea)は22歳で、ポジションはセンターです。昨シーズンはAHL(アメリカン・ホッケー・リーグ)のテキサス・スターズを主戦場としていましたが、一昨シーズンはNHLで26試合出場しています。
ワイアット・ジョンストン(Wyatt Johnston)は19歳で、彼もポジションはセンターです。現在、ジュニア・クラスの選手で、OHL(オンタリオ・ホッケー・リーグ)のウィンザー・スピットファイアに所属しています。
ジュニアでありながらスピットファイアの中心選手で、レギュラー・シーズン68試合出場で46ゴール・78アシストの124ポイントは、リーグの中でも特筆すべき数字です。プレイオフでも25試合出場・41ポイントを記録するなど、八面六臂の大活躍。
デボアの、どういった点がダラスの監督にふさわしいと思ったのですか?
ニル氏「いろいろなことがあります。彼は経験豊富なコーチであり、リーグで多くの成功を収めてきました。自分が仕事を始めた頃、幸運にも彼がデトロイト時代にプリムスでコーチをしているのを見ていました。彼がコーチとして成長するのを目の当たりにしてきたのです。
彼は、今のNHLコーチとして素晴らしい姿勢を持っている人です。タフな仕事で、本当にバランスを取るのが大変なのですが、彼は毅然とした態度で臨みながらも、人それぞれ違う対応をしなければならないことを理解しています。
そんな素晴らしい態度を持っているからこそ、彼はうまくコーチングをこなせるのです」
※「デボア新監督」ことピーター・デボア(Peter DeBoer)は、2008‐09シーズンを皮切りに、毎年NHLのどこかのチームで監督をしている名将です。ダラス・スターズが5チーム目。
最初の監督チーム=フロリダ・パンサーズ以外のチームは、すべてスタンレー・カップの決勝あるいは準決勝進出まで導いており、その手腕は高く評価されています。年齢も54歳、脂の乗り切った監督さんと言うべきでしょう。
「プリマス」とは、OHLのプリマス・ホエラーズのことで、前身チームであるデトロイト・ホエラーズ時代の1995年からデボアは監督を務めています。
スターズはプレイオフまでは順調に行くんだけど、
その上となると、なかなか勝ち進めないんだ。
新監督がどうチームを引き上げていくか。
デボアは「ヘイスカーネンはもう一つのギアに達することができる」と言いました。それはどんなギアですか?
ニル氏「彼(ヘイスカーネン)はもっとオフェンシブなプレーができると思っている。スタンレーカップのプレイオフのカルガリー戦で、それを実感しました。第7戦の延長戦では、3、4回のチャンスをモノにしたからね。
彼はもう一段階上のレベルに達しており、それが彼らしいところでもあるんだ。彼は、より多くのものを与えられれば与えられるほど、より多くを吸収し、こちらの期待通りの活躍をしてくれる。
彼はもうNHLに4シーズン在籍している。今じゃすっかりリーグにも慣れ、リーグにおける自分のプレーのレベルも理解してるし、時に彼がまだ23歳であることを忘れてしまうほどさ。
通常、23歳くらいの選手は次のステップに進み始める時期で、彼は今その時期にいるんだよ」
※スターズはワイルド・カード第1位でプレイオフに進出しました。1回戦の相手は、ウェスタン・カンファレンスのパシフィック・ディヴィジョン第1位カルガリー・フレームス。3勝3敗のタイで迎えた第7戦、3−2で惜しくも敗退…。
ミロ・ヘイスカーネンはフィンランド出身のディフェンダーです。2017年のドラフトで1巡目3位指名され、期待の即戦力としてスターズに入団。18ー19シーズン、いきなり82試合に出場し、不動のレギュラーとなりました。上記のプレイオフ7試合全てに出場し、1ゴール・2アシストを決めています。
昨シーズン、ロバートソンとオッティンガーはどれだけ重要な役割を果たし、氷の上でも外でもリーダーとして活躍できると証明したのでしょうか?
ニル氏「2人が役割を果たしているのを見てると楽しいんだ。私たちはゆっくりと段階を踏んできました。(2人は)ドラフトで指名され、このチームで育成され、そして今、チーム内で確固たるポジションを掴み始めているのです。
NHLのサラリーキャップ制度や契約のあり方などの影響もあって、今日の環境では、自前で育成された選手を、多くトップチームに迎えることがとても重要です。あの2人は、その方法で来てくれました。
他にもヒンツ、ハイスカネン、トーマス・ハーディなど、若い選手が育ってきてくれることが必要です。我々独自の育成過程の中で、彼らはちょうどいいタイミングでトップチームに入ってきたし、そのおかげで、これからも挑戦者であり続けることができると思っている」
※ジェイソン・ロバートソン(Jason Robertson)は23歳のレフト・ウィンガー。愛称は「ロボ」。NHLでのキャリアは3年足らずですが、スターズ史上初の連続ゲームでハットトリックを記録したり、試合開始から68秒で得点したりと、その得点感覚には見るべきものがあります。
21-22シーズンのプレイオフでは、不調から第5戦でスタメン落ちしたりと悔しい思いをしており、その鬱憤を晴らしたいところだが、現在、スターズとの来季契約交渉中。
ロバートソンは、来季どこのユニを身にまとっているか…。
ニル氏も相当気を揉んでるだろうなぁ。
オッティンガーは昨シーズン、予想外の48試合に出場しました。今季は開幕からゴールキーパーとして、チームをまとめる準備はできているのでしょうか?
ニル氏「昨年は、彼(オッティンガー)にとって成長するための素晴らしいシーズンでした。予定より早めに我々はトップチームに彼を送り出した。私たちの最大の懸念は、前年のシーズン、彼がタクシー・スクアッド・バブル・イヤーにプレーし、練習時間も少なく、プレイヤーとしての体力も育ってなく、試合数も少なかった(29試合)ことでした」
※タクシー・スクアッド・バブル・イヤー=「タクシー・スクアッド」とは新型コロナウイルスによる欠員を埋める選手のことです。「バブル」とはパンデミック下で隔離された場所のことを指し、20-21シーズンは、規制のかけられた場所で試合やミーティング、宿泊等せざるを得なかったのです。
「私たちは、とても育成を重視していました。彼がアメリカン・ホッケー・リーグ(AHL)に行き、試合に出ることが重要だと考えていましたし(10試合)、彼は素晴らしい働きをしてくれました。誰もがNHLに入りたがるものですが、自分にとってベストなことは、AHLでプレイすることかもしれないと彼は理解し、それを活用したのです。
その後、何人かのケガ人が出たのですが、彼は決して離脱しませんでした。プレーオフ進出にも貢献し、プレーオフでの彼の活躍は見ての通りです(7試合で失点率1.81、防御率.954)。我々が前進していく上で、彼は大きな役割を担っているのです」
※ニル氏のインタビューに再三出てくるジェイク・オッティンガーは、23歳のゴールキーパー。米国ホッケー代表チーム開発プログラムに参加した後、ボストン大学でプレーし、2017年ドラフトで、1巡目総合第26位の指名を受けました。
パンデミック下の20-21シーズンから NHLとAHL掛け持ちで実戦経験を積み、21-22シーズンも、当初AHLでプレーしていたが、急遽トップ・チームに呼び戻され、そのまま定着しました。
このインタビューの行われた8月中、チームとの契約は交渉中で不透明でしたが、9月1日、3年間・1200万ドル契約(日本円で約16億8千万円)を結びました。
これでGMもひと安心だね。
昨シーズン、ベンとセギンの数字が落ちました(ベン46点、セギン49点)、今シーズンの彼らに何を求めますか?
ニル氏「成績の落ちたことは、周囲も本人達もよく分かっている。攻撃面でもっとチームに与えるものがあることを、彼らは知っています。
ジェイミー(・ベン)は、チームにたくさん他の要素ももたらしてくれるので、昨年の不振が忘れられてしまうこともあります。彼は肉体的に強い存在であり、チームのリーダーであり、その価値がある男ですよ。
タイラー(・セギン)の場合、彼が経験したケガのことを忘れてしまうくらいです。過去3シーズン、いろんなことが次から次へと起きて、まさに「凝縮されたシーズン」でした。回復のためのダウンタイム(施術後、通常の生活に戻る期間)を取れなかったくらいです。彼の経験した股関節や膝の手術は、多くの場合、乗り越えるために1年間の休養が必要なのに、彼は、それすらできなかった。
この夏、彼と話したところでは、とても気分がいいそうだ。彼は復帰して、自分がまだエリート・スコアラーの一人であることを示したいと思っていますし、ジェイミーも同じような状態です。
この2人が思うような活躍をしてくれれば、チーム力はさらに上がり、次のレベルに到達することができる筈です」
※ジェイミー・ベンは、カナダ出身の33歳、レフト・ウィングの選手です。2009年、世界ジュニア選手権カナダ代表で金メダル、2014年、ソチ冬季五輪でも金メダルを獲得しています。
インタビュアーは成績不振を指摘していますが、21-22シーズンはむしろ前の2シーズンより数値を上げており、19-20シーズンに至っては、スタンレーカップ決勝にチームを導く活躍をしています。14-15シーズン、多くの賞を獲得した頃と比べると、精彩を欠いたプレーがあったということでしょうか。
タイラー・セギンは、カナダ出身の30歳、センターの選手です。彼は副キャプテンを任されています。2010年のドラフト1巡目総合2位で指名され(ボストン・ブルーインズ)、2013年、スターズへトレード。一気に才能が開花し、70〜80ポイントを常に叩き出す選手へと成長します。
ここ2シーズンは確かに成績も下降気味な上に、インタビュー中にもある故障による手術の影響が大きかったようです。しかも、パンデミックのため、手術時期を遅らせたことが大きな痛手となりました。
ゴールキーパーのアントン・クドビンは、3月に右股関節の関節鏡検査と臼蓋修復術を受けています。彼の調子はどうですか?
ニル氏「ドビーは元気だよ。彼はダラスに戻ってきて数週間になるかな、リハビリを続けられるように早めに戻したんだ。彼の体調はよく、キャンプが近づくにつれ、彼の状態がより正確にわかるだろう。キャンプには間に合いそうだが、引き続き様子を注視しなければならない」
キャンプで再びベテラン選手と競い合うことは、オッティンガーの成長にとって、どれほどの助けになるのだろうか?
ニル氏「競争は誰にとってもいいことだ。スコット・ウェッジウッドは素晴らしい仕事をしてくれたし、クドビンは怪我明けで、彼が健康になることを期待している。
アイスホッケーの試合では、いろいろなことが突然に起こる。しかし、ゴールを守るという点で、チームは良い状態にあると思うし、多くの異なる選択肢を持っていると言っていいんじゃないかな」
※グドビンは36歳の大ベテラン、ウェッジウッドは30歳で、昨シーズンがダラス移籍1年目でした。2人はそれぞれ9試合、8試合しか出場しておらず、第2キーパーは、こちらも移籍1年目、ブレイデン・ホルトビーが務めていました。
故障の回復状況次第では、グドビンの正キーパー返り咲きもあるでしょうが、年齢的に若い上に、契約更新で気分のいいオッティンガーがグッと成長曲線を上昇させるかもしれませんね。GMの選択肢一番手は、正GKオッティンガー、サブGKグドビンだと思います。
まとめ
まだ移籍市場は活発に動いているので、大物GK獲得があるかもしれませんが、新シーズン、スターズのゴールキーパーは若手中心で行くようです。控えのキーパーも人材が揃っていますからね。
GMの言葉からは、数名の若手選手による「次の波」を期待しているのが分かります。自前の下部組織で試合経験を積ませて、どんどんトップ・チームに上げていく方法論が確立しているから、これができるのです。
ただ、長らく攻撃の核となってきた選手が、故障で離脱しているのが気がかり。昨年活躍した若手選手の中で、まだFA→残留にサインしていない選手がいますし…。交渉が決裂すると、オフェンスがかなり苦しいのでは?
とはいえ、昨シーズン、若手主体のメンバーでもプレイオフ進出を果たしており、地力のあるチームには違いありません。GMから信頼の厚い新監督の手綱さばきに注目です!
故障者が万全の状態で帰ってきたら、
相当上の順位に行きそうなチームだね。
若手とベテランの融合も楽しみだ!
サンキュー、じゃあね!