はじめに
ブラッド・マーシャンが、ついにボストンへ帰ってきた――😊。16シーズンを過ごしたブルーインズを離れ、今はフロリダ・パンサーズの一員として氷上に立つ彼。
しかし、TDガーデンのスクリーンに映った家族の姿と、止まない「マーシー!」の歓声は、彼の心に深く刻まれていました。
涙と笑顔が交錯した一夜、その“特別な帰還”を振り返ります。✨
参照記事:NHL公式サイト「Marchand’s return to face Bruins hits home」
🏒涙の再会:ブラッド・マーシャン、ボストンに帰る
TDガーデンの大型スクリーンに映し出されたトリビュート映像が始まって40秒ほど。その瞬間、ブラッド・マーシャンの表情がゆっくりと崩れていき、彼の胸に何か押し寄せてくるのがわかりました。
スコアボードに映し出される自分のキャリアの瞬間を見つめながら――ゴール、乱闘、ハロウィンの仮装で訪れた子ども病院でのシーン、チームメイトとの歓喜の時間――が流れていましたが、彼の心を打ったのはそこではありません。
画面に映ったのは、彼の小さな娘・ソーヤーの姿。小さなボストン・ブルーインズのユニフォームを着て、抱き上げられた彼女が、TDガーデンのガラス越しに手を伸ばし、父に触れようとしていました😊。
その一瞬が、涙をこらえる努力を無駄にし、マーシャンの感情の堤防を決壊させたのです。彼は何度も胸に手を当て、顔をくしゃりと歪めさせ、涙をあふれさせました。
「NHLで最恐の男」「アイツはクレイジーだ」と言われ続けた漢の熱い涙…。
ここで過ごした日々、ファンの歓声、自分の背番号63を着て応援してくれた人々――すべての思い出が一気によみがえり、彼を包み込んだのでしょう🔶。支えられ、受け入れられ、多くの人々が彼を見守り、愛してきました。そう、彼らは確かに彼を愛していたのです。そして今も。
マーシャンもまた、彼らを愛しています。
「泣かないようにしようとしてたんだ👇それだけを意識してた。でも、スクリーンに子どもたちが映った瞬間、まるで重いレンガの塊をぶつけられたようにこみ上げてきた。思い出と感情、長い年月と信じられないほど素晴らしい時間が一気にあふれ返ってきたんだ😊」。
そう語った彼の瞳には、長い年月の重みと感謝があふれていました。
💛ホームに戻った夜
マーシャンがTDガーデンへ戻ってきたのは、火曜日の夜。彼にとって、ここ数日も数週間も、それはずっと心の奥にしまっていた瞬間でした。考えたくない、想像したくない――そんな思いを抱えたまま、その日を迎えたのです。
数日前の日曜の夜、彼は仲間たちと夕食に出かけました。
自分のキャリアを築くうえで欠かせなかった仲間たち――パトリス・ベルジュロン、ズデノ・チャラ、トゥオッカ・ラスク、アダム・マクウェイド😊。一緒に遠征を重ね、ロッカールームを共にし、家族が増える瞬間やスタンレーカップの瞬間を分かち合った大切な仲間たちです😊。
ここが、彼の「ホーム」でした。
そして、3月7日にフロリダ・パンサーズへトレードされた後1も、その気持ちは変わっていません。昨シーズン、黒と金の代わりに赤のユニフォームを着てスタンレーカップを掲げたとしても。これから6シーズン、フロリダでプレーを続けるとしても。
それでも、ボストンは彼が人生と伝説を築いた特別な場所2なのです🔶。
その夜、マーシャンは古巣を相手に2アシストを記録し、パンサーズの4–3の勝利に貢献しました。これで通算ポイントは988に到達しました。うち976ポイント(422ゴール、554アシスト)は、16シーズン・1090試合をブルーインズで積み上げた数字です。
ここで彼は、ホッケー選手としてのすべてを手にし、「ブラッド・マーシャン」という存在になりました。良いことも悪いことも、すべて含めて。つまずきながらも立ち上がり、仲間と絆を深め、ゴールを重ね――そして、自分が夢にも思わなかったほどのホッケー選手像を築いたのです。
火曜日の夜、ファンから称えられたのはまさにその男でした。ベルジュロンのような完璧さも、チャラのような圧倒的な存在感もない。しかし、彼の「人間らしさ」――失敗し、立ち直り、それでも戦い続ける姿こそが、多くのファンに深く愛された理由でした😊。
若い頃のマーシャンは、良く言えば「やんちゃ坊主」、悪く言えば「氷上でトラブルを起こさない日がないくらいの悪漢」。でも、何だか憎めないのが彼の魅力なのかもしれない。
👏別れの拍手、そして心の中のボストン
マーシャンは、できるだけその瞬間を考えないようにしていました。目の前の試合に集中しようと努めていました。しかし、第1ピリオドの9分21秒。テレビタイムアウト3の合図とともに、マーシャンの顔がビデオボードに映し出されました🔶。
その瞬間、TDガーデンの観客が一斉に立ち上がり、約3分間も拍手が鳴り響きました👏。映像が流れている間も、プレーが再開してからも、ずっとスタンディングオベーションの歓声は止みません😊。
「マーシー!マーシー!」4というチャントがアリーナを包みました。彼にとって、それは想像をはるかに超える光景でした。「こんなにも愛されるなんて、思ってもみなかった。ずっと、本当に本当に彼らを愛してきたんだ」。そう言葉にした彼の目には涙が光っていました。
娘ソーヤーの映像が流れると、胸に手を当て、何度も観客に手を振り、再び胸に戻す――その姿がスクリーンに映りました。
「あの映像を見た瞬間、すべての思いが戻ってきた。このチームでプレーできた誇り、今も持っているその誇り、そしてこのチームの一員でいられたことへの感謝を、もう抑えきれなかった。本当に大きな意味を持っていたよ」。
それは、彼からの愛の表現であり、ファンからの愛への感謝でもありました。彼からの「ありがとう」であり、ファンからの「おかえり」でもあったのです。
🔶心の中の「ホーム」💛
そして同時に、ひとつの区切り、静かな「さよなら」でもあったのです。
「そういう意味でも、とても良い時間だった。戻ってくることには、いろんな感情がついて回るからね。みんなにとっても、自分にとっても、新しいページをめくるきっかけになったと思う。彼らも新しい道に進む。僕だけじゃない。ホッケーの世界ってそういうものなんだ。誰にでも“その時”が来て、やがて終わりが訪れる」。
ウォームアップでビジター用のトンネルからリンクに出た瞬間から、観客の歓声は鳴りやみませんでした。ここで育った彼にとって、その通路は最も“見慣れない場所”だったかもしれません。 スタメン発表のときも、アシストを記録したときも、観客は熱狂しました。
アリーナのあちこちで、何百、いや何千もの「63番」のユニフォームが揺れていました。彼をルーキー時代5から見守ってきた人々が、チャンピオンとなり、キャプテンとなり、そして殿堂入り候補6にまで成長した姿を称えるために、今も変わらず声援を送り続けていました。
「ここでプレーするのは大好きだった。この街は努力を大事にするし、僕もこのユニフォームを誇りに思ってた。ファンは本当に特別だよ。最高の人たちだ✨」。
試合後、ESPNのベンチインタビューでパンサーズのポール・モーリス監督はこう言いました。「彼はいつまでも、心の中では“ブルーイン”なんだ7」。マーシャンは、この言葉にマーシャンは複雑な思いを抱き、少しだけ言葉を詰まらせました。
今のチーム――スタンレーカップを共に勝ち取ったパンサーズ――への敬意を欠くように聞こえてしまうかもしれないからです。それでも、15年を過ごしたボストンは、人生の一部であることに変わりはなく、彼にとってかけがえのない場所でした。
「僕は今のチームに心から感謝している。でも、ここに来てまだ7か月、ボストンでは15年を過ごしたんだ。夢を抱いた少年が、家族を持ち、男として生きてきた街。一人の男として人生を築いた街――それがボストンなんだ。だから、いつまでも僕の心の中にある。ここは特別な場所だよ。」
マーシャンにとってのボストンは、ただのチームではなく、人生そのものでした。そしてその夜、TDガーデンのファンは、彼のその思いを確かに受け取ったのです。✨
まとめ
マーシャンにとってボストンは、ただの古巣ではなく人生の一部でした。トリビュート映像に映る家族の姿や、長年応援してくれたファンの声援は、彼の心に深く響きました😊。
スタンリーカップを手にした今も、ブルーインズでの16シーズンと築いた絆は色あせません。 涙と感謝の夜は、彼自身にとってもファンにとっても、特別でかけがえのない時間となったのです。

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- マーシャンは、2025年3月7日にボストン・ブルーインズからフロリダ・パンサーズへトレードされた。このトレードは、ブルーインズがマーシャンとの契約延長交渉で合意に至らなかったため、期限ギリギリでの決断となった。
トレードの対価として、ブルーインズは条件付きの2027年2巡目指名権を受け取り、パンサーズはマーシャンの契約の50%を負担する形となっている。
その後、マーシャンはパンサーズで活躍し、2025年6月30日に6年総額3,150万ドル(年平均525万ドル)の契約延長に合意。この契約は、マーシャンが43歳となる2031年まで。契約の構造は、マーシャンが37歳での契約延長であるため、将来的な引退を見据えた調整が施されている。フロリダ州の税制上のメリットも、契約延長の要因として挙げられている。
↩︎ - ブルーインズ時代、マーシャンはパトリス・ベルジュロン、ズデノ・チャラ、トゥオッカ・ラスク、アダム・マクウェイドと共に数々の偉業を成し遂げた。2011年のスタンレーカップ制覇では、ルーキーとして11ゴールを記録し、チームの優勝に貢献。
その後も2013年と2019年のファイナル進出を果たし、特に2019年のプレーオフでは24試合で23ポイントを挙げ、チームの攻撃を牽引した。また、2024年には通算1,000試合出場を達成し、ブルーインズ史上8人目の偉業となる。
さらに、2024年には通算400ゴールを達成し、ブルーインズ史上5人目。これらの記録は、彼がブルーインズのレジェンドであることを証明している。
↩︎ - NHLの「TVタイムアウト」は、試合中に放送用のコマーシャルを挿入するために設けられた、約2分間の公式な中断時間。各ピリオドで、6分、10分、14分のタイミングで、両チームが同じ人数でプレーしている場合に発生。
ただし、ゴール後、アイシング、パワープレー中、試合終了間際の30秒間、または前回のコマーシャルから1分以内のタイミングでは発生しない。また、ゴールキーパーによるプレー中断やネットの外れなど、特定の状況でも発生しない場合がある。
これらのタイムアウトは、試合の進行に影響を与えることなく、放送局がコマーシャルを挿入するために利用される。そのため、試合の流れを保ちながら、視聴者に広告を届ける重要な役割を果たしている。
また、特別な試合や実験的なルールが適用される場合、タイムアウトのタイミングや長さが変更されることもある。例えば、2025年の「4 Nations Face-Off」では、各ピリオドのタイムアウトが30秒延長される実験が行われた。
↩︎ - 彼の活躍を称える象徴的なフレーズとして、ファンの間で知られている。このチャントは、試合中にマーシャンが得点やアシストを記録した際や、特に印象的なプレーを見せた時にスタンドから自然発生的に湧き上がり、彼の存在感を際立たせていた。
また、試合前のウォームアップ時や試合終了後の挨拶時にも、観客席から「マーシャン!」と呼びかける声が上がり、彼への愛情と敬意を示していた。
↩︎ - マーシャンは 2006 年のドラフトで Boston Bruins に第3ラウンド(全体 71 位)で指名され、2009-10 シーズンに NHL デビュー。 このデビュー年には20試合に出場し、1アシストという控えめなスタートにとどまった。
しかし、続く 2010-11 シーズンに「ルーキーパフォーマンス」として飛躍を遂げ、77試合で21ゴール20アシストの計41ポイント、加えて+25というプラス評価をマーク。
そのプレーオフでは、5 試合目に自身初のプレーオフゴールを決め、さらに第7戦でも得点・アシストを記録し、チームのスタンリー・カップ優勝に大きく貢献した。
身体的には小柄ながら(身長 5′9″=約175 cm)、「ペスト」(敵をかき回す選手)というあだ名が示すように激しいプレースタイルで相手を揺さぶり、ブルーインズの黄金時代の一角を担う存在へと成長。
↩︎ - マーシャンが殿堂入り候補とされるのは、数字と称賛に裏打ちされたキャリアの厚みとともに、氷上での影響力の広さにある。定評ある専門家も「彼は間違いなく殿堂入りするだろう」と主張しており、長年にわたる安定した得点力、王者となった実績、そして“かき乱すプレーヤー(agitator)”という特殊な役割まで兼ね備えていたと評価。
具体的には、1,000ポイントの大台に近づいていることや、プレーオフで数々のクラッチゴールを決めてきたことが大きな要素である。2025年のプレーオフでは、ファイナルで4試合に得点を挙げ、シリーズ通算で20ポイントを記録。
ただし、「チャラくない(クリーンな)キャリアの持ち主か」という評価では議論がある。戦術的“かき乱し”を厭わないプレースタイルや、過去の懲戒歴が「賛美の対象か否か」を左右する材料にもなっている。
総じて、マーシャンの殿堂入りは「条件をそろえれば避けられない」という論調が強まっており、彼の名はまもなくHockey Hall of Fameで語られる可能性が非常に高いと見られている。
↩︎ - Paul Maurice監督の「He’ll always be a Bruin at heart.(彼はいつまでも“ブルーイン”なんだ)」という言葉には、さまざまな反響があった。
まず、彼の発言はメディアやファンから「温かくも複雑な感情が入り混じった評価だ」と受け止められた。 この言葉は、Brad Marchandが長年所属した Boston Bruins で築いたキャリアと、そのファンとの絆を称えるものとして歓迎されたが、同時に彼が現在所属する Florida Panthers への敬意をどう保つかという観点から「新チームにとって微妙な言い回しでは」とも指摘された。
ファンの反応としては、ブルーインズ時代の63番ユニフォームをまとった観衆の姿が証明するように、ボストンでのマーシャンの功績に対する感謝が圧倒的。 一方で、試合中にマーシャンが反則を取った際には地元ファンからブーイングが起きたことも伝えられており、彼が「敵」として訪れた初戦においても、その存在感は揺るがなかったことが語られている。
つまり、Maurice監督の発言は、マーシャンの“過去”と“現在”を一言で表現したものであり、ファン・メディア双方にとって「愛と敬意」の象徴であると同時に、「別れと新章」というストーリーを孕んだ複雑なものでもあったと言える。
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