オフシーズンのために、NHLの4チーム、キャップスペースをどう使う?

NHLチーム紹介

はじめに 

 第7戦までもつれ込む大熱戦の末、フロリダ「アリアナ」パンサーズが見事カップを頭上に掲げました。そして、長いレギュラー・シーズンとプレーオフを終え、健闘した選手を称える各賞も授与され、やれやれ、やっと一息かな…と選手に思わせないのが、NHLなのです。 

 各チーム、シーズンの反省を込めて戦力分析を行い、10月開幕の新シーズンに向けて、非情なまでの戦力整備作業に入ります。当然、それを外野で注視している各マスコミも、記事ネタ探しに没頭しながら、あれやこれやと来シーズン予測記事を書き立てていくのが通例です。 

 今回はその中でも辛口で、的を得た記事をアップするESPNの予測を取り上げます。いつもなら、贔屓チームのフライヤーズやコヨーテズ(現ユタ・ホッケークラブ)を出すのですが、今回はカップ戦「ベスト4」に名を連ねたチーム達に焦点を当ててみました。 

讃岐猫
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引用元:ESPN.com「Offseason keys for NHL teams, including draft, free agency

23-24シーズンを振り返ろう!

 2023-24 NHLのレギュラーシーズンは、プレーオフの順位、ポイントとゴールのリーダー、主要なトロフィーをめぐるレースが最後まで続く、面白いシーズンでした。

 しかし、すべてのファンがすべてを楽しめるわけではありません。

 ポストシーズンが終わり、オフシーズンに目を向ける時が来ました。今シーズン、あまり結果を残せなかったクラブは、2024-25シーズンの競争力を高めるために、ドラフト、フリーエージェント、トレードを利用することになるでしょう。

 敗退した各チームで何がうまくいかなかったのか、このオフシーズンの最大の鍵となるものは何か、そして来シーズンへの現実的な期待についてご紹介します。

 なお、この記事には、(レギュラー・シーズン及びプレーオフから)敗退したチームが追加されていくことに注意してください。

チャンピオンの悩みは無制限FA選手か

スタンレーカップ決勝

6月24日:フロリダ・パンサーズ

予測2024-25キャップ・スペース:20,666,666ドル(約33億2千万円)

2024ドラフト・ピック:3巡目、5、5(PHI=フィラデルフィア・フライヤーズから指名権獲得)、6

何がうまくいったのか?

 フロリダは、昨シーズンのスタンレーカップ準優勝から、今シーズンのスタンレーカップ優勝者になるという極めてまれな偉業を成し遂げました。そして、パンサーズはそれを(ほとんど)簡単にやってのけたのです。

 フロリダはあらゆる面で全力を尽くして、カップ決勝に臨みました-パンサーズのディフェンスは相手を息苦しくさせ、オフェンスの厚みは桁外れで、セルゲイ・ボブロフスキーのゴールキーピングは目を見張るものがあり、スペシャルチームは安定した力を発揮しました。

 フロリダはポストシーズンで対戦したすべての相手を理解していて、その「正体(弱点)」を暴く能力に長けていたのです。パンサーズは、真に完成度の高いチームとはどのようなものかを繰り返し示し、その過程でチャンピオンシップをもたらしました。

 さて、カップ決勝でエドモントンに3勝0敗のリードを奪ったのは、フロリダの最高の仕事を反映していたのでしょうか?明らかにそうではありません。

 しかし、印象的だったのは、フロリダが決してパニックに陥らなかったことです。長いプレーオフを戦い抜きながら、めったに動揺した様子を見せないのは、パンサーズのスーパー・パワーの1つでした。

 1年前にアンダードッグとしてカップ戦決勝に進出した後、(トップドッグとして)そこに戻ってくるのは必然だということを、彼らは本質的に理解していたようです。その自信が、このチームをフランチャイズの歴史に刻み込みました。

オフシーズンの鍵となるのは?:

 パンサーズの主力選手の多くは(契約によりチームに)固定されていますが、11人の無制限フリーエージェントが保留のままでいます。ラインハートが優先事項になるでしょう。

 レギュラーシーズンで57ゴールを挙げたことで、延長契約のための提示価格が上がった可能性が高く、フロリダがまだ彼と(契約合意のサインをするため)ペンを走らせていないのは、それがあるからかもしれません。

 才能のあるフォワードにはフリーエージェントで多くの「求婚者」がいるでしょうから、パンサーズは彼をそこに行かせないのが賢明です。

 ブランドン・モントゥールは、ここでも重要選手リストの一番上に近い位置にいます。彼はフロリダのブルーラインの不可欠な部分となっており、彼を長期的に維持することがパンサーズの目標でなければなりません。

 そこから、フロリダは来シーズンのカップ戦のチャンスを最大化するため、どのような調整を行うべきかを考えます。

 GMのビル・ジトは、抜け目のない契約やトレード交渉、ウェイバーワイヤー請求(他球団を解雇された選手の獲得要求)によって、コアプレーヤーと彼らを補佐するプレーヤーの両方を見つけることができました。

 今は、ことわざに出てくるような、月桂樹の王冠を手にした喜びに安住する時ではありません。

2024-25シーズンへの現実的な期待:

 またカップ戦に出場するんでしょう?もちろん、フロリダはまず人事を決定し、契約を結ばなければなりません。いくつかの人事決定と最初に署名する契約を持っています。

 しかし、この2年間でパンサーズが培ってきた土台と文化は、フロリダを連覇に向けた好位置につけるはずです。

パンサーズ・ファンの皆さん、プレーオフの全ゴールをご覧ください!

2枚看板の一角残留が至上命令!

6月24日:エドモントン・オイラーズ

予測2024-25キャップ・スペース:9,833,333ドル(約15億8千万円)

2024ドラフト・ピック:2巡目、5、6、6(NSH=ナッシュビル・プレデターズから獲得)、7(ANA=アナハイム・ダックスから)、7(BOS=ボストン・ブルーインズから)。

何がうまくいかなかったのか?

 最初の3試合で一貫性を保つのに苦労した後、オイラーズは第7戦まで無理矢理に進める方法を見つけました。

 ただ、0勝3敗のシリーズ(勝ち星の)赤字を完全に克服し、NHL史上2番目のチームとしてその偉業を成し遂げようとするには、少しやりすぎであることが判明しました。

 その原因の多くは、オイラーズが序盤に大穴を開けたことにあります。リーグ屈指の得点力で知られるチームが、最初の2試合で挙げた得点はわずか1点でした。

 加えて、エドモントンがシリーズ最初の3試合を通して11失点を喫したことで、数々の1点差ゲームで勝利を収めるか、あるいは僅差に踏みとどまることができていた守備陣のアイデンティティも問題に直面してしまったのです。

オフシーズンの鍵となるのは?:

 優勝候補に挙がっているチームの例に漏れず、オイラーズもまたこの夏、チームに有利な契約を結んだ選手でロースターを補うだろう。

 ウォーレン・フォーゲル、アダム・エンリケ、マティアス・ジャンマルクは、キャップスペースが1000万ドル未満になるチーム(オイラーズのこと)において、無制限フリーエージェントになる予定の7人のフォワードの内の一部です。

 エドモントンは(ゴール)ネット(ゴールテンダーのこと)もアップグレードしますか?スキナーはウェスタン・カンファレンス決勝とカップ決勝でかなり良いプレーを見せて回復しましたが、序盤は確かに不安定でした。

 ドライサイトルとマクデイビッドのハートトロフィー受賞者のペアがいるということは、「オイラーズの次にすべきことへの期待」が増幅されることを意味します。

 しかし、ドライサイトルが契約最終年を迎える中、その期待をスタンレーカップにつなげるために、クラブは全力を尽くすでしょう。

2024-25シーズンへの現実的な期待:

 ドライサイトルとマクデイビッドがいる限り、オイラーズは真剣なカップ戦の優勝候補と見なされなければなりません。しかし、課題もあります。ドライサイトルの契約状況もその1つであり、ウェスタンカンファレンスの他チームの状況も同様です。

 オイラーズが2022年にカンファレンス決勝に進出して以来、彼らは変化を目の当たりにしてきました。カップ優勝者のコロラドとラスベガスに、カナックスやダラス・スターズなどの真剣なタイトル挑戦者が加わりました。

 2024-25シーズンは、ドライサイトル・マクデイビッド時代において、最も重要なシーズンになる可能性があります。

この試合の勝利で3勝3敗に追いついたのだが…。

育成システムは盤石、後はベテランの残留だが…

カンファレンス決勝

6月2日:ダラス・スターズ

予測2024-25キャップ・スペース:15,946,259ドル(約25億6千万円)

2024ドラフト・ピック:1巡目、5、7

何がうまくいかなかったのか?

 ウェスタン・カンファレンス決勝で、エドモントン・オイラーズに2勝1敗でリードした後、スターズは有利な立場に立つはずでした。しかし、むしろ不利な立場になってしまったようです。

 スターズは第3戦で5ゴールを奪いましたが、第4戦と第5戦では合計3ゴールしか決められず、その間に8失点を喫しました。第5戦は特にひどく、スターズは以前の優勢な感じから一転して無気力に見えたのです。

 その結果、スターズは今ポストシーズンで2度目となる、あと1試合で敗退という状況に追い込まれました。

 しかし、ベガス・ゴールデンナイツとの第1ラウンドのシリーズとは異なり、スターズは7試合めで再び勝利を収めることができず、この夏、なぜすべてがうまくいかなかったのかを解明するため、少し余分な時間が与えられることになったのです。

オフシーズンの鍵となるのは?:

 優勝を狙う他のチームと同様に、スターズもいくつかの決断を迫られていますが、ニーズに対応できるキャップスペースは限られています。

 マット・デュシェーンとジョー・パベルスキーは、チームで最も著名な無制限フリーエージェントのフォワードです。ダラスが他のトップコンテンダー(優勝候補)に挑戦することを可能にする、フォワード選手層の厚さの一部に彼らはなっています。

 両選手ともこのグループの重要なメンバーであり、キャップヒットが機能すれば、チームに復帰するはずです。

 トレード期限までに獲得したクリス・タネフについては、新契約を必要としている5人のディフェンダーのうちの1人であり、決断を下さなければならない。ヤニ・ハカンパーとデリック・プリオもUFA(無制限フリーエージェント)です。

 しかし、最も議論を呼ぶかもしれないのは、もう1人のディフェンス、トーマス・ハーリーです。制限付きフリーエージェントになる予定のハーリーは、今シーズン、47ポイントを獲得しており、8月に23歳になります。

 スターズの中で、あまり心配する必要のない唯一のポジションはゴールです。ジェイク・エッティンガーは、このポストシーズンでフランチャイズを代表するゴールキーパーとして活躍し、2024-25シーズンが終わるまで制限付きフリーエージェントになることはありません。

2024-25シーズンへの現実的な期待:

 スタンレーカップを獲るか、獲らないかです。経営幹部はしばしば、最終的にすべてを勝ち取ることのできる長期的なカップ・コンテンダーになるため、必要な青写真を描きます。彼らは、自前のコアになる選手を育て上げ、その選手に経験を加えることについて話します。

 スターズはこれらの特性をすべて備えており、新しい選手をチームにスムーズに適合させる方法も見つけました。これにより、スターズは正当なチャンピオンシップ候補になりましたが、いつかはその約束が結果にならなければなりません。

讃岐猫
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ここまでは元気だったんだけど…。

シェスターキン王国を建設し、王冠を奪取せよ!

6月1日:ニューヨーク・レンジャー

予測2024-25キャップ・スペース:12,465,976ドル(約20億円)

2024ドラフト・ピック:1巡目、4、5、6

何がうまくいかなかったのか?

 レンジャーズは自分たちを信頼するのをやめたようでした。そして、そうなってしまったら、もう後戻りはできません。

 プレジデンツ・トロフィーを勝ち取ったレンジャーズは、レギュラーシーズンを通じて114ポイントを獲得し、信念と不屈の精神示しました。ニューヨークのスター選手たちは、シーズン中、そしてポストシーズン序盤にも活躍しています。

 しかし、フロリダ・パンサーズとのイースタン・カンファレンス決勝で、レンジャーズはアルテミ・パナリンとミカ・ジバネジャドの貢献度が減っていきました。にもかかわらず、ピーター・ラヴィオレット監督は、トップ選手たちを1試合あたり20分以上も起用し続けたのです。

 ラヴィオレット監督はベンチの選手たちに自信を持てず、結果が出ない選手たちの消耗を加速させました。ニューヨークの今シーズン最大の強みの一つであるパワープレーも、カンファレンス決勝では衰え、14回中1回しか成功していません。

 レンジャーズはしばしばパニックに陥り、自信がなさそうに見え、それが躊躇やフラストレーションにつながりました。

 レンジャーズでシリーズを通して冷静沈着なプレーを見せたのは、イゴール・シェスターキンだけです。彼のパフォーマンスは言葉では言い表せないほど素晴らしいものでした。ニューヨークの自信は衰えていき、スタンレー・カップ決勝進出の望みも消えてしまったのです。

 レンジャーズには、その理由を振り返る時間がたっぷりあります。

オフシーズンの鍵となるのは?:

 ニューヨークの最優先事項は、シェスターキンをNHLで最も高給取りのゴールキーパーにすることです。レンジャーズのゴールキーパーはあと1年でUFA(無制限フリーエージェント)となり、次の契約交渉は今夏に始まる可能性があります。

 シェスターキンのキャリア通算成績(および称賛)が彼の優秀さを十分に証明していないとしても、プレーオフを通じて、ニューヨークのために(特にフロリダ戦で)独力で勝利を収めた彼の姿を見れば、彼が新しい契約で得るべきものについて、何の疑いの余地を残しません。

 次に、レンジャーズは、なぜ困難を乗り越えられないのかを分析しなければなりません。ニューヨークは毎年春にプレーオフでその実力を発揮しますが、重要な時になると失速し続けています。チームが仕事をやり遂げられないのはなぜでしょうか?

 来シーズン、何が変わったのかを生み出すために、今シーズンのラインナップに欠けていたものは何でしょうか?レンジャーズは監督を交代しました。

 チームはハイエンドの選手を獲得し、アレクシス・ラフレニエール(今シーズンのプレーオフでブレイクした)のような若いスケーターに対し、(ブレイクするまで)忍耐強く対応してきました。

 レンジャーズがうまくやったことはたくさんあります。このオフシーズンは、どこが悪かったのかを特定し、どうすれば完全に修正できるのかを見極めることが大切です。

2024-25シーズンへの現実的な期待:

 ニューヨークは、人員を大幅に変更したり、大幅に入れ替えたりする可能性は低そうです。

 レンジャーズは、シェスターキンがこれまで通り圧倒的な強さを維持し、レンジャーズのトップクラスのスケーターたちが以前の調子を取り戻せば、再びイースタン・カンファレンスのトップ候補になると予想しています。

 もちろん、ニューヨークはカップ戦のファイナルまで無制限に行けるわけではありませんから、再び「縁の下の力持ち」的選手の補強に焦点が当てられることになるでしょう。

レンジャーズも、ここまでは強かったんだけど…。

まとめ

 スターズとレンジャーズに関しては、プレーオフを戦う上で、あまりにもセオリーを無視した選手起用で、足をすくわれた感じがします。連戦となるプレーオフには、一にも二にも選手のスタミナが第一。逆にパンサーズの勝利は分厚い選手層のなせる業でしたね。

 チーム・バランスから見ると、やや守備を疎かにしがちなオイラーズより、上記2チームの方が上なんですけど、オイラーズの2枚看板が不安を一掃してしまいました。本文にあるように、まさに「マクデイビッドードライサイトル時代」の真っ只中なのです。

 ドライサイトルが出ていくなんて考えられませんが、サラリーキャップという悪魔がオイラーズに襲いかからないとは限りません。24-25シーズン、オイラーズは是が非でもカップを獲りに行きながら、契約交渉の席でも王座に上らないといけない状況なのです。

讃岐猫
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