NHLドラフト2022注目選手の成長と今後の可能性を完全チェック

現役スター選手紹介

はじめに

 2022年のNHLドラフトから約3年。指名時の評価を改めて見直す「再評価」を行いました。シェーン・ライトやカッター・ゴーティエ、フランク・ネイザー、サイモン・ネメクなど、トッププロスペクトたちの成長や実績をもとに、ドラフト順位と実力のギャップを徹底分析。

 注目選手たちの現在地と今後の可能性をわかりやすく紹介します。🏒✨

参照記事:The Athletic「Re-drafting the 2022 NHL Draft: Logan Cooley, Lane Hutson lead Scott Wheeler’s do-over

※参照記事は1巡目全体32位まで紹介していますが、かなりの長文なので、今回は4〜7位に限定しました。

2022年ドラフト再評価の狙いやルール、トップ3はこちらの記事でどうぞ。

4位 シアトル・クラーケン:シェーン・ライト🦑(センター)

実際の指名順位:4位(変更なし)シアトル
The Athletic最終予想ランキング(2022年当時):1位(-3)

 2022年のドラフトで4位指名を受けたシェーン・ライト。実は当時、彼の評価には少し陰りが1見え始めていました。「期待外れでは?」と囁かれることもありましたが、昨シーズンのNHLで迎えたフルシーズンは、しっかりとした結果を残しました😊。

 79試合に出場して19ゴール、25アシストの44ポイントを記録し、クラーケンのチーム内ポイント・ランキングで4位。

 2022年ドラフト組では、フィラデルフィアが指名したカッター・ゴーティエ(彼より3試合多くプレー)と並んで4位の成績を残し、マルコ・カスパー(全体8位指名。デトロイト・レッドウィングス。センター、21歳。昨シーズンは77試合出場、19ゴール・18アシスト)やイジー・クリーチ(全体28位指名。バッファロー・セイバーズ。センター、21歳。昨シーズンは62試合出場、15ゴール・9アシスト)らを上回る結果を残しました。

 シュート成功率は20.9%と高めでしたが、これは今後少し落ち着くかもしれません。ただし、昨季の平均出場時間2は14分4秒と少なめだったため、今後はプレータイムが増えるはずです。しかも彼はセンターとしてディフェンス面でも悪くない数字3を残し、パックがない場面でも細かい部分への意識や献身的姿勢が評価されています。✨

 「ドラフト1位のスター候補」や「特別指定の選手」として振り返られることはないかもしれません。それでもリーグで長く活躍できる実力者であることは間違いありません。また、露出が多すぎたことで、ファンを含め、メディアに過剰に分析されすぎた部分4もあると思います。

 こうしたファンやメディアからの期待・比較・報道が重なって、「露出が多すぎた」→「過剰分析され過ぎた」という感じが生じたのである。

 筆者自身も当時、その影響を受けすぎてしまい、オフェンスの上限やダイナミックさの不足が、もし1位に据えた場合、評価を維持していくことを難しくするだろうと心の奥では分かっていたのです。

 ドラフト再評価での順位付けについて言えば、筆者の中でこのリドラフトには2つのトップ層があります。1〜3位の層と、4〜12(あるいは13)位の層です。ライトをもっと下にすることも考えましたし、そうする人もいるでしょうが、彼は確実に後者の層の中にしっかり位置しており、その中でも前の方にしっかり入る選手だといえるでしょう。

これくらいの活躍がコンスタントにできれば、クラーケンの新しい目玉になるのだが。今シーズンが勝負!

5位 フィラデルフィア・フライヤーズ:カッター・ゴーティエ🦅(左ウィング)

実際の指名順位:5位(変更なし)フィラデルフィア
The Athletic最終予想ランキング(2022年当時):18位(+13)

 2022年のドラフトで5位指名を受けたのが、フィラデルフィア・フライヤーズのカッター・ゴーティエ(現在はアナハイム・ダックスに所属)です。ゴーティエについては、すでに「自分が評価を誤った選手たち」のコラムでも書いたことがあります。当時の評価は簡単ではありませんでした。

 理由はいくつかあります。まず彼がセンターなのかウイングなのか、スカウトの間でも意見が分かれていたのです。筆者自身も「ウイング」として見すぎてしまったと振り返っています。

 さらに、ローガン・クーリー(全体3位指名。アリゾナ・コヨーテズ〈現ユタ・マンモス〉。センター、21歳。昨シーズンは75試合出場、25ゴール・40アシスト)やジミー・スナッガルード(全体23位指名。セントルイス・ブルース。右ウィング、21歳。昨シーズンは7試合出場、1ゴール・3アシスト)といった他のトッププロスペクトと同じラインでプレーしていたため、「誰が主導していたのか?」「誰が周囲の才能の恩恵を受けていたのか?」という疑問が常について回りました5

 スタッツも悪くはなかったものの、「良いけれど突出してはいない6」という感じで圧倒的ではありませんでした。むしろ同じチームで、セカンドラインをけん引したラトガー・マクグローティや、サードラインのフランク・ネイザー、アイク・ハワードらの方が、2年間を通してより多くの得点を挙げていたのです。

 筆者の誤算は、ゴーティエが10代後半から一気に成長し、トップ5候補にまで押し上げた「後半の追い上げ」を十分に評価しなかったことでした。

 そして、この「終盤で大きく成長した選手に素早く反応できない」点は、筆者のランキングで繰り返される問題でした(モリッツ・サイダー〈2019年全体6位指名。デトロイト・レッドウィングス。ディフェンス、24歳〉やジェイク・サンダーソン〈2020年全体5位指名。オタワ・セネターズ。ディフェンス、23歳〉といった、これまでの最大の見落とし例もそうです)。

 今はその点をずっと意識するようになっています。

 実際には、ゴーティエに関して選手像そのものは正しく捉えていました。彼の特徴やプレースタイル、将来像も描けていました。当時も「トップ10に入るのは理解できるし、そのあたりから考え始めるだろう」と書いていたのです。

 ただし、トップ5には値しないと判断し、評価手順でいくつかの小さな誤りが重なった結果、本来いるべき層よりもひとつ下にランク付けしてしまったのです。結果的には、これは小さなズレではなく、大きな誤りだったといえるでしょう。

 加えて、クラス全体の層が薄い中で、「サイズがあり(188センチ、91キロ)、30ゴール・30アシスト・60ポイントを狙えるウインガー」は、それだけで十分にトップタレントとみなすべきでした。💡今ならそう思います。

フライヤーズに指名されながら、1試合も出場せず、砂をかけて出ていった男・ゴーティエ。当然、フィラデルフィアに来たら、ブーイング!

6位 コロンバス・ブルージャケッツ:フランク・ネイザー🟦(センター)

実際の指名順位:13位(+7)シカゴ・ブラックホークス
The Athletic最終予想ランキング(2022年当時):11位(+5)

 2022年のドラフトで13位指名を受けたフランク・ネイザー。筆者は一度、彼をこのリストで後に続く3人のディフェンス選手たちより下にランク付けすることも考えました。

 また、そのさらに後に続く3人のフォワードも、ネイザーと同等かそれ以上のキャリアを送る可能性があると思います。ですが、春にネイザーが見せた成長を評価する重要性を考慮しなければいけない以上、その実績を軽視するわけにはいきません。

 シーズン終盤の11試合で6ゴール・10ポイントを記録し、その勢いで男子世界選手権にも出場し、素晴らしい活躍を見せています。10試合でチーム最多となる6ゴール・12ポイントを挙げ、アメリカ代表の金メダル獲得に貢献しました。🏅

 来季はシカゴでトップ6の選手として起用される可能性が高く、得点を期待される立場になるであろうことも大きな意味を持ちます。NHLや世界選手権で、トップ選手と共にプレーし、スケーティングやスキルで結果を出せることを証明してきたネイザーなら、この期待に応えられるでしょう。

 もちろん、彼のプレーにはまだ改善が必要な部分もあり、82試合を通してパックの有無にかかわらず、継続的にインパクトを与えられることを証明する必要があります。しかし、今回評価した範囲の最下位に置いたとしても、それは実際のドラフト順位より上であり、筆者が当時ランク付けした位置とほぼ同じです。

讃岐猫
讃岐猫

7位 シカゴ・ブラックホークス:サイモン・ネメク🔴(右サイドのディフェンス)

実際の指名順位:2位(-5)ニュージャージー・デビルズ
The Athletic最終ランキング(2022年当時):2位(-5)

 2022年ドラフトで2位指名を受けたサイモン・ネメク。筆者の当時の予想ランキングも同じく2位でした。

 今回の順位(再ドラフト7位)は少し高いと感じる人もいるかもしれません。しかし、多くの人がそう感じるのは、ネメクが実際に2位で指名されたことに引っ張られているからでしょう。

 もし彼が今回の再ドラフトように7位で指名され、18〜20歳という若さでAHLで3シーズン成功を収め、NHLでも87試合で23ポイントを記録し、プレーオフでも活躍していたとしたら、評価はまったく変わっていたはずです。

 実際には、デビルズのブルーラインが混雑している状況やアップダウン7はありましたが、ネメクはNHL、AHL、世界選手権で数々のハイライトとなる瞬間を見せてきました。今シーズン、彼がNHLとオリンピックの舞台でさらに一歩成長し、リーグで長く活躍できる「トップ4ディフェンス」としてのキャリアを築くと筆者は予想しています。🏒

【追記】
 ニュージャージー・デビルズのGMトム・フィッツジェラルドは、ディフェンスマンのジョニー・コヴァセヴィッチについて、復帰が2026年以降になる可能性が高いと明かした。膝の怪我の影響で長期離脱となり、少なくとも2026年1月以前の復帰は見込めない状況。

 コヴァセヴィッチは2024-25シーズンで安定感あるプレーを見せ、チームで最も信頼されるディフェンスの一角として評価されていたが、この離脱は大きな痛手となる。その穴を埋める存在として、右サイドではサイモン・ネメクやシーマス・ケイシーの活躍が期待されている。
詳しくはこちら→⭐️

まとめ



 今回の再評価では、各選手の成長や国際舞台での実績も含めて順位を見直しました。ライトやゴーティエ、ネイザー、ネメクの個性やプレースタイル、今後の可能性を整理することで、ドラフト当時の評価と現在の実力の違いが鮮明に。彼らの今後の活躍から目が離せません。

讃岐猫
讃岐猫

【註釈】

  1. 2022–23シーズンのNHLでの出場機会が限られていたことが影響したと思われる。そのシーズン、ライトはシアトル・クラーケンでの出場が8試合にとどまり、AHLのコアチェラ・バレー・ファイアバーズでのプレーが中心となっていた。

     そのため、NHLでの実力を証明する機会が少なく、ファンやメディアからは「期待外れでは?」との声も上がり始めたのである。

     また、2023年の世界ジュニア選手権ではカナダ代表として金メダルを獲得し、注目を集めたが、NHLでの活躍が続かなかったのも一因。
    ↩︎
  2. NHLにおいて、平均出場時間(TOI)は選手の役割やチーム戦略によって大きく異なりますが、一般的な目安として以下のような傾向がある。

     まず、フォワードの中で最も多くの平均出場時間を記録したのは、コロラド・アバランチのミコ・ランタネンで、1試合あたり22分54秒。一方、最も少ないのは、ニューヨーク・レンジャーズのアダム・エドストロムで、9分16秒。

     一般的に、1試合あたり18分以上の出場時間を確保しているフォワードは、チームの上位ラインで活躍していると見なされる。例えば、ダラス・スターズのジェイソン・ロバートソンは、平均18分50秒の出場時間で109ポイントを記録した。

     ライトの平均出場時間が14分4秒であったことを考慮すると、今後のシーズンで18分以上の出場時間を確保できれば、チームの主力選手としての地位を確立する可能性が高まる。
    ↩︎
  3. 具体的な数値としては、±(プラスマイナス)で+4、ブロックショット(BS)で62回、ヒット(H)で54回、ターンオーバー(TOI)で73回、ターンアウェイ(GA)で14回という記録がある。これらの数字は、ライト選手が守備面でも積極的にプレーし、チームに貢献していることを示している。

     また、ライトはディフェンスゾーンでのポジショニングにも優れており、特に高いスロットエリアでの守備が特徴。パックキャリアに対してプレッシャーをかける際には、体を使ってパスコースやシュートラインを遮断するなど、ディテールへのこだわりとオフ・ザ・パックでの献身的なプレーが評価されている。
    ↩︎
  4. ライトはドラフト前から非常に高い注目を集めており、「2022年のドラフトで全体1位になる」と見なされることが普通だった。彼自身も、ドラフト前のインタビューで「自分はその1位に値する」と公言。

     また、15歳で「例外的な選手(exceptional status)」としてOHLでのプレー資格を認められており、それにより若年時から比較対象にされる相手もMcDavidや他の将来のスター選手とされるケースが多かった。

     メディアはその成績や将来性をしばしば“世代を代表する才能(generational talent)”と形容し、期待値を非常に高く設定。さらに、ドラフト・スライド(予想されていた1位から4位に下がったこと)も、大々的に報じられ、暗に「本来あるべき位置を逸している」という印象を強める材料となっていく。
    ↩︎
  5. ドラフト前からCutter Gauthier、Logan Cooley、Jimmy Snuggerudはそれぞれが非常に有望なプロスペクトとして注目されており、大学やNTDP(U.S. National Team Development Program)での成績が高かった。

     その中でGauthierがBoston Collegeでルーキーシーズンに好成績を収め、強いシュート力とゴール数で目立っていた一方、Cooleyは優れたパスやスケート能力、試合を作る力で非常に高く評価されていた。

     Snuggerudはチームの中で粘り強さやフィジカル、ゴール前のポジショニングといった「他の才能の周りで働けるタイプ/得点だけでなく動きや貢献度で勝負するプロスペクト」としての評判を持っていた。

     このように、Gauthierは得点能力、Cooleyはプレーメイカー/スピード、Snuggerudはオフザパックやゴール前での仕事など、それぞれ強みが異なっていたため、「このラインではGauthierがゴールを取っているのか」「CooleyのパスからSnuggerudが決めているのか」「Snuggerudは単に立ち位置や他者のプレーの恩恵を受けてるだけではないか」といった比較がファン・スカウト・メディアの間で頻繁に行われた。

     また、報道やスカウティングレポートではSnuggerudについて「CooleyやGauthierのようなより動的な才能と比べて、創造性やダイナミズムでは若干見劣りするが、その分フィジカルさ・ハードワーク・前線でのプレッシャー・ゴール前での仕事で補っている」という指摘があり、これが「誰が本当に主導者か」を判断する余地を生む一因になっていた。

     さらに、アンダー18や大学リーグでこれら3人が同じラインまたは近い役割でプレーする機会があったため、得点分担・アシスト分担・パック保持時間などのスタッツが重なり、「このラインの成功は個々の才能のミックスによるものなのか、それとも一人ないし二人が牽引しているだけなのか」がアナリストやファンの議論対象になった。

     例えば、NTDP U18 チームでGauthierがハットトリックを決めたゲームでCooleyやSnuggerudがアシストを重ね、チームの得点に複数名が関与していたことが報じられている。
    ↩︎
  6. 2021-22シーズンのNTDP U18における結果を見ると、Cutter Gauthierは54試合で34ゴール・31アシスト、65ポイントを記録。

     同じ年にセカンドラインを牽引したRutger McGroarty(全体14位指名。ウィニペグ・ジェッツ→ピッツバーグ・ペンギンズ。右ウィング、21歳。昨シーズンは8試合出場、1ゴール・2アシスト)は同じく54試合で35ゴール・34アシスト=69ポイントを挙げている。

     Frank Nazar III(全体13位指名。シカゴ・ブラックホークス。センター、21歳。昨シーズンは53試合出場、12ゴール・14アシスト)も56試合で28ゴール・42アシスト=70ポイント、またIsaac Howard(全体31位指名。タンパベイ・ライトニング。左ウィング、21歳。現在、ミシガン大学在学中)に至っては60試合で33ゴール・49アシスト=82ポイントと、それぞれGauthierを上回るか非常に競合するスタッツを残していた。
    ↩︎
  7. ニュージャージー・デビルズのディフェンス陣は、非常に層が厚く競争が激しいため、ネメクが安定してNHLで主力ポジションを確保するのに苦労している。

     まず、チームにはルーク・ヒューズ、ドゥーギー・ハミルトン、ブレット・ペセ、ヨナス・シーゲンタラー、ジョナサン・コヴァセヴィッチら経験・実績のあるディフェンスマンが複数おり、彼らが既に「上位ペア」または「信頼できるローテーション・ディフェンス陣」として位置付けられている。

     ネメクにはドラフト高位指名というポテンシャルの期待があるが、2024-25シーズン序盤には上体の怪我(オリンピック予選での肩の怪我)が影響し、開幕から調子が上がらず、NHLでの出場機会を活かせない場面があった。このことが「アップダウン」の一因となっており、シーズン中にAHL(Utica Comets)へ降格して成績を立て直す必要が生じた。

     また、NHLでのプレーでは「守備指標」や「期待ゴール率(expected goals for)」などのアナリティクスにおいて、チーム内/リーグ内で低めの数値が見られる期間があった。

     例えば、2024-25年レギュラーシーズンではネメクのon-iceのexpected goals for%が約37.72%という、チーム内でも下位(ディフェンスマンとしては苦しい)指標を記録しており、またGoal Above Replacement(GAR)でもマイナス評価を受けていた。これにより、一貫した高いレベルを保つことに困難を感じさせる結果になっている。

     さらに、ブルーラインの混雑状態は出場順やペアリング(どのディフェンダーと組むか)にも影響を与えており、ネメクはしばしばセイマス・ケーシー等と組んだり、あるいは経験豊かなペアの代替要員・交代要員として使われたりする場面が多かった。

     コヴァセヴィッチなどが復帰するとネメクの出場時間やポジションが圧迫され、NHLのロースターから外れてAHLへ割り当てられることも。
    ↩︎
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