はじめに
3シーズンにわたって選手の移籍金を水増しするなどの違反が確認された、サッカー・セリエAのユベントスが、勝ち点15もはく奪されたニュースは驚きを持って世界中を駆け回りました。ビッグ・クラブのマネージメントの難しさが浮き彫りになったと同時に、誰の仕業なのか、主犯探しも盛んになりそうです。
さて、NHLシーズン開始当初から、不振の責任追及をされ続けている監督がいます。バンクーバー・カナックスのブルース・ブードロー、その人なのですが、かつて名将の名をほしいままにしていたにもかかわらず、極度のスランプに陥っています。さらに元選手でもあるフロント・スタッフから非難されるとは…。
ブードローの心の叫びが聞こえてきそうな記事になってるにゃ。
読んでてもつらい…。
引用元:NHL.com「Boudreau gets emotional discussing uncertain future as Canucks coach」。
実はもう…。
※既にブードローはカナックスを解雇されています。記事にあるオイラーズ戦にも敗れ(スコアは2対4)、ここ12試合で10敗と黒星を重ねては、クビも仕方ないでしょう。後任はリック・トシェット(58歳)に決定しており、チームは再スタートを切っているようです。
本来であれば、トシェット就任のニュースをお届けするところですが、あまりにもブードローが不憫で…。不満をぶちまけたいところをグッと抑えたインタビューに、NHLを、ホッケーを愛する男の生きざまを感じました。よって、あえて解任される前の記事をお届けします。
なお、トシェットはコヨーテズの監督を4シーズン務め、つい最近までTNTのスタジオ・アナリストを務めていました。
詳しくはこちら。
ブードロー、身内に足をすくわれる
20日(金曜日)、ブルース・ブードローは、バンクーバー・カナックスのコーチとして自らの不確実な将来について、感情的になりました。
※ブルース・ブードロー=監督歴については後述参照。現役時のポジションはセンター。NHLではそれほど目立った活躍をしておらず、AHLを主戦場としていた。
現在、米国プレミア・ホッケー・リーグ(USPHL)の2つのジュニア・アイスホッケー・チーム、ミネソタ・ブルーオックスとハーシー・カブスのオーナーでもある。
16日(月曜日)、カナックスのホッケー運営部門の社長、ジム・ラザフォードは、他の候補者と話したことを明らかにし、ブードローがまもなく更迭されるのではないかという憶測に拍車をかけました。
※ジム・ラザフォード=73歳。現役時のポジションはゴールテンダー。ゼネラル・マネージャーとして、2006年にハリケーンズで、2016年と2017年にペンギンズで、3度のスタンレーカップ獲得を達成。
金曜日、バンクーバーはコロラド・アバランチに4対1で敗れ、21日(土曜日)にはエドモントン・オイラーズ戦が開催されます。金曜日の朝、ブードローは、この2試合をじっくりと味わえるかどうか尋ねられました。
言葉に詰まるブードロー
「まだ分からないよ」とブードローは言いました。「(チームに)何が起きているのかわからないと言わないようにしようと思ってはいるんだ。でも、前にも言ったように、仕事場に来ると、ゲームの素晴らしさを実感はしているよ」。
ブードローは立ち止まり、その時点で答えることを止めました。次にリーグのコーチであることの意味について尋ねられたブードローは言葉を詰まらせ、すぐに、しかし丁寧にメディア・セッションを終えました。
「後で話すよ」とブードローは言いました。
カナックスが昨シーズン9勝15敗2分けのスタートを切った後、ブードローはトラビス・グリーンの後任として2021年12月5日に雇われました。バンクーバーはブードロー監督の下で32勝15敗10分けで終了しましたが、それでもスタンレーカップのプレーオフには出場できませんでした。
※トラビス・グリーン=52歳。現役時のポジションはセンター。2013年のオフシーズン、AHLのユティカ・コメッツ(カナックスの下部組織)の監督に就任。2014–15シーズン、チームをカルダー・カップ決勝に導いた手腕を買われ、2017年4月、カナックスの監督に就任。
2021年12月、成績不振の責任を取り、ゼネラル・マネージャーのジム・ベニングと共に解雇。
このチームは、3シーズン連続で同じペースのままです。ウェスタン・カンファレンスからプレーオフへ進出できる2番目のワイルド・カード争いにおいて、バンクーバー(18勝24敗3分)は、カルガリー・フレームスと12ポイント差を付けられています。
ラザフォード、大いに吠える
ブードローは、今シーズンの0勝5敗2分けのスタート以来、彼の職の安定に関する憶測に耐えてきました。ブードローの5日後に雇われたラザフォードは、月曜日に、カナックスの監督について他の人と話したことがあることを認めましたが、全く黙ろうとはしませんでした。
ラザフォードは「名前を挙げたことはあるが、ここで具体的な名前を言うつもりはない」と述べました。「さらに、これは数ヶ月前にさかのぼるんだけど、私は何人かの人と電話で話をしたんだ。
しかし、それで明らかになったのは、電話で(チームについて)話しているのに、変化を起こすことについて理解しないし、変化を起こそうともしないということさ」。
ラザフォードは監督を助けようとしたのかにゃ…。
電話する相手が違うんじゃないか?
妻からの電話・選手との溝
金曜日の朝、ブードローがスケート・リンクの上にいなかった時、それは(チームに)警鐘を鳴らすものでした。
「妻から電話がかかってきて、『氷の上にいないけど、大丈夫?』と言われたよ」とブードローは述べました。「だから、それ(監督更迭の件)を感じないようにするのは難しいけど、(ホッケーを)愛しているならまだやりたいと思うし、その気持ちを持つことによって、私はその手の噂をシャットアウトしてるんだよ。
基本的に、自分がどれだけゲームや選手を大切にしているかということを認識しているだけなんだ」。自身とチームを取り巻く憶測をシャットアウトすることについて、選手と話したかとの質問に、ブードローは金曜日の試合前には話さなかったと答えました。
「しかし、明日にはいろいろ言われるかもしれないな」とブードローは述べました。
ブードローの輝かしい監督歴
ブードロー。67歳。カナックス、ミネソタ・ワイルド、アナハイム・ダックス、ワシントン・キャピタルズで監督を歴任。キャピタルズでの在職中、2007–08シーズンでNHLの最も優れた監督としてジャックアダムス賞を受賞。1,086試合で617勝341敗128分け、プレーオフ90試合で43勝47敗。
2022年10月28日に通算600勝目を挙げ、スコッティ・ボウマン(1,002試合)に次ぐNHL史上2番目に早い600勝(1,049試合)を達成した監督となる。
※900試合以上のキャリアを持つ監督として、ブードローはNHL史上2番目に高い勝率を誇る。
※スコッティ・ボウマン=89歳。NHLでのプレー経験はないにもかかわらず、監督として9回もスタンレーカップを獲得。さらに、3つのチームをスタンレーカップの優勝に導いた唯一の監督でもある。
まとめ
勝負の世界とはいえ、ブードローはあまりにも批判にさらされ続けていました。記事中にもあるように、リンク上の試合を楽しもうとしていたようですが、そうでも考えてないと、自分を見失ってしまいそうだったのかもしれません。
「明日にはいろいろ言われるかもしれないな」の言葉が、彼の苦悩の深さをうかがわせます。
今はゆっくり過ごして欲しいと思います。本当にお疲れさま。テレビのアナリストになって、ズバズバと若手監督の戦術を斬る!なんてのもアリですが、自分がされて嫌だったことはしない人っぽいです。
これからはオーナーを務めるジュニア・チームの成長を促し、明日の大スター出現を夢見るんじゃないでしょうか。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!