はじめに
NHLでは、数週間も勝ち星をつかめない時間が続くと、選手や監督、GMまで一気に視線が厳しくなっていきます。とくに今シーズンは、トロント・メープルリーフスとバッファロー・セイバーズが思うように勝てず、チームを率いる人たちにプレッシャーが積み重なっています。
『The Hockey News』のNHL Hot Seat Radar(熱い座席レーダー=プレッシャーが高まっている人物)へようこそ。ここでは、過去1週間でプレッシャーが強まった、あるいは弱まった人物に注目しています。
参照記事:The Hockey News「NHL Hot Seat Radar: Is Maple Leafs’ Craig Berube’s Seat Warming Up?」
プレッシャーが高まるNHLの“ホットシート”🔥
明確にしておきますが、“ホットシート”にいる人物が必ずしも解雇やトレードの危機にあるわけではありません。ただ、最近の結果によって“席が温まっている”場合、巻き返しを求められる状況にあるという意味です。
先週も触れた通り1、カルガリー・フレームスのライアン・ハスカ監督と、ナッシュビル・プレデターズのアンドリュー・ブルネット監督はホットシートにいましたが、その状況は全く冷えていません。
そこで、今週はメープルリーフスの関係者2名と、解雇の心配はないものの重要な仕事が増えているブルースのGMにも注目します。この記事では、日本語訳の内容をもとにわかりやすく紹介していきます。難しい専門用語は避けて、初心者の人でも読みやすくまとめています😊
まずは、最も厳しい声が集まっているバッファロー・セイバーズから見ていきましょう。
バッファロー・セイバーズ:アダムスGMとラフ監督に直撃する熱い視線🔥
セイバーズは、ここ1週間で3連敗。シーズンを通しても伸び悩んでおり、リンディ・ラフとケヴィン・アダムスは先週もホットシートに挙がっていましたが、この2人の“席”はさらに熱くなっています🔥。
特に問題なのは、バッファローには試合の流れを変えられる選手層の厚みがなく、それはGMであるアダムスの責任です。そして、セイバーズは多くの試合で相手よりハードワークできておらず、それはラフ監督の責任と言えます。
さらに、イースタン・カンファレンスでは彼らの前に多くのチームがひしめいており、これがバッファローにとって非常に険しい道のりとなっています。
今まさに、6日間で4試合というタイトなスケジュールの真っ最中。プレーオフ争いに踏みとどまれるか、それとも完全に脱落してしまうかの分岐点。水曜日には、この4試合の初戦ではユタ・マンモスに2–5で敗戦。プレーオフ争いに踏みとどまれるか、それとも遠ざかってしまうのか、流れを左右する大事な時期です。
ここまで多くのことがセイバーズの思い通りにいっておらず、そこから立ち直ってシーズンを救うことは到底想像できない状況です。そして、このままではバッファローの首脳陣が現状維持でいられるはずもありません2。
チームが勝ちを積み重ねられない限り、ラフ監督、もしくはアダムスGM、あるいは両方が職を失う可能性があります。ニューヨーク州西部はそれほどシンプルで厳しい環境なのです。
昨日のセイバーズvs.コロラド・アバランチ戦のハイライト映像。セイバーズ、第2ピリオドまでは食い下がったが、地力の差か、最終的に突き放されてしまった…。
トロント・メープルリーフス:ベルービ監督の試練⚡
気づけば、メープルリーフスはイースタン・カンファレンス15位、NHL全体でも27位にまで後退🔥。昨季はリーグトップ5に入っていたチームとは思えない状況だけに、この落差はファンにとっても衝撃です😅
直近1週間は0勝3敗で、総得点は10、失点は15とチームの流れは芳しくありません。もちろん、トロントでは誰もが少なからずプレッシャーを感じていますが、特にクレイグ・ベルービ監督には責任が重くのしかかっています。
そのため、トロントでは誰もが“ホットシート気味”、ウォーミングアップ(プレッシャー上昇中)と言える状況ですが、ベルービ監督も当然その責任の一部を負わなければならず、早急に立て直し策を見つけなければ「リーフス・ランド3」はもっと荒れた雰囲気になりかねません。
とはいえ、すぐに解任の危機というわけではありません。ただし、トロントで地区優勝という高い成功を経験した彼にとって、今は「リーフスが不調に陥った時の難しさ」を学び始めている段階だと言えます。
ベルービ監督は、以前セントルイス・ブルースをリーグ最下位から2018–19シーズンのスタンレーカップ優勝4へと導いたように、「苦しむチームを180度ひっくり返す経験者」でもあります。苦しい状況でもチームを立て直す力があります。今回もその手腕が求められているのです。
とはいえ、トロントでの状況は今まさに“監督の手腕が試される時”で、席が“温まる前に答えを見つける”必要があります💦

リーフスは昨シーズンのようにフォワードの力強さを感じさせないのは、やはりミッチ・マーナーを手放してしまった影響大と思うにゃ。彼のファイティング・スピリッツが必要だったんだなと改めて実感。おまけに後ろが安定しない。特にゴーリー、アンソニー・ストラーズは「移籍2年目のジンクス」にどっぷりハマり中で、最後の砦がズタズタ。監督も頭痛いよ。
セントルイス・ブルース:アームストロングGMの責任💼
セントルイス・ブルースは今季、6勝8敗3OT負けでNHL29位と低迷しています🔥。しかし直近1週間は2勝0敗1OT負けとやや浮上の兆しも。
ダグ・アームストロングGMは、来季からチームの新GMになるアレクサンダー・スティーン5がスムーズに仕事を始められるよう、準備を進めなければなりません。アームストロング自身は来季からホッケー運営部門の社長としてチームに残るため、その準備は非常に重要です。
そして今、ブルースは“進むべき方向性を定める必要性”に迫られています。
アームストロングは昨年、ジム・モンゴメリーを招聘して監督を交代させましたが、今シーズンは同じ手は使わないと見られています。そのため、もしこの勢いを継続できなければ、ブルースは別の形でチームを変えていかなければなりません。
アームストロングGMには選手のトレードなどを通じて、チームを改善するプレッシャーがかかっています。もしブルースが今の順位付近から抜け出せない場合、ブレイデン・シェンやジョーダン・カイロウといった選手について、“もしセントルイスで未来が見えないなら価値のある見返りを得るべきだ”というプレッシャーがアームストロングにかかってくるでしょう。
昨季、ブルースはシーズン終盤に驚異的な追い上げを見せてプレーオフに滑り込みました。つまり、まだ状況が変わる可能性は残っています。しかし、低迷が続けば続くほど、アームストロングGMの“席”は熱くなるのです🔥
2023年にライアン・オライリー(現ナッシュビル・プレデターズ)やヴラディミール・タラセンコ(現ミネソタ・ワイルド)を放出して再構築したように、再びチームを組み直すのか、あるいは「競争窓(勝てる期間)6」を保つためのホッケー的なトレードを行うのか、その判断が強く求められるようになります。
セントルイスには、ウェスタン・カンファレンスの強豪チームが持つような“世代を象徴するレベルのスター選手”がいません。だからこそ、アームストロングの最大の仕事は「現在の選手たちを長期的なパズルのピースへと変えていくこと」になります。
今日行われたフライヤーズvs.ブルース戦のハイライト映像。楽勝かと思われたブルース、フライヤーズの脅威の粘りの前に屈する…。
メープルリーフスのゴーリー事情:アンソニー・ストラーズ⛸️
ストラーズはメープルリーフス加入1年目の昨季、21勝8敗3OT負け、セーブ率.926、平均失点2.14という素晴らしい成績を残し、チームの救世主となりました。“心温まるサクセスストーリー7”としても称えられました。しかし今季はまったくの別物になっています🔥。
現在の成績は6勝5敗1OT(延長)負け、セーブ率.884、平均失点3.51。1試合あたり約1点多く失点しており、31歳の彼はまさに“席が温まる”状態です💦
さらに、現在ケガの影響で木曜の試合に出場しない見込みです。とはいえ、ストラーズには今季終了後から4年契約の延長が始まるためチームに残ることは確定していますが、同時に、開幕から離脱していたジョセフ・ウォルがまもなく復帰する見込みです。もしウォルが戻ってきて勝利を積み重ねるようなら、ストラーズは「正守護神の座」を失う危険があります。
リーフスは現在、勝利が絶対に必要な状況。もしウォルが結果を出すと、ストラーズは出場機会を減らされるかもしれません。トロントではミスの許されない戦いが続いており、ストラーズは成績を改善しない限り、No.2ゴーリーとして出番が限定されるリスクがあります。
まとめ:NHLのホットシート総括🔥
バッファローは連敗でラフ監督とアダムスGMに強いプレッシャー。トロントはベルービ監督が立て直しに苦戦し、ゴーリーのストラーズも成績低迷で出場機会が危ぶまれます。セントルイスではアームストロングGMが来季に向けチームを整える責任を負い、低迷が続けば選手トレードや再構築の判断が迫られます。
各チームとも、短期間で結果を出す必要がある厳しい状況です。🏒NHLの“ホットシート”は、勝利と同時に選手・スタッフの未来を左右する緊張感にあふれています⚡果たして誰がこの“熱い席”を乗り越え、チームを立て直すことができるのでしょうか…?🏒

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 「NHL GMs And Coaches On The Hot Seat Radar」のこと。
Nashville Predatorsは、Andrew Brunette監督の下で今シーズン序盤から苦戦が続いている。チーム成績は低調で、特に若手選手の起用や試合展開の管理に課題が見られ、プレーオフ進出の可能性を維持するためには即効性のある改善が求められている。GMのBarry Trotzは、チームの立て直しを図るために、場合によってはコーチ交代も含めた戦略の見直しを検討する必要が出てきており、Brunette監督は文字通り“ホットシート”に座る状況。
一方、Calgary FlamesはRyan Huska監督が指揮を執っているが、こちらも今季のスタートは厳しく、リーグ下位付近の成績が続いている。特に攻守のバランスや試合中の決断力に改善の余地が指摘されており、Huska監督自身の経験や戦略が試される局面である。ファンやチームフロントの期待は高く、連敗や低迷が続けば、監督自身の評価にも直接的な影響が及ぶ状況。
↩︎ - 北米メディアは総じて、今季のセイバーズを「選手層の薄さと負傷トラブルが重なり、立て直しが難しい」と分析。チームは直近の連敗で失速しており、ジェリ・クーリッチの血栓による長期離脱など怪我の影響が重くのしかかっている点が大きく指摘されている。
試合面では守備と失点コントロールに課題があり、最近の敗戦(例:コロラド戦やアバランチ戦での失点の多さ)がチームの脆さを露呈していると伝えられている。こうした状況を受けて、The Hockey Newsや主要なカバレッジでは「現状維持は許されない」「大きな組織改革が必要だ」といった強めの論調が出ており、GMケヴィン・アダムスと監督リンディ・ラフの職責が改めて問い直されている。
また、一部メディアは昨季の後半の急落と比較しつつ、今のうちに勝ち星を積めなければ「現実的にシーズンが埋もれてしまう」との見方を示し、厳しい日程(強豪との連戦)が追い打ちをかける可能性を指摘。総じて、北米メディアは「怪我と不安定な成績が続く限り、外部からの耐えがたいプレッシャーが強まり、フロントや指揮系に具体的な変化が求められる」と要約している。(参照記事:Reuters「Sabres F Jiri Kulich out indefinitely with blood clot issue」)
↩︎ - Leafs Landとは、トロント・メープルリーフスというチームとその熱狂的なファン文化を指す口語的な表現。つまり「リーフスの世界」「メープルリーフス一帯」という意味合いで、チームの成功も失敗もファン全体が生活の一部として共有する場所・コミュニティを象徴している。
この言い方は、単に地理的なトロントを指すだけでなく、チームへの熱意・期待・批判が入り混じるファンの精神的な“領域”を意味していて、メディアでもよく使われるファン文化の表現である。
↩︎ - ベルービーは2018年11月に当時の監督マイク・ヨーを解任後、暫定監督としてチームの指揮を引き継いだ。 当時ブルースはリーグ最下位争いをしており、年明けにはNHL最低勝率まで落ち込んでいた。
ところが、ベルービー就任後チームは見違えるように変化。1月以降のレギュラーシーズンでは30勝10敗5分という驚異の巻き返しを見せ、1月23日から2月には過去にない11連勝も記録。
プレーオフでも勢いは止まらず、ウィニペグ・ジェッツ、ダラス・スターズ、サンノゼ・シャークスを次々と撃破してファイナル進出。 ファイナルではボストン・ブルーインズとのゲーム7をアウェーで制し、ブルースの創設以来初のスタンレー・カップ優勝を成し遂げた。
この快進撃には、ベルービーの戦略的なコーチングが大きく貢献していたとメディアは評価。特に彼は「シンプルに、堅実にプレーする」ことをチームに徹底させ、過度な戦術よりも基本を忠実に守るスタイルを貫いたとの指摘がある。
また、ベルービーの就任と並行して、ルーキーGKのジョーダン・ビニングトンが先発に定着し、プレーオフで驚異的な活躍(24勝、GAA 1.89、セーブ率 .927)を見せたことも優勝の大きな要因とされる。
この功績を評価され、ベルービーは同年6月に3年契約を結び、正式に正監督に就任。 その後、彼はジャック・アダムズ賞(最優秀監督賞)のファイナリストにも選ばれ、指導力を広く認められる存在となった。
↩︎ - Alexander Steenは、スウェーデン系カナダ人の元NHLフォワードであり、プレーヤー引退後はセントルイス・ブルースの将来有力GMとして期待されている人物。 選手時代は2002年のNHLドラフトでトロント・メープルリーフスから1巡で指名され、2005年にNHLデビュー。 その後2008年にブルースへトレードされ、12シーズンにわたって活躍。
ブルースでは通算1,018試合出場、245ゴール、377アシスト、合計622ポイントを記録し、キャリアの最後には2019年にチーム初のスタンレー・カップ優勝を経験。 2020年に背中のケガを理由に引退した後は、2023-24シーズンからブルースのフロント入り。特別アシスタントGMとしてダグ・アームストロングの下で経験を積み、2026年からは正式に12代目GMに就任する予定。
また、プレーヤー時代には2014年ソチ五輪でスウェーデン代表として銀メダルを獲得した実績もあり、ブルースの顔としてファンからの信頼も厚い人物である。
↩︎ - 「競争窓(勝てる期間)」、window of contentionとは、NHLなどのプロスポーツで、あるチームが「優勝を狙えるだけの最強メンバー(核選手)が成熟していて、かつそれを給与キャップなどの制限の中で維持できる限られた期間」を指す言葉。
具体的には、GMやチーム経営陣はこの“勝てるウィンドウ”を長くするか、あるいは過ぎる前に積極的なトレードを行って優勝を狙うか、という判断を迫られる。
この概念はサラリーキャップ制のリーグで特に重要で、「主力がまだ若く契約も比較的軽いうちに勝負をかける」か「将来に備えて再構築する」のかを見極めるタイミングを示します。
↩︎ - ストラーズは2024-25シーズン、メープルリーフスに加入してゴーリーとしてブレイク。前年まで主力ではなく、各チームを転々としていた彼にとって、トロントは大きなチャンスだった。
シーズン終盤には8連勝を記録。その間に3度のシャットアウトを含む好成績を残し、正守護神としての地位を確立。 また、12月に膝の手術で長期離脱をしたものの、復帰後の登場試合でチームは明らかに強さを取り戻し、ストラーズの存在がチームに安定感をもたらしていたと分析されている。
彼自身・メディア共に、過去の怪我や「評価されないゴーリー」であった時期を乗り越えて得た成功であり、強い精神力と復活力の象徴と見なされている。 このストーリーは、「逆境を乗り越え、自分の居場所を掴んだ選手」という意味で、多くのファンにとって共感と希望を与えるものとなっている。 ↩︎


