はじめに
NHLレギュラー・シーズンで一流選手を測る物差し(成績)は、何と言ってもポイント(ゴール数+アシスト数)になります。それが3ケタ、100を超えると、もう超一流。単純に50ゴール・50アシストに分けたとしても、この数字、並大抵のプロ選手でも難しいです。
それを2年連続、しかも誰よりも早く達成したのが2回目という強者が、タンパベイ・ライトニングのニキータ・クチェロフ(右ウィング、30歳)です。オールスターのスキルNo.1を競うイベントで、やる気なさそうなプレーをして顰蹙を買っていましたが、やる時はやる男です。
今回はワイルドカード争いの眼下の敵、ニュージャージー・デビルズとの試合内容を中心に、クチェロフがいかにすごい選手であるかを紐解いていきます。
今シーズン、クチェロフのプレーはずっと安定してたにゃ。
まだ20試合以上残しての100ポイント到達が、それを物語っている。
シーズン終了後、その数字がどこまで伸びているのか、
そしてプレーオフでも同様の活躍を見せられるのか。興味つきない選手だ。
引用元:NHL.com「Kucherov 1st to 100 points, Lightning defeat Devils」
ESPN.com「Nikita Kucherov reaches 100 points on season in Lightning win」
シーズン100ポイント達成、一番乗り!
ニキータ・クチェロフが1ゴールと3アシストを記録し、今季100ポイントに到達した最初の選手1(100ポイント獲得は2年連続、通算4度目)となり、日曜、プルデンシャル・センターで、タンパベイ・ライトニングはニュージャージー・デビルズを4-1で破りました。
クチェロフは、100ポイント(102ポイント、38ゴール、64アシスト)に到達するまでに、ライトニング史上最も少ない試合数(59試合)で達成しています。それまで、彼は2018-19シーズンに達成した62試合の記録を持っていました。
タンパベイのジョン・クーパー監督は「彼は特別な、とっても特別な選手であり、今夜ほどそれがはっきりしていた時はなかったよ」と語っています。「見ていて楽しかったんだ」。
「チームが一つにならなければ、このリーグで勝つことはできない。一人では勝てないが、リーダーが必要だ。(クチェロフは)ロッカールームでも先頭に立っているが、氷上では本当の意味でみなを引っ張ってくれている。
そして、トップ選手たちが正しいやり方でプレーしてくれれば、全員がそれに続くものさ。彼が今のポジションにいるのは不思議じゃないよ」。
チームはプレーオフ進出に向けて、虎視眈々
ブランドン・ヘーゲル(左ウィング、25歳)が1ゴールと2アシスト、ブレイデン・ポイント(センター、27歳)とビクター・ヘドマン(ディフェンス、33歳)がそれぞれ1ゴールと1アシスト(彼らのゴールに対し、クチェロフは今季62、63、64回目のアシストを獲得したことになる)をそれぞれ記録しています。
(先発ゴールテンダー、アンドレイ・ヴァシレフスキー〈29歳〉に貴重な休日を与えた)ヨナス・ヨハンソン(28歳)が12月31日以来3度目の先発出場で18セーブを挙げました。ライトニング(32勝23敗5延長負け)は、3連敗から2連勝を飾っています。
「我々は皆、自分たちがどのような状況にいるのかを理解している。今は正念場だ」とヘーゲルは語りました。「目指すところに到達したいのであれば、毎晩それにふさわしいプレーをする必要がある。目指すところとは、スタンレーカップ・プレーオフだ」。
ここ数年、スタンレーカップを獲得し、プレーオフの常連でもあるタンパベイ、
今シーズンはやや苦戦気味なんだにゃ。
長年監督の座にあるクーパーの戦術もさすがに読まれてきているし、
選手の入れ替えもスムーズとは言えない。
最終コーナーでムチを入れる意味で、移籍市場に参入か?
デビルズ監督、悲壮な覚悟
(この試合で)タイラー・トッフォリ(右ウィング、31歳)が今季25ゴール目(連戦の後半、彼がゴールした試合の勝敗は2勝9敗1延長負け)を決め、アキラ・シュミット(23歳)が12月21日以来の先発出場で23セーブをマークしたデビルズ(29勝25敗4延長負け)は、過去(タンパベイと)4戦して1勝3敗(今シーズンに限定すれば3戦3敗)の成績です。
リンディ・ラフ監督は試合後、ニュージャージーがメトロポリタン・ディビジョンで4位、3位のフィラデルフィア・フライヤーズに5ポイント差をつけられていることに責任を感じるかと尋ねられました。
ラフは「全責任は私にある」と語っています。「勝ちたいと思っているし、これまで我々も多くのことに対処してきた。選手たちもちろん勝ちたいと思っている。誰が氷の上に乗り、誰が氷の上に乗らないのか(ロースターの決定やラインの組み方等)、勝敗の責任は私にある」。
「前にも言ったけど、我々には熱狂的なファンがいる。彼らは勝利を見たいと思っているのに、我々のホームでの成績(14勝15敗2延長負け)を見てしまうと、そこが痛い部分ではあるね。だから私は十分に責任を感じている」。
得点経過−一人、気を吐くトッフォリ(デビルズ)
第2ピリオド・1分27秒、(クチェロフのシュートのリバウンドを受けた)ヘドマンが、左フェイスオフ・サークルの下からシュートを決め、ライトニングに1-0とリードをもたらしました。
「(リンク上で)ただオープンにポジションを取れば、”クチ”が見つけてくれるんだ」とヘドマンは語っています。「万が一、彼が僕を必要とする場合に備えて、(クチェロフを)ずっとミラーリングしていたよ。そして、それがうまくいったのさ」。
4分15秒、ポイントがスケーティングから2、シュミットのいるゴール右ポストの内側にパックを押し込み、(タンパベイは)2-0としました(ポイントは、今シーズン30ゴール目)。
6分01秒、トッフォリは左サークル下から3のパワープレーゴールを決めて、試合を2-1とします。(トッフォリは)連続ポイント記録を6試合(3ゴール、4アシスト)に伸ばしました。
「彼らはチャンピオンシップ(スタンレーカップ)を勝ち取っているし、そこ(決勝の場)にいた選手たちがたくさんプレーしている」とトッフォリは語っています。
「彼らは何をすべきか、そしてどうすれば試合に勝つことができるかを知っているし、明らかに今日の試合では我々よりも良い仕事をしていた」。
推しの3位・フィラデルフィアを猛追する、
4位・ニュージャージーの足踏みは歓迎ものではあるがにゃ。
でも、そのニュージャージーを叩きのめせるタンパベイと、
フィラデルフィアはまだ試合残っている…。嫌な予感しかしないよ。
オールスター後、活躍するヘーゲルからも尊敬の念
第3ピリオドの9分38秒、ヘーゲルが片手でルーズパックをシュミットの横に突き刺し、(タンパベイはリードを3-1に広げました。(ヘーゲルは)13試合連続ポイント(チーム史上3番目に長い記録)となり、通算で20ポイント(9ゴール、11アシスト)を記録しています。
「(ヘーゲルは)(現デビルズ所属で、元ライトニングのフォワード)オンドレイ・パラト(左ウィング、32歳)がやったプレーと同じことをたくさんやっている」とクーパー監督は語りました。
「選手達は200フィートの選手(200フィートはリンクの縦の長さ。リンクの端から端を動き回れるスタミナのある選手のこと)で、決してダメだ、やめたと言わず、決して諦めない。
ヘーゲルは、そんなエリート選手たちとプレーできる選手の一人であり、それを長い間示し続けてきた」。
「我々のチームでMVPを選ばなければならないとしたら、『クッチ』がその筆頭となるだろう。しかし、特にオールスターの中断期間から戻ってきた後では、(ヘーゲルが)『クッチ』と並走していないとは言い難い位のデキだね」。
18分25秒、クチェロフはエンプティ・ネットにゴールを叩き込み、4-1で勝利を決めました。
「彼はNHLで最高の選手の1人として語り継がれるだろう」とヘーゲルはクチェロフについて語っています。「私は彼のそばでプレーする機会を得て、毎晩彼のプレーを見ている。チームメイトは僕の尊敬する選手たちばかりだ。
彼らは誰からも尊敬される選手たちであり、このロッカールームにいる全員が尊敬すべき選手たちなんだ。クチェロフの100ポイント達成は特筆すべき節目であり、彼に脱帽するしかないよ」。
注:クチェロフは今シーズン5回目の4ポイントゲームを達成し、いずれもロード中(アウェイ)でのものでした。彼がロードで1シーズンに5回達成したのは、NHLキャリアの中で2度目(もう1回は2018-19シーズン)となります。
他にウェイン・グレツキー(7回)、マリオ・レミュー(4回)、スティーブ・イザーマン(2回)、ピーター・スタストニー(2回)の4人がこの偉業を複数回達成しています。
まとめ
さすがというか、レジェンド中のレジェンドは違うというか、グレツキーの7回ってのが際立っています。
ロード、アウェイの地というハンデの中で、実力をいかんなく発揮できるクチェロフは、やはり並の選手ではないのです。開幕からほとんどペースを落とすことなく、ゴールにアシストにと働く彼は、シーズンMVPになってもおかしくありません。
タンパベイの次回対戦相手は、フィラデルフィア・フライヤーズ(2月27日・水)…。ここをどちらも勝っておかないと、後々苦しくなるので、かなりの激戦になるのではないかと予想しています。
特にフィラデルフィアは前回、ピッツバーグと撃ち合いの末に敗れているだけに、相当な覚悟で来るはずです(そうでなきゃ困る)。
タンパベイは、現在、イースタン・カンファレンスのワイルドカードで出場圏内の2位。3位のニュージャージーとの勝ち点差7あるため、よっぽど大崩れしない限り、プレーオフに進出するでしょう。
そこで余裕をかますか、さらなる高みを目指すか、クーパー監督のチーム・マネージメントが今後の肝になると見ています。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- クチェロフのキャリアにおいて、リーグで最初にシーズン100ポイント到達選手となったのは、2018-19シーズンに続いて2度目となる。
NHL史上、ウェイン・グレツキー、マリオ・レミュー、フィル・エスポジート、コナー・マクデイビッド、ジャロミール・ジャグル、ガイ・ラフルール、シドニー・クロスビー、エフゲニー・マルキンの8人が同様に達成している。
↩︎ - シュミットと1対1になった後、角度の悪い所からシュートを決めてリードを広げた。
デビルズのゴールキーパーはポイントに正面からのシュートの機会を与えなかったが、ポイントはゴールの後ろに回り込み、ゴールラインの下からシュートを放ち、パックをシュミットの足に当てた。ポイントにとって6試合で5ゴール目。
↩︎ - ジャック・ヒューズ(センター、22歳)がネット裏からパスを出したところ、そのパスがライトニングのディフェンスマン、ダレン・ラディッシュ(27歳)のスケート靴に当たり、パックがトッフォリの右に飛んできたので、オープンネットにシュートを打ったもの。 ↩︎