🏒はじめに
NHLの試合を見ていると、どうしてもゴールやセーブ、勝敗に目がいきがちですが、もう一つ見逃せない魅力があります。それがゴールテンダーのマスクです🎨
現代のプロスポーツでは、ユニフォームやヘルメットにスポンサー広告が入り、選手個人が自由に表現できる領域は年々少なくなっています。そんな中で、ゴーリーのマスクだけは例外的な存在です。そこには選手の個性、価値観、そして時にはユーモアまでもが詰め込まれています。
2026年シーズンは、そうしたマスク文化がひとつのピークに達した年と言っても過言ではありません。今回は「NHLゴーリーマスク・パワーランキング」をもとに、順位の紹介にとどまらず、“なぜ評価されたのか”という視点から深掘りしていきます。
参照記事:The Athletic「2026 NHL goalie mask power rankings: Perhaps the best artistic displays ever」
🎯評価のカギは4つのポイント
まず押さえておきたいのが、マスクを評価する際の基本軸です。これを理解することで、ランキングの見え方が大きく変わります。
①デザイン性
色の組み合わせ、構図、描き込みの細かさなど、純粋なビジュアルの完成度。最近は“絵画レベル”の精密さも珍しくありません。
②個性・コンセプト
そのマスクが何を表現しているのか。動物モチーフ、神話、映画、音楽など、テーマの明確さと一貫性が重要です。
③視認性(非常に重要)
テレビ中継でどれだけ映えるか。これは意外と見落とされがちですが、プロの評価ではかなり重視されるポイントです。
④オリジナリティ
既視感のあるデザインか、それとも新しい挑戦か。特に上位に入るには“見たことのない発想”が不可欠です。
👉この4つがバランスよく成立しているかどうかが、順位を大きく左右します。
📉下位グループの特徴(32位~20位)
下位にランクされたマスクには、いくつか共通点があります。
最も大きいのは、「無難すぎる」ことです。
クラシックで落ち着いたデザインは決して悪くありませんが、今年のようにレベルが高い年では、それだけでは印象に残りません。
また、「アイデアは良いのに詰めが甘い」ケースも目立ちます。
例えば:
◎ディテールは凝っているが遠目では分からない
◎テーマは面白いが統一感に欠ける
◎色使いが弱く、氷上で埋もれてしまう
こうした要素が重なると、どうしても評価は伸び悩みます。
一方で興味深いのは、音楽やポップカルチャーを取り入れたマスクがこのゾーンに多い点です。
MetallicaやIron Maidenといった要素は魅力的ですが、「やり切れていない」場合、逆に中途半端な印象を与えてしまいます。
👉下位は「失敗作」というより、“あと一歩足りない”作品群と言えるでしょう。
⚖️中位グループは“個性の戦場”(19位~6位)
中位に入ると、一気に作品としての面白さが増してきます。
このゾーンの特徴は、テーマの明確さと遊び心のバランスです。
例えば:
◎未確認生物ビッグフットを取り入れたユニークなデザイン
◎ローマ将軍をモチーフにした重厚な表現
◎メカニカルな動物を描いた近未来的スタイル
こうしたマスクは、見た瞬間に「何を表現しているか」が伝わる強さを持っています。
さらに重要なのが、「チームとの一体感」です。
◎ユニフォームとの色の調和
◎ロゴとの連動
◎フランチャイズの歴史や象徴の引用
これらがうまく噛み合うことで、マスクは単体のアートではなく、“チームの象徴”として機能します。
ただし、この層には共通する弱点もあります。それが「あと一歩の完成度」です。
◎ケージ(マスクの金網部分)の色が合っていない
◎ディテールがやや過剰で見づらい
◎コンセプトは良いがインパクトが弱い
👉中位は「完成度80~90%」の激戦区。ここを超えるには、細部の詰めが決定的に重要になります。

マイ・フェイバリットなゴーリー・マスクは、今回の記事の中だと、19位のフィリップ・グスタフソン(ミネソタ・ワイルド)のかにゃ。あ、上記参照記事のリンクから入っていただければ、全32チームの主力ゴーリーのマスクが写真入りで見られます。次点は27位のユストゥス・アンヌネン(ナッシュビル・プレデターズ)、プレデターズのシンボルとも言うべき「牙」を上手くデザイン化していると思う。
🏆TOP5は“芸術”の領域へ
上位5つは、もはやスポーツ用具の枠を超えています。
⑤ジェイク・オッティンジャー(ダラス・スターズ)
過去の名ゴーリー、エド・ベルフォアへのオマージュを取り入れた作品。
懐かしさと現代的アレンジの融合が見事で、「歴史を継ぐデザイン」として高評価です。
【讃岐猫🐈の深掘りコラム】“イーグル”の系譜──エド・ベルフォアが確立した勝利様式と現代ゴーリーへの影響
1990年代から2000年代初頭にかけて、NHLはハイスコア時代からディフェンス重視の“トラップ全盛期”へと移行した。この戦術的転換の中で、ゴールテンダーの役割も単なるショットストッパーから、「守備構造の最終制御装置」へと進化していく。その象徴的存在がベルフォアである。
彼のキャリアは、ドラフト外からのスタートにもかかわらず、カルダー賞、ヴェジーナ賞2度、スタンレーカップ制覇という異例の成功を収めた点に特徴がある。
通算484勝、セーブ率.906という数字は、当時の環境を考慮すればトップクラスの安定性を示しており、特にプレーオフではセーブ率.920まで向上するなど、「重要局面でパフォーマンスが上がる」傾向が顕著だった(StatMuse)。
この安定性の背景にあるのが、ベルフォア特有の“ポジショナル・ディシプリン”である。彼はバタフライ技術を基盤としながらも、無駄な動きを極限まで削ぎ落とし、常に最短距離でシュートラインに入るプレーを徹底した。
現代で言うところのxG(期待得点)抑制においても、シュートの質を低下させるポジショニングを自然に実現していたと解釈できる。
さらに重要なのは、彼が「個人技に依存しない守備の完成形」を提示した点にある。例えばダラス時代のシステムでは、ニュートラルゾーンでのトラップと連動し、相手のシュートを外側へ誘導する設計が徹底されていた。
ベルフォアはその最終ラインとして、リバウンドコントロールと低い姿勢の維持によって、セカンドチャンスを極限まで抑制する役割を担った。この構造は、現在のチーム防御における“シュートクオリティ管理”の原型とも言える。
また、彼のキャリアは同時代にパトリック・ロワ、ドミニク・ハシェック、マーティン・ブロデューアという歴史的ゴーリーと重なっている点でも興味深い。彼らがそれぞれ「反射神経」「独創性」「パックハンドリング」に強みを持つ中で、ベルフォアは“再現性の高い技術”で対抗した。
これは現代ゴーリーの育成思想に直結しており、安定性と確率論に基づく守備の重要性を先取りしていたと言える。
結果として、ベルフォアのプレースタイルは「派手さよりも効率」を重視する現代ホッケーの流れと極めて親和性が高い。現在のエリートゴーリーに求められる、無駄のない動き、リバウンド管理、そしてチーム戦術との統合という要素は、すでに彼の時代に完成されていた。
このように、ベルフォアへのオマージュが現代のマスクデザインに取り入れられる背景には、単なるレジェンドへの敬意だけでなく、「現代ゴーリーの原型を築いた存在」という戦術的文脈が存在する。デザインとしての引用は、そのプレースタイルの継承を象徴する行為でもある。
出典:NHL公式、ESPN、StatMuseなど
④スコット・ウェッジウッド(コロラド・アバランチ)
あえてシンプルに振り切ったことで、逆に強い存在感を放つ一作。
近年の“盛りすぎ傾向”へのアンチテーゼとも言えるデザインです。
③ジョン・ギブソン(デトロイト・レッドウィングス)
赤と白という伝統カラーを軸に、極限まで無駄を削ぎ落とした完成形。
シンプルでありながら、どこから見ても美しい“機能美”が際立ちます。
記事にもあるようにシンプルなんだけど、万人に受け入れられやすいカッコ良さ。派手好きの人には物足りないかな?
②ジョーイ・ダコール(シアトル・クラーケン)
クラーケンの「目」を大胆に配置したインパクト抜群のデザイン。
遠距離でも一瞬で認識できる視認性と、近距離での精密さを両立しています。
長い映像ですが、13分頃、ダコールのマスクが出てきます。クラーケンのシンボル・マークって、マスクに使いやすそう。
🥇①サミュエル・モンタンボー(モントリオール・カナディアンズ)
今年のNo.1は文句なしの完成度。
◎蛇をモチーフにした圧倒的なディテール
◎全体に貫かれた強いテーマ性
◎近くでも遠くでも成立する視認性
蛇をモチーフにしたマスクがこれ。
特に驚異的なのは、「細かすぎるのに見やすい」という点です。通常、この2つは両立しません。しかしこのマスクは、その常識を覆しています。
👉まさに“完成されたアート”。歴代でもトップクラスの作品です。
🧠2026年に見えた3つのトレンド
今年のランキングからは、明確な流れが見えてきます。
✔細密化と視認性のバランス
ディテールは年々進化していますが、それだけでは評価されません。「遠くからでも伝わるか」が重要です。
✔カルチャーとの融合
音楽・映画・神話など、マスクは文化的表現の場へと進化しています。
✔“やり切る”ことの重要性
中途半端なアイデアは評価されない時代。テーマを徹底的に突き詰めた作品が上位に来ています。
✍️まとめ
ゴーリーマスクは、単なる防具ではありません。
それは選手の個性とチームの歴史、そして文化が融合した“動くキャンバス”です。
2026年は、その完成度が一段と引き上げられた年でした。今後はさらに、芸術性と機能性の両立が求められていくでしょう。
次に試合を見るときは、ぜひゴーリーのマスクにも注目してみてください👀
そこには、スコアでは見えないもう一つの物語が隠れています。

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

