はじめに
NHLのスター選手、アダム・フォックスが2026年の五輪代表入りに黄信号⁉️ アメリカ代表として期待されていた彼が、最近の国際大会で評価を落としてしまいました。
新監督マイク・サリヴァンとの再タッグで再起はあるのか?代表選考の仕組みや背景もわかりやすく解説します🇺🇸🏒
参照記事:N.Y.Times「What does the Rangers’ Mike Sullivan hire do for Adam Fox’s Olympic hopes?」
🏒代表落ちの危機⁉ アダム・フォックスに何が起きた?
最後にマイク・サリヴァンがアダム・フォックスを試合で指導したのは、記憶に残る場面で終わりました──しかもニューヨーク・レンジャーズのトップディフェンスマンにとって、決して名誉なものではなかったのです。
NHLのファンでなくても、ニューヨーク・レンジャーズのディフェンスマン、アダム・フォックスの名前を聞いたことがあるかもしれません。彼は2021年に「ノリス・トロフィー(年間最優秀ディフェンスマン賞)」を受賞し、リーグ在籍6年で4度もトップ5入りしている、リーグ屈指の実力を誇る守備の要です。
そんなフォックスですが、ここ最近は苦しい状況に立たされています。きっかけは、2025年2月に行われた「4 Nations Face-Off」。サリヴァンがアメリカ代表の監督を務め、代表選手として出場したフォックスは、決勝戦で大きなミスをしてしまいました。
その試合、相手は宿敵カナダ。フォックスは、カナダのスター選手ミッチ・マーナーをボード際でフリーにしてしまい、そこからカナダが決勝ゴールを決めてアメリカが延長戦で敗退。
(カナダの)ケール・マカーがマーナーにパックを渡し、アメリカのセンター、オーストン・マシューズがトロント・メープルリーフスでのチームメイトだったマーナーに対応しようと方向を変えました。
その結果、コナー・マクデイビッドがスロット(ゴール前中央の危険地帯)でフリーに。マーナーは彼を見つけ、あとはマクデイビッドが決めるだけだったのです。彼のシュートはネット上部に突き刺さりました。その結果、フォックスが責任を問われる形となり、評価は一気に下がってしまったのです😥
あの熱戦をもう一度!
📉スタッツでも見える不調…そして出場時間減少
この大会全体でも、フォックスは不調が目立ちました。4試合で得点ゼロ、プラスマイナスは-2と、守備でも攻撃でも目立てず。決勝では監督のマイク・サリヴァンが彼のアイスタイム(出場時間)を17分5秒まで削るという異例の対応をとりました。これはアメリカのディフェンスマンの中で最も短いプレータイムでした。
2026年の冬季オリンピックでの代表入りはほぼ確実と言われていたフォックス。しかし、この大会でのパフォーマンス、特に最後のプレーによって、その立場が一気に不透明に…😔6月15日から代表メンバーが発表され始める中、フォックスの評価は揺らいでいます。
そして現在、驚くべきことに、そのサリヴァン監督が2025年オフにレンジャーズの新監督として先週就任。つまり、代表でフォックスの出場機会を減らした監督が、今度はクラブチームで彼を再び指導することになったのです。彼の任務は、フォックスを含むレンジャーズのディフェンス陣を、2024–25シーズンの不調から立て直すことにあります。
もしサリヴァンが、フォックスを再びノリス賞ファイナリスト級の選手に戻すことができれば、それはレンジャーズにとっても、2026年オリンピックのアメリカ代表チームにとっても大きな意味を持つことになります。
「彼との関係を築くことを楽しみにしている」と、サリヴァンは木曜日の就任記者会見1で語りました。「アダムがこのリーグのエリート選手であることは間違いないし、我々は彼が最高のパフォーマンスを発揮できるよう後押ししていくつもりだ」と前向きなコメントをしています💪
🌟かつてはアメリカ代表の「顔」だったフォックス
実はフォックス、昨年6月、アメリカ代表「4 Nations」ロースターの「First Six(最初に発表される6人)」に選ばれていました。これは非常に名誉あることです。
代表チームで最も信頼されている選手を先行して公表する仕組みで、フォックスの他にはオーストン・マシューズやジャック・アイケル、マシュー・カチャック、チャーリー・マクアヴォイ、クイン・ヒューズなど、超一流の選手が並んでいました。
「彼はリーグ屈指のパワープレー型ディフェンスマンの一人だ」と、サリヴァンはその当時(まだペンギンズの監督だった頃)語っています。
しかし1年の間に多くが変わりました。アメリカ代表2が最初のオリンピック代表選手を発表する際、フォックスの名前はおそらくそこにはないでしょう😳
🧊スピード不足が影響?フォックスの弱点
サンプル数こそ少ないですが、4 Nationsでのフォックスの苦戦3──特にプレースピードへの対応力の欠如──は、ミネソタ・ワイルドのGMでありアメリカ代表の首脳陣を率いるビル・ゲリンの目に留まったはずです。公平かどうかは別として、それが彼の代表チームでの立場に影響を与える可能性は十分にあります。
フォックスは、視野が広く、非常に賢いプレーをするディフェンスマンですが、トップスピードでの動きはあまり得意ではありません。
実際、2024–25シーズンのデータによると、800分以上出場したNHLのディフェンスマンの中で、フォックスは時速20マイル(約32キロ)以上のスピードバースト4(瞬間的加速)を60分あたりで最も少なく記録した6人のうちの1人でした。18マイル超のバーストにおいても、彼は下位25人に入っています。
もちろん、スピードだけがすべてではありません。フォックスの強みはその「知性」です。彼はゲームを読む能力に長けており、試合を支配するための判断力に優れています。
通常であればこのスピードの欠如を補って余りあるのですが、4 Nationsのようにハイスピードで展開される大会では、フォックスのペースについていけない場面も目立ちました。その結果、ミスを連発してしまったのです⚡️

4 Nationsの後半、ちょっと疲れもあって、フォックスのスピードも読みも鈍ってしまったのかにゃ。一番大きかったのは、チームメイトのマクアヴォイの大会中の負傷による離脱でしょう。これでチームのリズムが変わってしまったのは明らかで、ディフェンスが我慢できなくなったよなぁ。
💥競争が激化!アメリカ代表ディフェンス陣の層の厚さ
さらに厳しい現実が待っています。それは、アメリカ代表のディフェンス陣が非常に層が厚いということ。フォックスと同じポジションを争う選手たちには、すでに実力のある選手が勢揃いしています。特定の分野においてはフォックスよりも優れた選手が多い、と言っていいでしょう。
クイン・ヒューズ(バンクーバー・カナックス)、チャーリー・マクアヴォイ(ボストン・ブルーインズ)、ジェイコブ・スレイヴィン(カロライナ・ハリケーンズ)、ザック・ワレンスキー(コロンバス・ブルージャケッツ)、ブロック・フェイバー(ミネソタ・ワイルド)など、いずれも名の知れた実力者たちです。
そのため、もしアメリカが8人のディフェンスマンを選ぶとすれば、フォックスはあくまで“選ばれるべきかどうか”の瀬戸際に立たされているのです。
さらに、ジェイク・サンダーソン(オタワ・セネターズ)や、近年の成績が良かったノア・ハニフィン(カルガリー・フレームス)、レーン・ハットソン(モントリオール・カナディアンズ)なども、フォックスと競り合っている存在です。ここに、スケート能力が高いK’アンドレ・ミラー(レンジャーズ)も加わり、フォックスのポジションはますます厳しくなっています🔥
🔥フォックスの強みと、今後の展望
それでも、フォックスには他のディフェンスマンにはない特別な強みがあります。それは、彼の「パワープレー」の能力です。サリヴァンもフォックスを「エリートのパワープレー選手」と評価。得意のパス回しや巧妙な攻撃で、試合の流れを作る力は他の選手と一線を画しています。
とはいえ、アメリカ代表の代表選考では、フォックスのようなディフェンスを任せられる選手は他にもたくさんいます。
オリンピックではおそらくクイン・ヒューズが同じくパワープレーのクォーターバック役を担い、さらに、2024–25シーズンにノリス賞ファイナリストに名を連ねたザック・ワレンスキーが、セカンドユニットのディフェンスマンとしてパワープレーに参加する実力を持っています。
4 Nationsではジェイコブ・スレイヴィンとブロック・フェイバーが守備の要となるペアを形成し、素晴らしい働きを見せました。この4人にチャーリー・マクアヴォイを加えた5人は、健康であれば代表入りが確実と見られています。
他にジェイク・サンダーソンも代表入りがほぼ確実だと言われており、彼はオタワでシーズン終盤からプレーオフにかけて好調を維持していました。つまり、他のディフェンスマンに与えられる出場時間はごくわずかとなります。サリヴァン監督がどのように選手を組み合わせるかによって、フォックスの立ち位置も変わってくるでしょう。
実績の面では、フォックスは“バブル”とされるディフェンスマンの中で最も高い評価を受けていますが、ゲリンGMは、ロースター編成において特定のタイプの選手を求める可能性もあります。
例えば、将来の経験を積ませるために若手(ハットソン、アレックス・ヴラシック〈シカゴ・ブラックホークス〉、ゼーヴ・ブイウム〈ミネソタ・ワイルド〉など)を加えることも考えられますし、スケート力や守備力に特化した選手を選ぶかもしれません。
人数制限は厳しく、もちろんケガによってチャンスが広がる場合も。ヒューズは4 Nationsをケガで欠場しており、マクアヴォイも大会中に負傷。その後の感染症でシーズンを棒に振りました。
代表監督としてサリヴァンもロースター編成に関与する予定であり、レンジャーズの球団社長であり、アメリカ代表のアシスタントGMでもあるクリス・ドゥルーリーも関わってきます。仮にフォックスが代表から漏れた場合、そうした立場の人間関係は微妙なものになるかもしれませんが、最終決定権はゲリンが持っています。
レギュラー・シーズン終了時にインタビューを受けるフォックス。チームの連携不足や粘り強さの欠如、短期間での監督交代の繰り返しに責任を感じている、と述べています。
2024–25シーズン、レンジャーズは失望の多いシーズンを送り、フォックスもその一人でしたが、その評価はやや過剰にネガティブに見積もられている面もあります。特に5対5の場面では、彼は実は昨季(23–24)の38ポイントを上回る40ポイントを記録しています。この23–24シーズンにはノリス賞で4位に入っていました。
また、フォックスのスタッツは依然として優秀で、ピーター・ラヴィオレット前監督が彼を「主力同士のペアを避ける」目的で格下のディフェンスマンと組ませることが多かったにも関わらず、好成績を維持していました。
K’アンドレ・ミラーと組んだ際には、200分以上プレーしたペアの中で、5対5での予想得点率(Expected Goal Rate5)は64.72%とリーグ最高でした(Natural Stat Trick6調べ)。
サリヴァンが、このペアを今後より多く活用したり、フォックスにとってより成果を出しやすい環境を整えれば、フォックスの代表入りに向けた希望も見えてくるかもしれませんね🌟
🏅まとめ~代表入りを目指して、サリヴァンとともに前進
サリヴァン監督が指導を引き継いだことで、フォックスにとっては大きなチャンスが広がっています💪
監督はフォックスの実力を知っています。その能力を最大限に引き出せれば、レンジャーズにとっても大きな成果となり、ゲリンGMが国際大会のロースターを決定する上でも重要な材料となるでしょう🏆

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 五輪について質問されたサリヴァンは、アダム・フォックスの27歳という年齢はまだ若いと強調。フォックスを含む、4 Nationsのロースターに名を連ねた他のレンジャーズの選手(J.T.ミラー、ヴィンセント・トロチェック、クリス・クライダー)についても、「勝利への執念を強く感じた。彼らは激しい競争者だ」と語っている。 ↩︎
- アメリカの男子アイスホッケー五輪代表は、USA Hockey(アメリカアイスホッケー連盟)が主導して編成。代表選手の多くはNHLで活躍する選手で、成績・スキル・健康状態・国際大会での適応力などを基に評価される。
選手の選考は、代表ゼネラルマネージャーが中心となって行う。2026年大会では、ミネソタ・ワイルドのGMであるビル・ゲリンがアメリカ代表GMを務めており、選手選考や監督人事に大きな影響を与えている。彼の下にはアシスタントGMやスカウト陣もいて、総合的に選手を評価・選出する。
監督には通常、NHLでの実績がある指導者が起用され、現時点ではマイク・サリヴァン(ニューヨーク・レンジャーズ監督)が続投予定。なお、NHLの選手がオリンピックに出場できるかどうかは、NHLと選手会(NHLPA)との協議によって決定される。2026年ミラノ五輪では、すでにNHL選手の参加が正式に認められている。
↩︎ - ニューヨーク・タイムズ紙の記者は4 Nations後に「レンジャーズでのシーズンも厳しいものだったし、2021年のノリス賞受賞者にしてはプレースピードに対応できていなかった。決勝では2失点に絡み、ヒューズとワレンスキーがパワープレーを担うなら、彼はオリンピックで不要な存在になりかねない」記している。
↩︎ - 選手が静止状態や低速から、爆発的な加速によって瞬時にトップスピードに達する動作のこと。フォアチェック、ブレイクアウェイ、オフェンス・ディフェンス時の動き出し、パック争奪など、試合のあらゆる局面で重要なスキルとなる。
実現には、爆発的な脚力、効率的なスケーティング技術、体幹の安定性、状況予測と素早い反応が不可欠である。近年では、プロリーグの試合分析でも注目される要素。
↩︎ - 特定の状況下でシュートがゴールになる確率を数値化した指標。個々のシュートの質(位置、角度、種類など)を基に算出されるExpected Goals (xG) の考え方を応用し、チームや選手が一定期間や特定の状況でどれだけのゴールが期待できるかを示す。
チームの攻撃・守備力評価、選手の得点能力分析、試合展開の理解などに活用される。ただし、実際のゴール数を完全に予測するものではなく、運やゴールキーパーの能力も影響する点に注意が必要。
↩︎ - 高度なアイスホッケー統計を提供するウェブサイトおよびデータ群。特に5対5の均等な選手数でのプレー状況に焦点を当て、Corsi(シュート関与数)、Fenwick(ブロックを除くシュート数)、Expected Goals(xG:期待ゴール数)など、従来の統計よりも詳細な指標を提供。
チームや選手のパフォーマンス評価、戦術分析、スカウティングなどに活用され、より深い試合分析を可能にする重要なリソース。 ↩︎