はじめに
第1ラウンドも3分の2以上の日程を消化し、予想以上にワイルドカード組の健闘があって、凡戦は少なかったように思います。一方で、残念ながら敗退していくチームも出てきています。
その敗退チームと、プレーオフにすら出場できなかったチームの原因を探っていくのが、今回の記事の主な内容です。
この記事のユニークな点は、各チームのサラリー・キャップの運用状況を横目で睨みながら、どのようにチーム強化をしていくべきかを考察していることです。
日本では馴染みの薄いサラリー・キャップ制、なかなか理解するには骨が折れるのですが、各チームは相当苦労しているようです。
今回は、第1ラウンド敗退の2チーム、
ミネソタ・ワイルドとニューヨーク・アイランダーズ編をお届けするにゃ。
アイランダーズは新アリーナで初プレーオフを戦えたのに、残念。
引用元:ESPN.com「Keys to the offseason for NHL teams, including free agency plans」。
プレーオフ、先に進めなくて残念!
2022-23年のNHLのレギュラーシーズンは終わろうとしており、ボストン・ブルーインズにとってはチームとして記録的なシーズンとなり、1990年代初頭のように得点を重ねている、コナー・マクデイビッドにとっては歴史的なシーズンとなりました。
しかし、多くのチームは、すでに数学的(勝敗やポイント、チームの経済面など)にプレーオフから排除されています。2023-24年に向けて、ドラフト、フリーエージェント(FA)、トレードを行い、より他チームより有利な立場に立てるよう、このオフシーズンを見据えています。
この記事では、除外された・敗退した各チームの何が問題だったのか、今オフシーズンの最大のカギは何なのか、そして来シーズン、現実的に何に期待するかを見てみましょう。なお、プレーオフから正式に脱落したチームは、このストーリーに追加されていく予定です。
以下のリンクを使用して、すべてのチームのプロフィールを確認するか、お気に入りのチームへ進みます(こちらは上記引用元でご確認ください)。
注:アトランティックとメトロのチームのプロフィールについてクリステン・シルトンが書き、ライアン・S・クラークはセントラルとパシフィックのチームを分析しました(こちらは上記ESPN.com専属ライターの皆さんです)。
統計はNatural Stat Trick、Hockey Reference、Evolving Hockeyなどのサイトから収集されています。Cap Friendlyが、1チームあたりのキャップ・スペースを予測しています。
第1ラウンドで敗退チームを分析する!
ミネソタ・ワイルド
6試合でスターズに敗戦。
2023-24シーズンの予想キャップスペース:12,334,745ドル(日本円で約16億8千万円)
2023年のドラフト指名権:1位、2位、2位(VGK)、5位、6位、7位
※VGK=ベガス・ゴールデンナイツ。ベガスからトレードでドラフト2巡目指名権を獲得。
何が悪かったのですか?
プレーオフ出場権を獲得したチームの中で、ワイルドが最も得点力の低いチームだったことを考えると、得点はポストシーズンに向けて問題であると考えられていました。そしてそれは第4戦と第5戦でも明らかで、前者では2得点し、後者では完封されました。
しかし、第1ラウンドで敗退したことが衝撃的だったのは、守備的なプレーをアイデンティティの一部としていたチームが、このポストシーズンで5番目に多い17失点を記録して、第6戦に臨んだことでした。
オフシーズンの鍵
ワイルドのキャップ状況を見てみましたか?
チームのサラリー・キャップにある課題の大半は、今後2シーズン、(移籍していった)ザック・パリス(左ウィング、38歳。現在、アイランダーズ所属)とライアン・スーター(ディフェンス、38歳。現在、ダラス・スターズ所属)のキャップ・スペースが、1274万3000ドル(日本円で約17億3千万円)から1474万3000ドル(日本円で約20億円)になるという事実に起因しています。
※チームのサラリー・キャップにある課題の大半は…=FA移籍した選手に対し、ワイルドは無関係になるわけでなく、サラリーの何割かを負担することになる。パリスとスーターのサラリーについて、おそらく2人の成績によって、ワイルドの負担額が増える契約内容と思われる。
CapFriendlyのプロジェクトでは、チームに8人の制限なしフリーエージェント(チーム介入無し)と、さらに7人の制限付きフリーエージェント(チーム介入有り)がいて、オフシーズンに340万ドル強(日本円で約4億6千万円)の利用可能なキャップ・スペースがあると予測しています。
このため、ワイルドには、キャップをどのように管理するかについて、いくつかの決断を迫られることになります。
マット・ダンバ(ディフェンス、28歳)もそんなUFA(Unrestricted Free Agents=無制限のフリーエージェント)の1人です。ライアン・リーブス(右ウィング、36歳)、マーカス・ヨハンソン(左ウィング、32歳)、ジョン・クリングバーグ(ディフェンス、30歳)、グスタフ・ナイキスト(左ウィング、33歳)など、シーズン中に(FA権を)獲得した多くの選手も同様です。
チームのRFA(Restricted Free Agent=制限のあるフリーエージェント)クラスの選手を見ると、マーク=アンドレ・フルーリー(ゴールテンダー、38歳)とペアを組んで、ワイルドにNHL最強のゴールテンディング・タンデムをもたらした、フィリップ・グスタフソン(ゴールテンダー、24歳)が最も目立っています。
パックを動かすディフェンスマンのカレン・アディソン(ディフェンス、23歳)と、フォワードのサム・スティール(センター、25歳)も、新たな契約を必要としているRFAである。
UFAの選手は全員手放すんだろうにゃ。ベテラン選手も多いし。
ゴールテンダー・ペアをそのまま残すか、どちらかをカットするか。
これがカギかな。
2023-24シーズン、現実的な期待値
ワイルドがどうなるかを予測するには、キャップの問題をどう管理できるかにかかっています。その計画の一環として、ライアン・ハートマン(右ウィング、28歳)とフレデリック・ゴードロー(センター、29歳)のように、チームに適した契約を結んだ選手で成功を収め続けていくことです
―ゴードローが、年平均210万ドル(日本円で約2億9千万円)の5年契約延長にサインする前の話です。マット・ボルディ(左ウィング、22歳)とグスタフソンもその好例ですが、前述のようにグスタフソンは昇給する予定です。
このアプローチに適合する選手をもっと見つけることができれば、キャップ管理に縛られたワイルドにとって大きな助けとなり、チームが再びウェスタン・カンファレンスのトップ候補の一つであることを確実にするでしょう。
ニューヨーク・アイランダース
ハリケーンズに6試合で敗戦。
2023-24シーズンの予想キャップスペース:6,911,667ドル(日本円で約9億4千万円)
2023年のドラフト指名権:2位、4位、5位、6位、7位
※1&3巡目指名権無し。
何が悪かったのですか?
アイランダーズは、どうしてもゴールできないチームとなりました。それがたまたま、最悪の時期に発生しました。ニューヨークはワイルドカードのプレーオフ圏内で戦い、カロライナ・ハリケーンズとの本格的なシリーズを実現できたかもしれない
–もし、一般的に言われている得点感覚の欠如がなかったら、の話ですが。それがアイランダーズの一年を通しての主要な問題でした。
第3戦の勝利では、NHLプレーオフ史上最速の4ゴール(2分18秒)を決めたとはいえ、ニューヨークが(ゴール・)ランプを灯せなかった他のすべての時期に比べれば、大した意味はないのですが。
※NHLプレーオフ史上最速の4ゴール=4月21日(金曜)、ハリケーンズとの第3戦・第3ピリオド、試合時間16:09から18:27の間(2分18秒)に4ゴールを記録している。第2ピリオド終了時は1-1のタイで、先に1点取った方が有利な試合展開だった。
しかも、チャンスがなかったわけではありません。アイランダースはうまく5対5のシュートを決められず、チームのスター選手も頑なに輝こうとしませんでした(ボー・ホーヴァト〈センター、28歳〉が1ゴール?マシュー・バーザル〈センター、25歳〉が2ゴール?理想的とは言えません)。
また、ニューヨークの足を引っ張ったのは、ポストシーズンで最悪とも言える残虐なパワープレー成功率(6.7%)でした。レギュラーシーズンでは、たびたびイリヤ・ソロキン(ゴールテンダー、27歳)がアイランダーズを窮地から救いました。
しかし、ソロキンはこのシリーズで超人的ではなく(セーブ率.923、平均失点数2.77)、他のすべての要素と同様に、最終的にニューヨークを失敗に追いやりました。
ボー・ホーヴァトは鳴り物入りでFA移籍してきたからにゃあ、
プレーオフでの活躍、確かに期待はずれ。
よりチームに馴染んだ来季に期待か。
オフシーズンの鍵
ニューヨークは安定した得点力を見出さなければなりません。それは彼らの克服できなかったアキレス腱であり、今シーズンの最初から最後までチームに多大な犠牲を払いました。
ホーヴァトはトレード期限前に獲得された後、クラブと長期契約を結びましたが、ニューヨークは年間850万ドル(日本円で約11億6千万円)の投資が実を結び始めることを期待しなければなりません。バーザルも同様で、シーズンあたり950万ドル(日本円で約13億円)です。
理論的には、アイランダーズのラインナップ、特にトップ・ラインは良好な状態にあるはずです;重要なのは、これらのスターをサポートできる、より信頼性の高い攻撃資産をトップ以下(セカンド~フォース・ライン)に追加することです。
チームのゴールテンディングの問題もあります。ソロキンは1位の座を維持し、セミヨン・バーラモフ(ゴールテンダー、35歳)はFAになる予定です。
アイランダーズはバーラモフ(セーブ率.913、平均失点数2.70。11-9-2の堅実なバックアップでした)を維持するのか、それとも他の場所から別のオプションを選ぶのでしょうか。
ソロキンはレギュラーシーズン5位タイ(60試合)の先発出場でしたが、疲労が彼のプレーオフのパフォーマンスの要因になったと思われています。
ニューヨークは、ソローキンとのコンビでより活躍できると思われるゴーリーをターゲットにするのが賢明でしょう。彼、そしてクラブの最終的な破滅を招いたかもしれない、より大きなプレッシャーを取り除くためです。
2023-24シーズン、現実的な期待値
アイランダーズには、登録選手の再整備に取り組む必要があります。ターンオーバー自体が目標でありませんが、チームの停滞を避けるためにも言うべきことがあります。
ラモリエッロがアイランダーズの明らかな攻撃の問題点を評価し対処できれば、そしてニューヨークが過去にチームを苦しめた怪我の問題のいくつかを回避できれば、アイランダーズのポストシーズン復帰を信じられる理由が出てきます。
※ラモリエッロ=アイランダーズGMルー・ラモリエッロのこと。米国ロードアイランド州ジョンストン出身、80歳。
低迷していたデビルズをプレーオフの常連にし、その腕前を買われ、1996年のホッケーワールドカップと1998年の長野冬季オリンピックで、チームUSAのGMを務めた。2004-05年のNHLロックアウトの和解交渉でも、重要な役割を果たす。
適切な改造を行えば、チームはメトロポリタン・ディビジョンのヘビー・ヒッターになることさえできます。
まとめ
アイスホッケーというスポーツは、トップ・ラインの3人だけ攻撃力高くても、簡単にゲームに勝てるわけではありません。セカンド~フォース・ラインまで満遍なく得点できるように、ワイルドにしても、アイランダーズにしても、選手の配置を考えていくのがオフシーズンの課題となります。
第1ラウンド敗退チームのオフシーズンの過ごし方について、
これからも考えていく予定だにゃ。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!